日立で早くも「次の社長」レース勃発!日本人vs外国人候補による手柄争いの内幕
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6月に社長が交代したばかりの日立製作所だが、社内では早速次期社長の候補たちがしのぎを削っている。急成長する3部門それぞれのトップを務める社長候補が巨額買収を仕掛けて実績作りに躍起になっているのだ。特集『日立 最強グループの真贋』(全12回)の#3では、日立社内の権力構造に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
IT、鉄道、送配電事業の副社長が
虎視眈々と狙う社長の座
6月に死去した日立製作所の中西宏明前会長(日本経済団体連合会前会長)が日立に遺した功績は大きい。その中でも出色の置き土産といえるのが、豊富な社長候補たちだろう。
日立社内では40代から社長候補を選抜して、経営者として養成。それと並行して、買収した外資企業やグローバルな競合企業から引き抜いた外国人経営者を副社長として抜てきすることで、多様な人材がトップリーダーとしての資質や実績を競い合う環境が出来上がった。
日立では、年齢に関係なく、実力次第で登用することが増えており、社長候補の若返りも著しい。
実際にこの6月の社長人事でも、50代の経営者が誕生してもおかしくない状況だった。
結果的には、社長候補の大本命だった小島啓二氏(64歳)が順当に副社長から昇進した。それでも、「中西氏の体調が悪化して社長交代が1年前倒しになっていなければ、徳永俊昭氏(54歳)がなっていてもおかしくはなかった」と日立関係者は語る。
徳永氏は4月に副社長に昇進したばかりで、さすがに2カ月余りでの社長昇進は時期尚早ということだったようだ。
ただし、新社長に小島氏がなろうが徳永氏がなろうが、日立における経営の方向性はそうは変わらなかっただろう。
カリスマ的な経営者に依存するのではなく、公平な競争を勝ち抜いたリーダーたちが「チーム戦」を展開する――。それが近年の日立の強みであり、創業家や創業者が強いリーダーシップを発揮するトヨタ自動車や日本電産との違いなのだ。
小島氏もその日立の強みは十分に意識しているようだ。社長交代を発表した会見で小島氏は、「自分はカリスマではないし、秀でたところがあるわけでもない」と謙遜しつつ、「歴代の社長から私が引き継ぐ最大の財産は一流のグローバル人材です。(中略)そういう人たちと徹底的にコミュニケーションをして、次の日立をつくっていくのが私の一番やりたいことであり使命です」とチームワークを重視する考えを強調した。チーム戦を展開する日立のリーダーらしい所信表明である。
ただし、チームワーク重視とはいえ、トップの座を巡る戦いは熾烈だ。水面下では、社長候補たちが、実績をアピールするための競争を激化させている。
次ページ以降では、候補たちがM&A(企業の合併・買収)を連発し、実績作りに躍起になっている実態を見ていこう。
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