「日本の製造業は国内に工場を持てなくなる」コニカミノルタ社長が鳴らす警鐘

山名昌衛・コニカミノルタ社長兼CEOインタビュー

ダイヤモンド編集部
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脱炭素#11Photo by Kazutoshi Sumitomo

もはや「脱炭素」の条件をクリアすることが、ビジネス参加の最低条件となった。実際に、米GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)などのグローバル企業は、自社のみならず、サプライヤーや取引先に対しても脱炭素を求めるようになっている。コニカミノルタは、国内産業界で初めて「カーボンマイナス」という高いハードルを掲げた企業だ。特集『脱炭素 3000兆円の衝撃』(全12回)の#11では、山名昌衛・コニカミノルタ社長に、環境を経営課題の「本丸」に据えた経緯を聞くとともに、環境対応で出遅れた日系メーカーに対して警鐘を鳴らしてもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

脱炭素はビジネス参画の"入場チケット"
国内産業界初の「カーボンマイナス」とは

昨年末に、菅政権が「2050年カーボンニュートラル(炭素中立。二酸化炭素〈CO2〉の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること)に伴うグリーン成長戦略」を掲げて以降、脱炭素やカーボンニュートラル、カーボンゼロといった用語が産業界で広く流通するようになった。

それでも、「カーボンマイナス」という言葉を耳にしたことのあるビジネスマンは少ないのではないだろうか。

カーボンマイナスとは、事務機や医療を本業とするコニカミノルタが掲げる「環境負荷の低減」のスローガンである。メーカーが自社製品のライフサイクル(調達、生産、物流から販売、アフターサービスなど)を見直すことで、CO2排出量を減らす取り組みは一般的だが、コニカミノルタの場合は一味違う。

自社だけではなく、顧客企業や調達先サプライヤーに対しても「具体的な環境目標(CO2排出量の削減)」を求めている点が異なるのだ。

図表:コニカミノルタが掲げる脱炭素のハードル
拡大画像表示

いまや米GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)などのグローバル企業が、ビジネスパートナーに対して再生可能エネルギーの利用を要請するなど、脱炭素がビジネス参加の"入場券"となりつつある。そんな中、コニカミノルタは国内製造業で初めてカーボンマイナスの方針を掲げた。具体的には、2030年にカーボンマイナスを達成するというものだ。

05年時点でコニカミノルタのCO2排出量は206.7万トン。30年にはそれを60%削減して80万トンにまで減らしつつ、顧客企業、サプライヤーの排出量も80万トン以上を減らすことでカーボンマイナスを達成しようというものである。

このプロジェクトの旗振り役は、サステナビリティ統括部長を務める高橋壮模・コニカミノルタ業務執行役員だ。環境対応の取り組みは非常に地道なものだが、そうかといってボランティアでやっているわけではないという。

コニカミノルタは、13年から中国とマレーシアにある工場のサプライヤー23社に対してCO2排出量の削減目標を定め、それを達成するために"秘伝のタレ"である自社の環境技術・ノウハウを伝授して回った。最初は警戒していたサプライヤーだが、そのノウハウのおかげで原材料の仕入れコストが劇的に削減。結果的にコニカミノルタの部材調達コストも下げることができたという。環境対応は経済的なメリットとのセットでやらないと長く続かないということだ。

それでは、なぜコニカミノルタは前代未聞のカーボンマイナスを掲げることにしたのか。山名昌衛・コニカミノルタ社長を直撃し、環境を経営課題の「本丸」に据える理由について聞いた。その背景には、国内製造業が抱える重大な問題があった。

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