人事のプロや経営者が絶賛!評価・給料を決める最先端の「科学的手法」

ダイヤモンド編集部
有料会員限定
記事をクリップ
URLをコピー
記事を印刷
Xでシェア
Facebookでシェア
はてなブックマークでシェア
LINEでシェア
noteでシェア
人事大激変!第4回Photo:Feodora Chiosea/gettyimages

人事の領域に科学的手法を取り入れる最先端人事部が激増している。評価・給料の決め手が公平で客観的なものになればなるほど、働き手にも「生産性アップ」という覚悟を強いることになる。特集「人事大激変!あなたの評価・給料が危ない」の第4回では、三つのケースを通じて「最先端人事」をご紹介しよう。

「週刊ダイヤモンド」2019年5月11日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

【Case 1】リクルート、ホンダ、セプテーニ
人事のプロや経営者が絶賛のチーム理論

人事のプロや経営者の間で「掛け値なしにすごい!」と評判のチームビルディング理論がある。

FFS(Five Factors & Stress)理論は、個性を決定する「五つの因子」と「ストレスの強弱」をスコア化することで人と人との相性を測定し、生産性を上げる最適チームを編成する際の土台とする考え方だ。リクルートやホンダの研究所など大手企業を中心に800社以上の利用実績がある。

その中でも、この理論を深く理解し、採用から育成、組織の活性化に至るまで、あらゆる人事領域に科学的手法を持ち込んでいるのが、ネット広告のセプテーニ・ホールディングスだ。

きっかけは、米メジャーリーグの弱小球団が統計データ分析で常勝球団へ生まれ変わる過程を描いたノンフィクション『マネー・ボール』(2003年)だ。当時の社長が、科学的手法を人事にも生かせないかと考えた。

セプテーニは大きな人事の課題に直面していた。ネット広告ビジネスの黎明期で、「ビジネスの成長に人材の育成が追い付いていなかった。頑張って採用した人材がすぐ辞める悪循環に陥っていた」(上野勇・セプテーニ取締役)。そこで、「新卒採用の基準をいかに学歴の高い人を採るかではなく、いかに会社に価値を提供してくれるかという客観的基準に変更した。その瞬間、競合との人材獲得競争から解放された」(同)という。

新卒採用では、学生にエントリーシートを提出させることはない。志望動機は入社後の戦力とは相関がないからだ。学生はエントリーするときに、FFSテストを受けるだけ。このテストで、応募者のパーソナリティーが分かる。

セプテーニ・ホールディングスの採用過程の比較拡大画像表示

セプテーニには、20年近くも蓄積してきた社員の「評判評価」なるデータが1000人分以上ある。年に2回、全ての社員が1人当たり平均20人もの社員から360度評価がなされていて、それが評判評価データとなっている。

これらの評判評価データと新卒応募者のデータを機械や人工知能(AI)で分析すると、仮に応募者が入社した場合に、類似した社員の過去データから、新卒応募者の「業績予測(どれだけパフォーマンスを上げるか)」や「定着率」などが明らかになる。要するに、会社との相性が分かるのだ。

データのマッチングで判断できるので、15年からは3回あった面接を1回に減らした。採用よりも内定後のキャリア形成にエネルギーを注いでいるのだ。

驚くべき話がある。人事部が落とし、AIが合格判定を出した学生5人のうち4人が、早期に業績に貢献したという結果が得られたのだ。面接官による面接はどうしてもバイアスがかかる。ついに、今年4月入社の新卒社員の4割は面接なしのオンライン採用にしてしまった。地方学生を掘り起こす結果にもつながっている。「将来的に人事部はなくそうと思っている」(上野取締役)というから潔い。

一連の人事施策に掛かる設備投資はわずか500万円。だが、忘れてはならないのは、セプテーニが人事をAI化したわけではない点だ。最適な組織をつくるために大事なのは、経営が目指す方向性にどのような人材が必要なのかという、経営と一体となった人事戦略があること。そして、早期に人事部が人事権を放棄することだ。

記事一覧

予告編

人事部が採用難と働き方改革で機能不全、あなたの評価・給料が危ない

2019年12月9日

第1回

「人事部アンケート」で見えた本音、変革を阻む4つのハードル

2019年12月9日

第2回

人事部の受難、社員の生殺与奪を握る「権力集団」が凋落した3つの理由

2019年12月9日

第3回

人事部の苦悩、3メガ銀・セブン・日産ら5つの変革実例で浮き彫りに

2019年12月10日

第4回

人事のプロや経営者が絶賛!評価・給料を決める最先端の「科学的手法」

2019年12月10日

第5回

武田薬品の巧妙過ぎるリストラ手法、製薬業界で相次ぐ「実質指名解雇」

2019年12月11日

第6回

著名10社の待遇・社風が「社員の口コミ」で丸裸、グーグル・キーエンス...

2019年12月11日

第7回

リクルートに挑むビズリーチの勝算、人材ビジネス儲けのカラクリ

2019年12月12日

第8回

人事のプロが頼る「最強ツール6選」、マイナビ・リクナビは時代遅れ?

2019年12月13日

第9回

リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒、「データ購入企業」にも鉄拳

2019年12月13日

第10回

ブラック企業の「急所」を敏腕弁護士が指摘、働き手は労働法をこう使え!

2019年12月14日

第11回

「社員に優しくない企業」ランキング、給料増よりも株主優先の50社

2019年12月14日

第12回

人事部の仕事をAI・脳科学が奪う!それでも残る「人の役割」とは?

2019年12月15日

この記事に関連する企業

あなたにおすすめ

特集

経営戦略デザインラボ
イベントアーカイブ
DQ

アクセスランキング

  • 経営・戦略
  • 会員

最新記事

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /