まさに音楽版’下町ロケット’ 従業員4人の町工場がうんだ「世界最小の演奏台」 ウイーンフィル首席チェロ奏者も太鼓判!
従業員4人の町工場が生み出す、直径4センチの"演奏台"「エンドピンストッパー」が音楽家の間で評判を呼んでいる。
「弾きやすくなる」「豊かな音質が奏でられる」
エンドピンとは、チェロやコントラバスといった大型弦楽器を支えるために付けられた細い棒。演奏時、そのエンドピンが滑らない様に固定するための道具が、エンドピンストッパーだ。プラスチック製のものが一般的だが、初めて青銅製のものを完成させた。
町工場の技術者とミュージシャン、地元の銀行マンまで、畑違いの人が関わりながら7年の歳月をかけた。
松田聖子やチェッカーズを輩出した福岡・久留米市の町工場
松田聖子やチェッカーズなど数多くのミュージシャンを輩出した音楽の街・福岡県久留米市。ここに、エンドピンストッパー「ウルティマ」を開発した町工場がある。
主にガスの配管設備を手がける、従業員4人の「有限会社 渕上熔接」だ。
世の中で広く販売されているエンドピンストッパーはプラスチック製だが、渕上熔接が手掛ける「ウルティマ」は金属製。重さは約250グラム。直径およそ4センチ、厚さ1センチあまりの青銅から出来ている。
開発者 渕上熔接 社長 渕上貴之さん(44)
「高校時代には吹奏楽部で活動しました。今も高校生の指導をしているのですが、コロナ禍でコンサートホールでの演奏が難しくなった生徒たちが、自宅で練習する時にホール並みの音色を感じることが出来たら・・・と思ったのが、金属製のエンドピンストッパーを開発したきっかけです。」
"ウイーンフィル"世界的チェリストも認めた
渕上さんが開発した「ウルティマ」を、世界最高峰の楽団「ウイーンフィルハーモニー管弦楽団」の首席チェリスト、タマ―シュ・ヴァルガ氏に使ってもらう機会があった。知り合いのそのまた知り合いの伝手だったという。
「ウルティマ」を開発した 渕上貴之さん
「ヴァルガさんが『すごい!これは』と喜ばれました。『ずっと使ってもいいか?』と聞かれたので『ぜひ使ってください』ってお渡ししたんです。『自分が使っている事をSNSなど宣伝で言ってもいいよ』とヴァルガさんご本人からOKを頂きました。そのこと自体が夢みたいで信じられなくてもう気持ちがふわふわしてますよ。夢なら醒めないで・・・みたいな感じです。」
床に吸収される音が少ない? 音色に違い
渕上さんが開発したエンドピン・ストッパーの良さは、どこにあるのだろうか。
弓で弦を擦り、ボディーを通して音を奏でる弦楽器。大型のものはエンドピンでボディを支えてセッティングする。奏でた時にうまれる音は、エンドピンを通じて床に吸収されてしまうものと、、エンドピンからボディに戻り空間に広がるものとがある。この、空間に広がる音が多いほど豊かな音質が感じられるという。
金属製の「ウルティマ」は、プラスチックより床に吸収されてしまう音が少なくボディーに戻ってくる音が多いと考えられている。
実際に、ウルティマを使ったプロの演奏家は、音色に違いを感じたという。
ウルティマを使用したチェロ奏者・有泉芳史さん
「演奏していると、チェロの響きがしっかり残るので弾きやすくもなるし、イメージがいろいろ湧くんですよね。ウルティマを通じた音色からアドバイスをもらってるような感じを受けます。」