部下の才能を「つぶす上司」「のばす上司」の決定的な差
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同じ境遇でも部下の才能を「つぶす上司」と「のばす上司」がいます。その差はいったいどこにあるのでしょうか。組織戦略の専門家である北野唯我さんは、部下に対して「適切なフィードバック」ができるかどうかが鍵を握っていると語ります。20万部のベストセラー待望のマンガ版『マンガ このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』や、「戦国武将の人事戦略」に焦点を当てた異色の経営本『戦国ベンチャーズ― 人事の天才・徳川家康と曹操に学ぶ、「強みの経営」とは?ー』、『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』など、著書が続々と話題を読んでいる北野さんに、部下のパフォーマンスを最大限に発揮する上司だけがやっているフィードバックの手法について聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、マンガ/松枝尚嗣)
「弱みのフィードバック」はコスパが悪い
──同じ環境・境遇でも上司によって部下の成長度やパフォーマンスは大きく変わります。部下の才能を「つぶす上司」「のばす上司」のもっとも大きな差は何でしょうか?
北野唯我(以下、北野):フィードバックのやり方は大きいと思いますね。「強み」や「弱み」など、自分自身が持つ個性って、自分だけの力で見つけるのは難しいじゃないですか。やっぱり客観的な視点を持った、他者からのフィードバックがないとわからないですよね。自分では「当たり前」と思っていることが、意外にも他人にとっては価値があった、なんてこともあるでしょう?
そういった意味で、部下のポテンシャルを最大限発揮させるためには、上司が適切なフィードバックをすることは必須条件ではないかなと思います。
──部下の才能を「つぶす上司」は、どんなフィードバックをしてしまっているのでしょうか。
北野:いちばんの特徴は、「弱みのフィードバック」ばかりしてしまうことですね。私は「良かれと思って現象」と呼んでいるのですが、相手のためだと弱点や失敗をどんどん指摘してしまうんです。部下の課題はどうしても目につきやすいですから、それを指摘して直してあげようとしてしまう。
課題を指摘するのは必ずしも悪いことではないのですが、ただ、こればかりしていると部下の強みを引き出すことはできず、効果は薄い。人の弱みとはその人の個性でもありますから、なくすのは至難の技ですし、やろうと思ったら相当な労力がかかります。
私の好きなドラッカーの言葉に、「努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わせないことである。強みに集中すべきである。無能を並の水準にするには一流を超一流にするよりもはるかに多くのエネルギーを必要とする」というものがあるのですが、これはまさにそのとおりだなと思っていて。すべての能力を平均値レベルに引き上げようとするのは、あまりコスパがよくないんです。
フィードバックは強み3:弱み1のバランスで
──なるほど。逆にどんなフィードバックのやり方だと、部下の才能をのばせるでしょうか?
北野:「強み3:弱み1」のバランスがいいと思います。『戦国ベンチャーズ』にも弱みのフィードバックを強みのフィードバックに変えるやり方を書いているのですが、ポイントは「過去」ではなく「未来」にフォーカスすること。マネージャーはどうしても「どんな失敗をしたのか」など過去のほうばかり見てフィードバックしがちなのですが、そうではなく「未来にとって、次にすべきことはこれだよね」という伝え方を心がける。それだけでもずいぶん部下の成長度は変わると思いますよ。
──未来に何をするべきか、という言い方だと、モチベーションも上がりそうですね。北野さんご自身は、どんなフィードバックをされていますか?
北野:弱みのフィードバックをするときほど慎重になりますね。指摘もかなり丁寧にしていると思います。
──具体的には?
北野:たとえば、プロジェクトのなかで進んでいない箇所があったとしますよね。そういうときには、「これ、進んでいない理由って、何かあったりします?」という聞き方をします。頭ごなしに指摘すると相手も萎縮してしまって、課題の原因を特定できなかったりするので、相手が素直に言いやすい空気は心がけていますね。
──たしかに、そう聞かれると理由をちゃんと言いやすいですね。「なんでできてないんだ!」と怒鳴られたら謝るしかないですからね......。
北野:あとは、ポジティブなフィードバックが多い、というのもよく言われます。このあいだ部下に言われたのは、「北野さんには3つ反応がある」と。それが、「いいね」が普通、「めっちゃいいやん」がまあまあ、「最高、すぐやろう」が最上級だそうです(笑)。
──素敵! めちゃくちゃポジティブですね!
北野:もちろん、それで終わるだけではなく、課題の指摘もしますが、「こうしたらもっとよくなるんじゃない?」「もっとよくするためにもう少し考えてみよう」という未来にフォーカスした言い方を心がけています。
あとはやはり、「反論の余地を残す」というのが大事じゃないかなと。反論の余地がないと、不満が溜まってしまいますしね。上司に言うべきことがあっても言えない関係が続いていると、周囲に悪口を言って周りの士気を下げたり、その人の機嫌をとるために多くの人のエネルギーを使わざるを得ない状況になるかもしれない。
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役などを経て、現在、ワンキャリア取締役。テレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』(以上、ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社) などがある。最新刊は『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』。
本書の主な内容
『転職の思考法』の主人公だった青野がメンターとして登場。
オリジナルストーリーでパワーアップしました!
「キャリアの武器がない」と思う人にこそおすすめしたいマンガ版
<あらすじ>
広告会社の総務部で働く奈美は、ある日会社が外資系企業に買収されるという憂き目に遭う。その買収先から人事担当としてやってきたのが、幼い頃に「近所のお兄ちゃん」として親しくしていた青野トオルだった! 自分には転職は無理...と思っていた奈美だったが、青野から「転職の思考法」を伝授され、考えが変わっていく。
<マンガ部分目次>
プロローグ 私には武器がない
第1章 私の市場価値(マーケット・バリュー)
第2章 転職は「裏切り」?
第3章 いいエージェント、ダメなエージェント
第4章 もう、後悔したくない
エピローグ 私たちは居場所を選べる
<解説部分目次>
いつの時代も変わらない、転職の原理原則
原則1: 転職は悪ではない
原則2: 市場価値と社内評価は一致しない
原則3: 9割の人は、S級人材ではない
あなたのマーケット・バリュー(市場価値)はいくら?
マーケットバリューの高める3つの方法
「やりたいこと」はなくてもいい
大事なのは転職よりも「転職できる」というカード
自分自身の棚卸しのやり方1 過去やってきたことを書き出す
自分自身の棚卸しのやり方2 再現性を見つける
転職するときどこに相談すべきか?(5つのチャネル)
転職エージェントのビジネスモデルを知る
いいエージェント、ダメなエージェント5ヵ条
企業は面接で何を見ているか
給料が高い会社と低い会社の違い
内定をもらってから1週間の過ごし方
もし元の会社から引き留めにあったら
退職で気をつける3つのこと
活躍する転職者、活躍できない転職者の違い
20万部のベストセラー、ついにマンガ化! 転職へのモヤモヤと罪悪感はこの1冊だけで全て解消できる! 「自分には武器がない」と思っている人にこそ読んでほしい、完全書き下ろしの「もう一つのストーリー」が誕生しました。青野がメンターとなり総務部勤務の奈美の悩みを解決に導きます。