2024年8月24日号

週刊ダイヤモンドの見どころ

村井令二(ダイヤモンド編集部)

むらい・れいじ/早稲田大学卒業後、外資系通信社を経て、ロイター通信で企業担当として、銀行、鉄鋼、流通業界を歴任し、リーマンショック後に電機業界担当として電子立国の凋落問題を取材。16年から週刊ダイヤモンドに移って委嘱記者。引き続きシャープ、東芝問題を取材するとともに、家電、産業電機、通信、半導体、精密、電子部品、ゲームに関わる情報通信技術を幅広く担当。主な担当特集は「背徳のシャープ」「三流の東芝、一流の半導体」「孫正義の知らないソフトバンク」「AI格差」など。趣味はスーパー銭湯。

2024年08月16日掲載

エヌビディアが生成AIブームで時価総額500兆円越え!トヨタはAI半導体めぐる巨額投資の波に乗るか、飲み込まれるか?

『週刊ダイヤモンド』8月24日号の第1特集は「半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦」です。生成AI(人工知能)の爆発的普及とともに半導体業界を席巻する米エヌビディア。同社のAI半導体をめぐって、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、テスラなど米国の巨大テック企業が争奪戦を繰り広げています。この「生成AI革命」に、自動車で世界首位のトヨタ自動車や日本企業はどう立ち向かうのでしょうか。ダイヤモンド編集部の総力取材で迫ります。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

エヌビディア時価総額は一時500兆円超え
半導体のけん引役は自動車ではなかった!

生成AIの普及とともに時代の寵児となったエヌビディア。6月には時価総額が3兆3400億ドル(約527兆円。当時)となり、米マイクロソフトや米アップルを抜いて世界首位に躍り出た。

Photo:Diamond

"AI相場"の陰りから現下の株価は調整局面にあるが、快進撃は止まらない。AIの計算に使う高性能半導体市場で、エヌビディア製GPU(画像処理半導体)は、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)と米インテルといった半導体の競合を寄せ付けず、独占状態だ。

2022年秋に「ChatGPT」が登場したのをきっかけに、米ビッグテック企業は、生成AIの開発競争を激化させ、エヌビディアのGPUを奪い合っている。

エヌビディアの驚異的な売上高をけん引するのは、データセンター向け事業だ。ビッグテック4社は株価が下がってもデータセンターへの投資を減らしているわけではない。むしろ24年後半も投資を上積みしており、巨額資金がエヌビディアに流れ込む見通しだ。

エヌビディアのGPUは17年頃から自動運転向けの半導体として期待を集め、トヨタ自動車など大手自動車メーカーが次々とエヌビディアと提携した。

だが足元では、エヌビディアの自動車向け事業の売上高は11億ドルと伸び悩む。米テスラもGPUの大量調達に乗り出しているが、その用途は自動運転向けではなく、自社のデータセンター向けだ。

産業構造を激変させる「生成AI革命」
トヨタはGPUの巨額投資に乗り出すか

ChatGPTとともにはじまった生成AIの爆発的拡大で好機を掴んだ米エヌビディアは、半導体業界だけでなく、米ビッグテックを含めたAI業界全体でも"1人勝ち"の情勢だ。

だが、この「生成AI革命」は一過性のブームで終わるのではなく、世界の産業構造を激変させるほどのインパクトを持つ。その衝撃は、インターネットやスマートフォンが誕生して以来のものと言っても過言ではないだろう。

GPUの需給逼迫を受けて「エヌビディア経済圏」は急成長を遂げている。そこでは、GPUの顧客であるビッグテックは投資を急ぎ、GPUのサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)や韓国SKハイニックスが増産体制を敷く。すでに世界のテック企業にとって、エヌビディア経済圏を攻略できるかどうかが生命線になってきた。

翻って、自動車世界首位のトヨタはどうか。トヨタが提唱する自動車会社からモビリティカンパニーへの変革は、言い換えればソフトウエア改革である。トヨタはGPUを使って自動運転システムの開発を続けているが、SDV(ソフトウエアが車の価値を決める車)の実現に向けてGPUの巨額投資に乗り出す動きは見えてこない。

