濱口秀司さんに聞く100%成功するプレゼン(4)「オンラインのプレゼンがリアルより強力に機能するアプローチとは?」
『SHIFT イノベーションの作法』刊行1周年記念 濱口秀司さんZoomセミナー「こんなときだからプレゼン力」ダイジェスト(4)
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昨今増えているオンラインでプレゼンやミーティングを絶対成功させるコツとは? 本記事は、『SHIFT イノベーションの作法』発売1周年記念として開催した、著者でありビジネスデザイナーの濱口秀司さんに「プレゼンの極意」を聞くセミナー内容のダイジェストです。USBメモリやマイナスイオンドライヤーなど数々のイノベーションを実現してきた濱口さんは、新しいアイデアを実現する過程で、それに反対だったり懐疑的だったりする社内の人たちをどのように納得・共感させているのか? 『SHIFT イノベーションの作法』中でも「不確実性の中で意思決定を下すには インターナルマーケティングのアプローチ」内で語られた「合意を取り付けるプレゼンテーション手法」についてさらに深掘りして聞きました。(編集協力:岡田菜子)
オンラインのプレゼンを絶対に成功させるコツ
――コロナ禍で増えてきているオンラインのプレゼンで気をつけていることはありますか?
京都大学工学部卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。R&Dおよび研究企画に従事後、全社戦略投資案件の意思決定分析を担当。1993年、日本初企業内イントラネットを高須賀宣氏(サイボウズ創業者)とともに考案・構築。1998年から米国のデザイン会社、Zibaに参画。1999年、世界初のUSBフラッシュメモリのコンセプトをつくり、その後数々のイノベーションをリード。パナソニック電工米国研究所上席副社長、米国ソフトウェアベンチャーCOOを経て、2009年に戦略ディレクターとしてZibaに再び参画。現在はZibaのエグゼクティブフェローを務めながら自身の実験会社「monogoto」を立ち上げ、ビジネスデザイン分野にフォーカスした活動を行っている。B2CからB2Bの幅広い商品・サービスの企画、製品開発、R&D戦略、価格戦略を含むマーケティング、工場の生産性向上、財務面も含めた事業・経営戦略に及ぶまで包括的な事業活動のコンサルティングを手掛ける。ドイツRedDotデザイン賞審査員。米国ポートランドとロサンゼルス在住。
もともとWEB会議は苦手でした。僕はよくホワイトボードを使って議論しますし、クライアントの熱量や微妙な表現など、何を考えているのかは対面のほうが引き出しやすいからです。アメリカで仕事していると昔から電話会議はあったのですが、顔も見えないし英語も分からないしで、僕は大嫌いだったんですね。
だけど、この新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに、自分の一番苦手なことをやろうと、対面を一切なくしてすべてWEBに切り替えました。5〜6月と2ヵ月間、1日平均で17時間ぐらい、死ぬほどWEB会議をやり続けました。残りの時間は食べているか寝ているかくらいです。
そこで、WEB会議がどうやればうまくいくのか、テクニック開発をやってみたのです。いろんなノウハウがありますが、1個だけ紹介します。
会議室でのリアルなミーティングだと役員や部長が好き勝手に話すので、終わってから会議のポイントや結論が分からず、議事録ができてから「そういうことだったの?」となることも多いですよね。普段の対面ミーディングでさえ議論が空中に飛びがちなのに、WEB会議ではなおさら議論の筋道が分からなくなってきます。
そこで僕が実際やっているのは、議論を書きつけながら進めることです。自分1人でやれないこともないですが、もう1人ほかに書記をやってくれる協力者がいるとベターです。ルールとして、書記には「100%、僕の言うことを聞いてください」と伝えておきます。
まず画面上に、ワードを立ち上げます。それを、本や文章を書く人が構造化するために使う「アウトライン」モードにします。アウトラインモードでは箇条書きで文章を書いていけるので、そこに階層ができます。箇条書きの下にまた箇条書きができたり、下位の階層を畳んだりすることもできます。メインテーマを話しているときは、下位のテーマは畳んでしまうなどの伸縮が自在です。
僕が「あなたがおっしゃっていることは、こういうことですね?」と整理しながら、書記さんにはその通りにまとめてもらいます。その人の発言が空中に浮かないで画面上に止まって、誰でも文章で見ることができるのです。画面上に全員が見ながら議事録ができ上がっていきます。
みんなが好き勝手に話すことを僕がまとめるときには、僕なりの解釈が入りますよね。発言した人が「表現が違うよ、濱口さん」と訂正することがあります。じゃあ書き直しましょうと、書記に書き直してもらいます。また、議論が進んで「それって3つのことを言ってますよね?」と僕がまとめて、その人がOKと承諾したり、ということもある。これを繰り返していくだけです。
そうすると、みんなが言っていることが言語的な温度感として伝わるし、通信状態が悪くても可視化されます。周りの人が見ているなかで、みんなの意見がきちんと単純化されてキャプチャーされていきます。さらに「言っていることを2つに分割すると、こういうことですよね?」などと整理していきます。例えば「一番気になるライバルの行動はなんですか?」などとブレストするときでも、意見がその場で共有されて、どこかに消えずに残っていく。このやり方だと、議論が構造化されるし階層化されるしで、すごく効果的でむちゃくちゃパワフル。WEB会議でも効率的に会議を進められます。目の前で同じ画面を見られる点において、むしろ通常のミーティングよりも上位互換で効率がいいです。
同じフレーズの言い換えができるのは日本人の強み!
