コロナ肺炎治療の最終兵器「ECMO」の増産がまったく的外れなワケ
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3〜4月の新型コロナウイルス流行期、コロナ肺炎治療の要として「ECMO」という医療機器が重症者の救命に活躍した。この分野は、これまで欧米に後れを取っていたが、今回のコロナ禍で格段に進歩を遂げたという。特集『コロナで激変!医師・最新序列』(全12回)の最終回では、ECMO治療の実力、そして第2波、第3波に備える上での課題に迫る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
「主人にECMOを」...訴える家族相次ぐ
肺が機能しなくなった患者の"命綱"
今年4月に新型コロナウイルス(以下、コロナ)肺炎で亡くなったお笑いタレントの志村けん氏が装着していたと報道されたことで、一般にも知られるようになった医療機器、ECMO(体外式膜型人工肺)。
その影響で「『主人にECMOを』といった患者家族からの訴えが相次ぐようになった」と、複数の病院に勤務するフリーランス医師は明かすが、このように人工呼吸器では救命できないほど重症化した患者の "最後の砦"とも期待される、ECMOとは一体どのようなものなのだろうか。
ECMOには、大きく分けて心不全に使用するVA-ECMOと呼吸不全に使用するVV-ECMOの、二つの方式があるが、コロナ肺炎で主に使用されたのは後者だ。健康な肺は、静脈血(体内から二酸化炭素を取り込んだ血液)を、呼吸によって取り込んだ酸素によって浄化し、動脈血(酸素を多く含む血液)として再び全身に送り出す「換気」という、生命維持に欠かせない働きを担っている。
人工呼吸器は、濃度の高い酸素を患者の体内に送り、呼吸を助けるが、換気が行えないほどダメージを負った肺には効果が期待できない。
対してECMOは、血管から取り出した静脈血に人工肺で酸素を送り、再び体内に戻す。つまり、ECMOを装着していれば、肺が機能していない患者も生きていられるのである。
「人工呼吸器が肺を"補助"するものなら、ECMOは肺の働きを"代替"するもの。傷んだ肺を完全に休め、機能の回復を目指す」と、コロナ肺炎のECMO治療に当たった東京都健康長寿医療センター、呼吸器外科の安樂真樹部長は解説する。
同センターでECMO治療を受けた患者は、入院した時点では肺のCT(コンピューター断層撮影)画像が真っ白(呼吸不全を起こし、換気がほとんど行われていないことを示す)であったが、肺を休めることによって換気機能が回復。3週間程度で人工呼吸器も外れ、元の病院に戻っていったという。
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