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もっと奈良を楽しむ

涼を呼び込む"ひんやりふわふわ"

1300年の時を経て氷を統べる神

 古来、日本ではあらゆる森羅万象に神が宿ると信じられていた。太陽の恵みに、秀麗な山に、大海原に、神を見たのだ。
 自然の驚異が形となって現れる氷という現象に、人々はさらなる神業を感じたことだろう。

氷室神社(大宮守人宮司)

 『日本書紀』には仁徳天皇の時代のこととして「冬の氷を冷蔵庫である氷室に夏まで蓄え、飲食に供する」ことがツゲの地(現奈良市)で行われていたと記されている。氷室とその利用法の発見以来、朝廷でも冬に氷を蔵し、春分になると氷を人々に分け与えることになったと続き、ゆえに奈良はわが国の"氷食文化"はじまりの地となっている。
 この背景には、当時の日本に大きな影響を与えた中国の制度や陰陽五行思想に立脚した文化的影響が考えられるという。中国の歴代皇帝が執り行う祭祀に含まれる「司寒(冬の神)の祭祀」が奈良時代には行われていたことも想像される。
 東大寺の周辺を描いた天平勝宝8年(756)の絵図「東大寺山堺四至図(とうだいじさんかいししず)」には、春日野の地に氷を採取する「氷池」、その貯蔵庫である氷室にかかわる地名「氷室谷」が記されており、氷の神を祀って順調な気候と豊作を祈願する祭祀の営まれていたことが推測されている。

氷室神社

 和銅3年(710)、平城遷都とともに創建されたと伝わる氷室神社の起源はそうした祭祀に求められるのではないかと、大宮宮司が話してくれた。現在地に遷座したのは貞観2年(860)。八百万(やおよろず)の神々といわれ、神社には多くの田の神、山の神、海の神などが祀られるが、氷にまつわる神は非常に珍しい。
 そこで毎年5月1日、全国の製氷業関係者らが氷室神社に集い、献氷祭が行われている。祈願するのは順調な気候。夏は暑くなってこそ、氷の出番があるというわけだ。
 時代が移っても、人々が氷室の神に捧げる祈りに変わりはないらしい。

真夏を楽しむ「奈良かき氷ガイド」

 奈良には氷と所縁の深い神さまがおられる――。2013年から開催されているかき氷のフェスティバル「ひむろしらゆき祭」は、そんな発想からはじまったという。
 昨今のブームもあるが、特徴のあるかき氷店があちこちに増えている。そこで、自慢のかき氷を発信しようとカフェやフルーツ店などが氷の神様の坐す地で新たな"氷の祭"を開催すべく奔走、実現した。
 第3回目の今年は5月上旬に行われた「ひむろしらゆき祭」。回を重ねるごとに参加店舗も増え、今年は全国から約20店舗が集い、ひんやりふわふわの自慢のオリジナルかき氷の味を競い合った。
 今年の祭はすでに終了しているが、参加メンバーにさらなる店舗を加えた県内のかき氷店の完全制覇マップ「奈良かき氷ガイド」を制作。これがあれば、奈良の名だたるかき氷が思う存分楽しめるはず。

幡・INOUE 東大寺店

 氷室神社に最も近い奈良かき氷ガイド参加店のひとつ「幡・INOUE 東大寺店」。奈良県産の食材をメインに使用し、メニューのドレッシングなども手作りするというお店のコンセプト通りに、4種類あるかき氷のシロップ――イチゴ、みぞれ、練乳、抹茶とあずき――もすべて手作りだ。
 無農薬の茶葉を使った香り高い抹茶シロップと、コトコト丁寧に炊き上げたあずきのもっちり食感&上品な甘さのコンビは、手作りならではの絶妙のコンビネーション。旬のイチゴを使い、まるでジャムのようにトロリと仕上げたイチゴシロップの味わいも贅沢な限り。ついつい両方食べたくなる。

 併設されているショップでは手織りの麻のグッズ等を販売。自然素材と鹿のモチーフの素朴なコラボがとってもキュートで、今やおみやげとして大人気だ。






文:宮家美樹
本文中の情報は平成28年6月30日時点のものです

氷室神社

奈良市春日野町1-4
0742-23-7297

詳細はこちら

奈良かき氷ガイド 2024

奈良のかき氷食べ歩きガイドマップ
(ひむろしらゆき祭り実行委員会)

HP: http://nara-kakigori.com/

幡・INOUE 東大寺店

奈良市春日野町16 夢風広場内
0742-27-1010

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