米債務上限問題で見えた「潮流変化」、市場の関心は金融政策から公的債務問題に

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バイデン大統領とマッカーシー下院議長の間では、歳出削減を条件に上限引き上げが大筋合意されたようだが、議会が今後、どう対応するのかは見えていないマッカーシー下院議長との債務上限引き上げの合意について会見を行うバイデン大統領 Photo:Anna Rose Layden/gettyimages

米債務上限引き上げで大筋合意も
金融市場の不安定化は続く

ここ1カ月間、市場の注目は米国の連邦債務上限引き上げ問題に向けられてきた。

バイデン大統領とマッカーシー下院議長の間では、歳出削減を条件に上限引き上げが大筋合意されたようだが、議会が今後、どう対応するのかは見えていない。

現在31.4兆ドルと定められている連邦債務上限が引き上げられなければ、米国債の利払い停止など米政府のデフォルトが現実味を帯びてくる。

万が一デフォルトになれば、短期債中心に運用するMMFの時価が額面割れとなって、家計や企業がパニックに陥ることもあり得る。短期債の担保価値が急低下して市場の金融取引が凍結してしまう恐れもある。

だが米国財政における問題の本質は、そこにあるのではない。

より中長期的見地に立てば、財政赤字の拡大傾向が止まらないことこそが深刻なのだ。そしてこの構図は中国やEU、日本も同じだ。

金融政策を追いかけるのに精いっぱいで来た金融市場の関心は財政赤字拡大による金利上昇リスク、公的債務問題自体に向き始める状況だ。

財政赤字対GDP比、今後10年で7%超?
過去50年の平均の2倍の規模

債務上限問題を軽視するつもりはないが、誤解を恐れずに言えば、これはバイデン政権と共和党主導の議会による来年の大統領選を意識した政治的駆け引きの色合いが強いものだ。

米連邦政府の債務残高は1989年の3兆ドルから今や31兆ドルと10倍以上に跳ね上がり、GDP比117%まで拡大した。確かに政府債務の増加は急ピッチだが、それ自体が危機のタネというわけではない。

問題の本質は財政赤字の拡大にある。

過去50年間に平均GDP比3.5%だった財政赤字が、米議会予算局(CBO)が予想しているように、今後10年間で同6%台に跳ね上がる方が経済を蝕む要素になり得ると言っても良いだろう。

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