――濱口さんの語り口は、同じことを違うフレーズで言い換えてくれるので、とても理解が進みます。相手の理解度に応じた例え話や言葉の言い換え方は、事前に用意されていらっしゃるのでしょうか?
全く用意していないです、その日暮らしなので(笑)。
繰り返して言ったり、言葉を変えたり、はあるかもしれないです。せっかくなら、話を理解してもらいたい、といつも思っているので。
ちなみに、言い直し能力が高いのは日本人の特徴です。アメリカ人に聞き直すと、言ったことをもう一度ゆっくり喋るだけなんですよ(笑)。日本人の場合は、相手が分からないんだなと思うと、違う言い回し表現をしてくれたりします。
――ピラミッドルールと階段ルールの両方をうまく使った、濱口さんの一番の勝負プレゼンの話を聞きたいです。
毎回が勝負です。毎回やりながら学びがあるので、やればやるほど自分の技法は出てきます。有名デザイナーから「そのプレゼン資料、どうやって作っているの? レイアウトのデザインを真似させて欲しい」と言われることもあるのですが、毎回どう説明するかを真剣に考えて、それを楽しんでいる感じです。
参考になるのも、毎回の自分のプレゼンです。事業上クリティカルで重要なプレゼンもたくさんやってきています。事業を撤退するかどうか、事業戦略を完全に変えなければならない、投資額が大きい......など。社内で揉めていて、どれも厳しいプレゼンばかりです。ただ、満足いかなかったことはあるし、過去にはたくさん失敗もしました。情報が多すぎたり、視線誘導がうまくいかなかったり。自分では結論を先にいった三角形で進められていると思っていても台形になっていたり。日本でのプレゼンなのに資料で英語を使っていたり。これまで話したことは、すべて自分の失敗から学んでいます。
今までにすごい数の試行錯誤を繰り返してきて、「こうするといいな」と思ったことを今日はお話してきました。真剣な仕事上のプレゼンをリアルに見せられないのでお伝えするのが難しいのですが......本当は一緒に作ってみるのが一番いいです。考える過程にはものすごく意味があるので、「なぜ、この言葉を置いたのか?」といった基本的なところもゼロから一緒に考えていきます。僕と一緒に仕事すれば、プレゼンは間違いなくうまくなります。
ちなみに僕は、プレゼンを作ったあとに、それを実演するような予行練習をしません。部屋や同じ会場で話してみるとか、奥さんの前で喋ってみるとかをよく聞きますが、僕は一切練習しません。僕と一緒にプレゼンを作ったクライアントさんにも「練習しなくていい」と言っています。このページで何をどう説明するのか、なぜそれを説明するのかが頭にクリアに入っているので、予行練習で普通に喋ってもすごくスムーズに話せます。チームメンバーが5人いたとしても、誰が話しても同じです。もちろん滑舌の良し悪しや個性はありますが、プレゼンの骨格がしっかりしているので誰が喋ってもわかりやすいし、プレゼンは通ります。
一緒にやらないと分からないのがもどかしいですが、その中でもエッセンスを抽出して本日はお話したつもりです。チャンスがあれば、一緒にプレゼンを作れるといいですね。誰かがプレゼンをやらなきゃいけないときに、一緒にプレゼン作るみたいなコンサルティングサービスもいいかななんて思ってます。歳をとって杖をつくようになったら、毎日誰かと一緒にプレゼンテーションを作るおじいさんをやりますかね(笑)。
世界で活躍する稀代のビジネスデザイナー 初の著作!
現代のビジネスパーソンの基礎となる「イノベーションの作法」とは?
シリアル・イノベータ―の先駆けとして知られる濱口秀司さん初の著作『SHIFT:イノベーションの作法』がついに登場!
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