「兵法書。まねしたくなって、困るのよ。」糸井重里
「みんなは濱口秀司『SHIFT:イノベーションの作法』をどう読んだか?」感想文リレー
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濱口さんの職業を糸井重里さんなりに言えば、何なのか? 『SHIFT:イノベーションの作法』について、著者の濱口秀司さんの素顔もよく知る糸井さんならではの感想文をいただきました!
おそらく、濱口秀司さんは「濱口理論」がつくりたくて論文を書いてきたわけではないだろう。文章や図にして書いてまとめたのは、初出の掲載誌に依頼されたからであって、そういう求めがなければ、彼はなにかを書くということもしなかったのではないだろうか。彼は、学者でも研究者でもなく、ましてや著述業の人でもないのである。
ではなにか、「解決者」である。物語風に言えば「引っ越し屋」「殺し屋」のように「解決屋」という職業の人なのだと思う。
それは、濱口さんが、「会社員」として人生のキャリアをスタートさせたことに原点があるだろう。会社員には、会社の都合でありとあらゆる問題が投げかけられる。そして、どういう領域のことであろうが、そのひとつひとつを「解決」することが仕事なのである。「領域」の専門性でなく、「解決という役割」の専門性が、彼の身について鍛え抜かれてしまった。ぼくはそう考えている。
「解決したいことがある」と、彼が呼ばれて解決する。まるで、剣豪宮本武蔵のようだけれど、大げさに言えば生き死にを賭けてバッタバッタと問題を倒してきたわけだ。読んでて「おもしろい」のは、兵法書のような人間くさい臨場感があるからだ。ただ、読み手としてちょっと思い出すのは「生兵法は怪我の元」という古いことばである。
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