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2025年11月18日
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新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)/H3ロケット7号機 打上げ経過記者会見

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左から、五十嵐事業部長、山川理事長、古田審議官、猪俣参事官
2025年10月26日に、種子島宇宙センターからH3ロケット7号機による新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)の打上げが行われました。その後、センター内にある竹崎展望台にて打上げ結果に関する記者会見が開催され、現地で26社50名、オンラインで11社14名の報道関係者が参加しました。

第1部では日本政府、JAXA、三菱重工業株式会社の関係者が登壇。H3ロケットが計画どおり打ち上げられ、HTV-X1号機も国際宇宙ステーション(ISS)へ向けて安定的に飛行していること、この成功を今後の宇宙活動における競争力へとつなげていくことなどが語られました。また、第2部ではH3ロケットとHTV-Xのプロジェクトマネージャが登壇。それぞれの経過について技術的な詳細の解説がなされた他、今後の展望なども語られました。

第1部:各機関代表者からの報告

<登壇者>

  • 古田裕志 文部科学省 大臣官房審議官(研究開発局担当)
  • 猪俣明彦 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官
  • 五十嵐巖 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント宇宙事業部長
  • 山川宏 JAXA理事長
記者会見(第1部)の様子

H3ロケットの商業展開と国際競争力

三菱重工業の五十嵐事業部長は、今回打ち上げた24形態がH3ロケットの中で最もパワフルな構成であり、世界中から引き合いがあることを示唆。今後はHTV-X専用ロケットとしてではなく様々なミッションでの活躍に期待していることを語りました。加えて、JAXAの山川理事長は、この24形態に限定せず、22・24・30形態を総合的に活用することで、国際市場での競争力を高めていきたいと語りました。

H3ロケットの競合と市場戦略

山川理事長は、グローバルにさまざまな打上げ輸送サービス事業者が存在し、それら全てが競争相手になるとの認識を示しました。また、H3ロケットの強みについて、山川理事長と五十嵐事業部長は、オンタイム打上げの正確性、軌道投入精度の高さ、種子島宇宙センターという優れた打上げ環境を挙げ、それらをアピールしていくことで、多数ある打上げ輸送サービスの中で市場獲得を目指す考えを示しました。さらに、内閣府の猪俣参事官も、グローバルな競争の中で日本のロケット事業者を支援する姿勢を示しました。
報道陣からの質問に答える山川理事長

打上げ成功による将来の宇宙活動への期待

文部科学省の古田審議官は、H3ロケット7号機の打上げ成功と、HTV-X1号機の所定軌道への投入が確認されたことを受け、5回連続のH3ロケット打上げ成功を喜ばしく思うと述べました。猪俣参事官は、HTV-XによるISSへの物資輸送機会が、アルテミス計画や将来の探査活動に資する技術獲得に貢献すること、そして、H3ロケットが日本の宇宙開発利用を支える基盤として国内外の打上げ需要に応え、宇宙産業の発展に寄与することに期待感を示しました。

打上げ頻度向上に向けた取り組み

山川理事長は、打上げ頻度向上のために衛星整備施設の拡充や作業の効率化に取り組んでいることを説明。五十嵐事業部長も、設備増強によって宇宙事業全体の成長につなげたいとの意向を示しました。また、猪俣参事官は、必要に応じて関係省庁と連携し、種子島宇宙センターのインフラ整備について検討する可能性を示唆しました。

第2部:打上げ経過に関する技術説明

<登壇者>

  • 伊藤徳政 JAXA有人宇宙技術部門 新型宇宙ステーション補給機プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ
  • 有田誠 JAXA 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ
  • 志村康治 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H3プロジェクトマネージャー
記者会見(第2部)の様子

打上げ経過の詳細な報告

H3プロジェクトチームの有田プロジェクトマネージャは、打上げから約14分後にHTV-X1号機を分離し、第2段ロケットは地球を1周回して計画通りの海域に制御落下させることができたと報告。また、自律飛行安全システムやNASAのデータ中継衛星(TDRS)に対応したシステムも良好にデータを取得できたと述べました。HTV-Xプロジェクトチームの伊藤プロジェクトマネージャは、HTV-X1号機が分離後約1分でTDRSとの通信を確立し、太陽電池パドルが正常に展開、安定して飛行していることを報告しました。

H3-24形態 ×ばつ HTV-Xという初物同士の組み合わせ

有田プロジェクトマネージャは、H3ロケット24形態での初の打上げについて、16年前のH2BロケットによるHTV(こうのとり)1号機の打上げを思い起こしたと表現しました。特に、ISSに向かう補給機の打上げには1秒の遅れも許されないオンタイム性が求められるため、16年ぶりに当時と同じ緊張を経験したと述べました。また三菱重工業の志村プロジェクトマネージャーも、24形態というH3ロケットの初物、1号機というHTV-Xの初物を組み合わせた打上げには、非常に強い緊張感があったと述べ、無事に打ち上がったことへの安堵の言葉と、一度の打上げで大きな質量を宇宙に届けられることの意義を語りました。

若手技術者により進められた新技術導入

有田プロジェクトマネージャは、自律飛行安全システム、TDRS対応、外国製のワイドフェアリングなどの新技術は、若手技術者が中心となって開発を進めてきたことを説明。打上げ後、フェアリングの分離成功の信号を受けた時には、思わずガッツポーズが出たと振り返りました。
報道陣からの質問に答える有田プロジェクトマネージャ

HTV-Xの役割と今後の展望

伊藤プロジェクトマネージャは、天候不良による打上げ延期に伴い、HTV-X、H3ロケット、NASAの各チームの運用調整に苦労したものの、打上げ成功によってその苦労が吹き飛んだと喜びを語りました。しかし、HTV-XのミッションはまずはISSへの物資輸送が第一であり、まだ気を抜けないと強調しました。また、民間企業の有償利用物品の輸送も含めたHTV-Xの役割については、今後の広がりに期待を寄せる一方で、まずはこの1号機で確実に物資を届け、実績を作ることが重要だと述べました。

これまで経験のない「音」で感じた24形態の迫力

打上げ時、レンジコントロールセンター(RCC)では、ロケットの音が建物を震わせるように響いたことを有田プロジェクトマネージャが語り、これまでの打上げ経験では感じたことのない、頭の上に音が降ってくるような感覚だったと説明しました。その体験について、志村マネージャーは「天井が震えているようだった」と表現し、伊藤マネージャは「規模の大きさに驚いた」と述べました。
手振りを交えながら答える伊藤プロジェクトマネージャ

HTV-Xの「二刀流」構想と回収ミッション

伊藤プロジェクトマネージャは、HTV-Xの「二刀流」機能(物資輸送とISSを離脱した後の実験プラットフォーム機能)について、この発想は政府からのアイデアを受けてJAXAが実現したもので、日本の政策的・技術的な成果だと述べました。また、こうのとり7号機で実証した回収カプセル技術はHTV-Xでも搭載可能だが、現時点で具体的な回収ミッションは計画されていないことを伝えました。

H3ロケットの未来

有田プロジェクトマネージャは、H3ロケットは、22形態と24形態が商業マーケットに持っていけるロケットとして開発されたことを説明。特に24形態は、衛星コンステレーション(同じ軌道上に多数個の衛星を打上げ、それらを連携させて一体的に運用するシステム)の広がりに対応し、より重い、より多くの衛星群を一度に運ぶのに適したロケットとして今後の需要が期待されると述べました。また昨今の新しい流れとして、小型衛星の打上げニーズの増加をあげ、最もスマートな30形態にも商業的な可能性が出てきていることを示唆。22・24・30の3つの形態が揃うことでH3ロケットの強みが最大化されると語りました。
左から、志村マネージャー、有田プロジェクトマネージャ、伊藤プロジェクトマネージャ

記者会見の様子は、JAXAの公式YouTubeチャンネルでもライブ配信されました。見逃した方は、こちらでアーカイブ配信されていますので、ぜひご覧ください。
新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)/H3ロケット7号機 打上げ経過記者会見

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(注記)特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA

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