濱口秀司さんに聞く「イノベーション人材の教育法」:「教える」なんておこがましい。自分を殺せる刺客を作れ【書籍オンライン編集部セレクション】
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――誰かを教育する経験というのは、少し歳を取って経験を積んだ人間が新たな発見をしたり変われるきっかけのひとつになりそうですね。
歳を取れば取るほど変わるのは難しいけど、先ほども言ったとおり、衝撃的に危機的な状況に持ちこめば、人間は変わります。この衝撃的な状況をつくる「刺激」には、マイナスの刺激とプラスの刺激があって、僕みたいな危機的な状況のマイナスの刺激を、慣れない人が受けると潰れる場合があるから、あまり推奨はしないですけどね。
また、もって生まれたものが一人一人違うというのも、教育の面白いところです。そもそも教育の目的は、もって生まれた不公平を、公平に近づけることだ、と僕は思っている。努力することで人は変わります。とはいえ、世の中に突き抜けている人がいることも覚えておかなければなりません。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグと闘おうとして、やっぱり勝てない......なんてガッカリするほうが間違っている。相手は70億分の1の確率で生まれた天才ですから。
――彼らのレベルにはいつまでたっても到達しないし、そこで諦めていては仕方がないということですか。
僕はジョブズとは会ったことはないですけど、たしかに半分は天才だったんだろう、と思います。でも、あとの半分は、ただの調子に乗ったヤツだったんじゃないか、とも思う。やってみたら、うまくいっちゃった。一回追い出されたけど、戻ってきたら、またうまくいっちゃった、と。僕自身は危機的な状況に自分を追い込んで、マイナスの刺激がある中で仕事をしているのですが、逆に彼らはプラスの刺激を受けて調子に乗るわけです。
成功すると、人間というのは必ず「調子に乗る」んですね。よく成功したスタートアップの人も、「神になったような気がする瞬間がある」と言うじゃないですか。実際、上場前ぐらいで事業がすごく伸びてるときなんて、そういう全能感を感じるんだと思うんです。すると、神の視点に変わるんですよ。私利私欲ではなくて、この世をどうするのか、どう変えればいいのか、と普通の人間を超えた視点になっていく。ジョブズは何度か成功しているので、そのたびに視点が変わる、というのを繰り返して、スパイラルで視点がどんどん高くなっていったのではないか、と想像します。だから、今のアップルのあのへんてこな本社ビルを「人間、調子に乗っちゃうとえらいことになるぞ」のモニュメント、と僕は呼んでいるんですけど(笑)。
ノウハウや才能も重要ですが、人間が調子に乗っちゃったときのパワーというのは計り知れない。スコープが違うから、判断が変わるでしょう。仕事をしながら、そういう相手かもしれないと思うときは、ちょっと怖さを感じることもあります。
――濱口さんでも、怖いと思うことがあるんですね。
僕はリスクが嫌いだから、かなり堅く見越していくんですけど、神の目線をもってる相手だと(リスクを織り込む)係数が少し緩くて、自然体でもっとリスクをとっていくんですよね。ただ、そういう構造は一応理解しているので、自分も疑似モードで似たような感覚にもっていくことにしてますけど。
――最後はかなり上級編の話になりましたが、ともかく今回の論文集は、イノベーションを起こす作法を「型」として知っていただくには最適の内容です、ということで、このインタビューを無理やりに締めさせていただきます(笑)。
僕は自分の本の宣伝なんて嫌だから、そこはお任せしますよ......本じゃなくて、連載の論文集です(笑)。「本は書きたくない」と言ったら、「論文集ならどうですか」という交渉を受けて、それならいいのかなと......僕、八方美人やから。
「論文集であれば、"本"ではない」という定義が僕の中にあったんですけど、頭の中では(これでよかったのか?)とグルグルしてしまって、(印税は寄付しよう、それならいいんだ)と自分を納得させました。
――嫌々出す、みたいに言わないでください(笑)。今日はありがとうございました。人材教育については、今回発売した論文集「SHIFT:イノベーションの作法」でもみっちり誌面を割いてまとめていますので、参考にご覧になってみてください。
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