残業時間の上限規制4月施行、優しかった労基署が中小企業経営者に牙をむく!
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労働問題の"番人"である労働基準監督署が近年、妙に優しくなった。働き方改革関連法について、懇切丁寧に教えてくれる。しかし、それは優しい仮面をかぶっていただけ。4月から中小企業でも「残業時間の上限規制」が始まり、労基署は怖い素顔を見せてくる。特集『本当は怖い働き方改革』(全9回)の#7は、労基署の実態とともに、取り締まりの最新ターゲットを読み解く。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
「税務署より怖い」と言わしめた
労基署が最近やたらと優しい
この2年、労働基準監督署がやたらと優しい。正義のヒーローさながらに労働基準監督官がブラック企業に立ち入り調査を行い、法令違反があれば処分を下す勧善懲悪劇をとんと目にしなくなった。
違法な長時間労働の撲滅を使命とした"特捜部隊"として、厚生労働省は2015年に過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」を東京と大阪に設置。司法警察員として法令違反のあった企業を送検する権限を持つ監督官、その中でもエース級を配置した。
この年、大手広告代理店である電通で社員が過労自殺した。かとくは同社をガサ入れし、書類送検。結果、電通は有罪判決を受けた。
かとくが電通本社に家宅捜索に入る様子は派手に報道された。「労働法の警察」として大企業にちゅうちょなく踏み込むこわもての監督官に、世間は正義のヒーロー像を重ねた。かとくはテレビドラマや小説などフィクションの世界でも活躍するようになった。
一方、大企業は震え上がった。かとくは、大手企業による"組織的な犯行"に目を光らせ、次々と送検した。大企業のホワイトカラーにおける過重労働にメスを入れたのだ。
目を付けられれば、ブラック企業に転落する――。「かとくはマルサ(国税局査察部)より怖い。労基署は税務署より怖い」とまで企業に言わしめた。
ところがここ最近、かとくの手柄を聞かなくなった。
東京労働局にある「東京かとく」には、「過重労働撲滅特別対策班」と書かれた大きな看板が掲げられているが、今見に行くと、看板の下部分の微妙な位置にコピー機が置かれており、なんだかもの悲しい。
17年に旅行大手のエイチ・アイ・エスを送検して以降、東京かとくは大物を仕留めていない。
かとくが鳴りを潜める中、全国の労基署には「労働時間相談・支援班」が設置された。こちらは企業にとても優しい。
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