日本人の生産性の低さは「給料」を上げれば全て解決する
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2019年4月に関連法が施行され、本格スタートした働き方改革。しかし、その実施が日本企業の競争力をますます低下させる恐れがある――。こう指摘するのは、マイクロソフト、グーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏だ。競争力を高めつつ、現代の日本に合った生産性の高い働き方にするための方策は?及川氏が独自の視点で解説する。
優秀な人材が不夜城で働く中国と
アウトプットが減る一方の日本
中国・深センに本社を構えるテンセントは、現在アジアで最も時価総額の高い企業の1つとして知られる巨大IT企業です。深セン訪問時のある日、夜遅くにその本社ビルを見たときに、ほとんどのフロアに明かりが付いていて驚きました。高層ビルに煌々と明かりが輝く様子は、まるで不夜城のようです。
中国には「996工作制」という言葉があります。「午前9時から午後9時まで、週6日間働く」という意味で、当初は長時間労働を告発するための言葉として引用されたものの、現在は深センなどの新興IT企業社員の働きぶりを表す言葉として使われるようになっています。
今の日本で考えれば「ブラック企業」に当たる働き方ですが、中国の若いエンジニアに話を聞くと「忙しいけれど本当に楽しい」という答えが返ってきます。もちろん忙しすぎて体調を崩すほど働くのは良くないことですが、多くの人が「働くのは楽しいし、懸命に働けば高い報酬がもらえる」と答えていて、中には「何年か稼いでお金が貯まったら、自分で何か事業を立ち上げるんだ」と話す人もいます。
国の雰囲気としては、日本が高度成長期だった1970年代と似ているのかもしれません。社会が進化や成長の過程にあって、「努力すれば、社会も自分もどんどん豊かになる」とやりがいや幸せを感じている状況です。かたや日本では「効率が悪いのに作業時間を減らしている」ため、アウトプットが減る一方になっています。これでは、中国のように大変優秀な人材が長時間働いていてアウトプットが最大化していく国と、争えるはずもありません。
「ワークライフバランス」
という言葉への違和感
働き方改革が叫ばれる以前から、私が所属していたマイクロソフトやグーグルなど、外資系企業では「ワークライフバランス」という概念がよく取り上げられていたのですが、当時から何となく、その言葉に違和感を覚えていました。仕事と生活をバランスよく、という考え方自体は私もよく理解できます。ただ、文字通りにワークライフバランスという言葉を解釈すると、本質を見誤るのではないかという思いがあります。
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