仮想通貨の申告漏れを
すべて調査することはできない

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国税最強部門、「資料調査課」(税務署では調査できない困難案件、例えば、悪質、海外、宗教事案などを扱う部署)出身であり、タックスヘイブンの実情を描いた『税金亡命』の著者でもある佐藤氏が、仮想通貨と申告漏れの実情を語る。

仮想通貨の申告漏れをすべて調査することはできない

仮想通貨の申告漏れ、
誰が調べるのか?

全国12の国税局のうち、都市部の国税局には「電子商取引担当・統括国税実査官」(以下、「電商トージツ」)というセクションがある。

仮想通貨の申告漏れをすべて調査することはできない佐藤弘幸(さとう・ひろゆき)1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、同部統括国税実査官(情報担当)、電子商取引専門調査チーム、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。他の著作に「国税局資料調査課」(扶桑社)がある。国税局課税部資料調査課(機能別に派生して設置した統括国税実査官を含む)は、税務署では調査できない困難事案を取り扱う部署である。資料情報及び決算申告の各係数から調査事案を選定、実地調査する。税務署の一般調査と異なり、「クロ」をターゲットにしているので、証拠隠滅や関係者との虚偽通謀を回避する必要があり、原則として無予告で調査を行う。

前身は平成12年2月に設置された「電子商取引専門調査チーム」というプロジェクトチームで、インターネット取引の実態解明、業種別の調査手法の開発などを手掛けている。ちなみに、筆者はプロジェクトチーム発足から正式組織創立までのメンバーだった。

仮想通貨の研究や調査に必要な情報整理は、電商トージツが行っていると推察する。電商トージツはトップ以下19人という部署なので、実地調査を担当する部隊への情報提供や実地調査支援というのが任務になるだろう。実地調査を担当するのは、大口・悪質を主担する課税部資料調査課、富裕層を担当する富裕層担当・統括国税実査官であり、比較的小口の調査は国税局と税務署の合同調査といったところか。

ちなみに、プロジェクトチームが発足した平成12年2月、もう一つの出来事が起きている。いわゆる「不正アクセス禁止法」の施行があった。これにより、電商トージツはハッキングなどで情報収集ができないことになった。

つまり、「一般人と同じツールで調査せよ」ということだ。このような「武器を持たない」組織運営を強いられることになった。

調査の基礎となる情報は、既述のとおり国内の交換業者が主たるもので、調査実施にも困難を極めることになるだろう。

それと1つ付け加えなければいけない。仮想通貨の申告漏れをすべて調査することは到底できない。ただ、FXのときもそうだったように、一罰百戒の意味を込めて処罰する必要があり、人身御供とされる脱税者が求められるかもしれない。

となると、通常の任意調査ではなく、大口申告漏れが想定されるケースでは、当局は国税局査察部(マルサ)による摘発を検討するだろう。ただ、「タマリ(脱税を裏付ける資産)」を発見できないと、検察が告発を受けるかどうかはわからない。

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