トヨタグループの認証不正問題が尾を引き、企業統治のあり方にも疑問符がついている。

果たして、トヨタが引っ張る日本企業は、生成AI革命の荒波を乗り越えられるのだろうか。

半導体 の覇権争いと日本企業
エヌビディアVSトヨタの頂上決戦で解剖

『週刊ダイヤモンド』8月24日号の第1特集は「半導体 エヌビディアVSトヨタ 頂上決戦」です。

「生成AIの普及により半導体大手のエヌビディアが"1人勝ち」

今年に入ってからメディアを賑わすようになったこの言葉は、産業史上、どのような意味を持つことになるのでしょうか。

ChatGPTのユーザーとして生成AIを使いこなすだけではなく、生成AI産業における覇権争いの構造を知らなければ、深く理解するのは難しいかもしれません。

特集では、エヌビディアの半導体を中心に、米ビッグテック企業が争奪戦を繰り広げ、台湾TSMCなどサプライチェーンが増産対応に追われる「エヌビディア経済圏」の構造を大解剖します。エヌビディアの半導体に群がる世界中のプレーヤーの覇権争いの深層構造を明かしました。

さらに、エヌビディアが独走する生成AI革命にキャッチアップするべく、日本政府と日本企業が動き始めています。トヨタもソフトウエア変革を完遂するためにはGPUの調達は欠かせません。また、生成AIがもたらす産業構造の変化への対応も迫られます。

米ビッグテックを翻弄する半導体大手のエヌビディア、自動車産業世界一のトヨタ、生成AI革命に立ち向かう日本企業――。膨張するエヌビディア経済圏の最深部の動向に迫りました。

また本号では、緊急特集『株・為替乱高下 日銀利上げパニック』と第2特集『伊藤忠商事 三菱・三井超えの試練』という二つの巨弾特集を組みました。世界経済の動乱期に、日本企業の勝ち筋はどこにあるのか。ダイヤモンド編集部が総力を挙げて、激動期を迎えた産業界の最前線を追いました。

今週の週刊ダイヤモンド2024年12月21日号[990円]

最新号表紙

特集銀行&信金・信組 最新序列2025

本格的な金利上昇が始まって、間もなく1年。銀行の事業環境は一変した。企業や個人への貸し出しで利益を追求する一方、預金獲得も進めなければならない。投資家や金融当局からは、 政策保有株式について厳しい目が向けられている。さらに足元では、国内金利上昇による、有価証券の含み損増大リスクも浮上している。金利上昇による良しあしがはっきりと出始めた今、銀行の本業力はこれまで以上に問われている。そこで銀行103行と254の信用金庫、132の信用組合の財務データを徹底検証。金利上昇時代を生きる銀行&信金・信組の内情に迫った。

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記者の目

  • 編集部 永吉泰貴

    バッティングは上達

    最近、バッティングセンターにはまっています。息をするように26回利用券を消費してきた日々のおかげか、気が付けば打球飛距離が伸び、スイングスピードも速くなっているのを実感します。
    片や、なぜか伸びないのが原稿の執筆スピード。記者1年目の頃からあまり向上していない気がします。さすがにバッティングセンターよりも時間を費やしてきたはずですが、この違いは何なのか。
    ChatGPTに聞いたところ、「面白い対比ですね」とちゃかされた後、「原稿は単に速く書けばいいのではありません。読者を意識した書き方など、スピードと質のバランスが重要です」と正論で𠮟られました。読者を第一に考えて書き上げた銀行特集、ぜひご笑覧ください。

  • 副編集長 臼井真粧美

    郵便局の窓口の面倒な人

    郵便局窓口に銀行関係の手続きで訪れた先日、マネーローンダリング防止などを目的に、職業や取引目的の申告を求められました。
    その内容が年収などにも及んでボリューミー。ここに至るまでの手続きで窓口側のスムーズさが欠けていたのもあって、「時間がかかって面倒だなあ」という態度を表に出してしまいました。
    窓口の女性はそんな態度、慣れたものなのか、ニコニコ。
    なんだよと思いながら手続きの最終段階に入ったとき、持参すべき書類がそろっていないことが判明。「うわ、時間を無駄にさせている面倒な人は私の方か」と申し訳なくなりながら窓口の女性を見ると、変わらずニコニコ。
    笑顔に救われながら、そそくさと帰りました。

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表紙

特集銀行&信金・信組 最新序列2025

本格的な金利上昇が始まって、間もなく1年。銀行の事業環境は一変した。企業や個人への貸し出しで利益を追求する一方、預金獲得も進めなければならない。投資家や金融当局からは、 政策保有株式について厳しい目が向けられている。さらに足元では、国内金…

特集2金融人事コンフィデンシャル

毎年12月、銀行員は落ち着きをなくす。それは首脳人事が発表されるからだ。誰がトップに就くかによって、末端の銀行員であっても出世とキャリアは大きく影響を受ける。そこで3メガバンクと地方銀行の最新の首脳人事を探った。

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