木星の氷の衛星エウロパに初の探査機が出発、生命の可能性探る
氷の下には海、NASA最大の惑星・衛星探査機「エウロパ・クリッパー」
米航空宇宙局(NASA)の探査機「エウロパ・クリッパー」が、日本時間10月15日午前1時6分に米ケネディ宇宙センターからスペースX社のロケットによって打ち上げられた。探査機は5年半かけて2030年に木星系に到達し、木星を周回しながら、その衛星エウロパの謎を解明するために3年半の間に50回近くフライバイ(接近通過)を行う。
エウロパは地球の月と同じくらいの大きさ。表面は氷の地殻(氷殻)で覆われ、その下には広大な海(内部海)があると考えられている。その水の量は、地球のすべての海水の量の約2倍もあるかもしれない。実は、このような構造の天体は宇宙に無数に存在している可能性がある。
「内部海を持つ氷の天体のためのミッションは、これが初めてです」と、NASAのエウロパ・ミッションのプログラム科学者であるカート・ニーバー氏は言う。「多くの発見があるはずです。素晴らしい探査になるでしょう」(参考記事:「生命を異星の海に探す」 )
エウロパについてわかっていること
エウロパは、1610年に木星に望遠鏡を向けたガリレオ・ガリレイによって、他の3つの衛星とともに発見された。
1979年には、NASAの探査機ボイジャー2号が撮影した高解像度画像から、エウロパの表面には長く不規則な亀裂が縦横に走っていて、クレーターは比較的少ないことが明らかになった。クレーターの少なさは、表面がまだ新しく、エウロパが地質学的に活発である可能性が高いことを示している。
1996年には、NASAの木星探査機ガリレオのデータから、この小さな氷の衛星に磁場があることが明らかになった。磁場は通常、地球のように大きな天体にしか見られないため、これは奇妙だった。宇宙物理学者のマーガレット・キベルソン氏らは、エウロパの氷殻の下に大量の塩水があれば、木星の磁場によってエウロパにも磁場が発生する可能性があることを示した 。
科学者たちはこうして初めて、地球以外の天体に氷殻に覆われた内部海がある証拠をつかんだ。現在では、同じく木星の衛星であるカリストとガニメデ、そして土星の衛星エンケラドスとタイタン、海王星の衛星トリトンが同様の構造を持つことが知られている。
ガリレオ探査機は、エウロパの表面が赤みがかった有機物でまだらに覆われていることも示したが、その後の観測では、赤っぽい部分に塩化ナトリウム(食塩の主成分)もあることがわかった。これらはいずれも、氷殻の下に生命が存在できる環境があるかもしれないことを示唆している。
それでも、エウロパについてはまだわからないことが多い。氷殻の厚さは数キロか、それとも数十キロに及ぶのか? 内部海の成分と深さは? 海底には生命にエネルギーを与えうる地熱活動があるのか? エウロパの表面にある有機物は内部海の生命の餌になりうるのか? こうした疑問が、今回のミッションの動機となっている。
エウロパ・クリッパー計画
エウロパ・クリッパーは、NASAがこれまでに作った惑星・衛星探査機の中では最も大きく、そのソーラーパネルの大きさはバスケットボールコートほどもある。探査機には、エウロパをかすめてフライバイをする際にデータをとる最新の観測機器が9台搭載されている。
探査機がエウロパに着陸したり、直接そのまわりを周回したりしないのは、木星が地球の約2万倍という強い磁場を持つからだ。この磁場が作り出す放射線に長時間さらされた電子機器は故障してしまうおそれがある。(参考記事:「木星の衛星エウロパは発光しているかもしれない、研究」 )
そこでエウロパ・クリッパーは、木星のまわりを大きな楕円軌道を描いて周回しながら、エウロパの表面から25キロという高度まで何度も接近し、その表面の95%について高解像度写真を撮影することになっている。
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