【動画】木の上で交尾するクマ、初の報告、さらに衝撃的な行動も
南米のメガネグマに初めてカメラを装着、驚きの新たな発見が続々
南米に生息する唯一のクマであるメガネグマ (Tremarctos ornatus)にビデオカメラを装着して行動を調べたところ、木の上で交尾をする映像が確認された。これはメガネグマだけでなく、クマ全体で初めての科学的な報告だ。2024年12月4日付けで学術誌「Ecology and Evolution」に論文 が発表された。
論文の筆頭著者であるルースメリー・ピルコ・フアルカヤ氏は、オスのメガネグマから回収したカメラをコンピュータに接続したとき、自分がどんな映像を見ることになるのかまるで想像していなかったという。
「1000本以上の動画があったので、ただ適当に選んで再生したんです」と、ペルーの非営利団体「アマゾン・コンサベーション」の野生生物生態学者で、ナショナル ジオグラフィック・エクスプローラー(探求者)でもあるフアルカヤ氏は振り返る。「最初は、カメラがちゃんと動いていたというだけで大喜びしました」
4カ月間にわたって撮影された数々の動画の中で、「クリス」と名付けられたメガネグマは、ピルコ氏のチームのメンバーを、かつてない数々の冒険へと連れ出してくれた。
ピルコ氏は、年齢7〜8歳のクリスが川を泳いでいるときの映像を見ては喜びの声を上げ、クリスが果物、パイナップルの仲間、昆虫、さらには刺のあるイラクサまでを貪る姿を興味深く見守った。メガネグマはあまり研究が進んでいない種であり、彼らがイラクサを食している様子は、これまで記録されたことがなかった。
そして2023年12月18日、1時間ごとに15秒間だけ記録される動画に、一頭のメスのメガネグマが登場しはじめた。
ピルコ氏らは、2頭のクマがペルー南東部のアンデスの山腹でまる1週間、行動を共にする様子を、畏敬の念に打たれながら見守った。2頭は互いに社交的なやりとりをしたり、隣り合って眠ったりといった求愛行動を行い、最終的には8本の別々の動画によって、メガネグマの交尾行動の証拠が初めて確認された。(参考記事:「アマゾンに注ぐ「空を飛ぶ川」」 )
いちばんの発見は、メガネグマはどうやら、樹上でバランスを取りながら交尾をするらしいということだった。
興味深いことに、ピルコ氏らが科学文献を調べ回っても、同じ行動の報告は見つからなかった。アメリカクロクマ(Ursus americanus)は木に登り、樹上で眠ることもあるというのに。
「ほかの種のクマでは一般的な行動なのではないかと思いました」とピルコ氏は語る。「ところが、これはまったく新しい発見であり、これまでに報告した人も、論文を発表した人もいませんでした」