百貨店は"最悪期脱出"も、三越伊勢丹の復調が大手で最も鈍い理由
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新型コロナウイルスのワクチン接種の拡大で新規感染者数は激減した。昨年の春はほぼ全館休業に追い込まれ大打撃を受けた百貨店の売り上げは回復基調にあるが、厳しい状態が続く。特集『決算書100本ノック! 2021冬』(全16回)の#5では、ダイヤモンド編集部の独自試算で、昨年同期から営業利益が20%増加していても、コロナ前の水準に届かない厳しい見通しを示す。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
店頭がにぎわう休日の新宿伊勢丹
10月は増収も、コロナ前の「反動減」には及ばず
今年5月、3度目の緊急事態宣言が出されたにもかかわらず、高島屋は都内の店舗で高級腕時計や宝飾品を除くほぼ全ての売り場で営業を再開していた。
バカラのグラスも、フェラガモのバッグもアルマーニのスーツも全て「生活必需品」だという大胆な解釈を示して、実質的な店舗営業を"強行"。他社の一部が追随した他、ブランド品店は予約販売で対応するなど苦肉の策を取った。
なぜなら、コロナ禍の最初の緊急事態宣言で行政の要請に従いほぼ全館休業した昨年4月は、東京・大阪の主要店舗の売り上げが前年比8〜9割減と瀕死の状態に。これが続けば会社全体の存続さえ危うかったのだ。
それが今や、緊急事態宣言が9月30日をもって全面解除され、最大の危機は乗り切ったかに見える。
例えば、10月の休日の伊勢丹新宿本店。地下1階食品売り場では、人気のスイーツ店に行列が。1階や2階の化粧品売り場では、若い女性客に美容部員が化粧を施す「タッチアップ」が行われている。事実、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の首都圏の店舗の10月の売り上げ(速報値)は前年同月比で9.5%増となった。
とはいえ、コロナ前に比べれば、まったく回復していない。一昨年である2019年10月の売り上げは、消費税率引き上げの反動により、18年同月より24.5%の大幅減となっていた。実は今年10月の売上高は、その"異常値"から1割も回復していないのだ(下図参照)。
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大丸松坂屋百貨店を擁するJ.フロントリテイリング(JFR)、高島屋も基本的には同じ傾向で、阪急阪神百貨店を擁するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)が一昨年をわずかに上回った程度だ。
コロナ前の「正常値」に回帰するためには、各社ともに、より大きな売り上げの回復が必要となるが、「リベンジ消費」にそこまでの推進力はあるのだろうか。
今回、ダイヤモンド編集部では国内百貨店主要4社の収益見通しを独自試算。悲観的にならざるを得ない姿が見えてきた。
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