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「エコ」の一歩先の 「サステイナブル」社会へ LCAのすすめ 2016年 1月18日 東京工科大学 工学部 機械工学科 大久保 友雅
「サステイナブル」って聞いた事ある? ※(注記)http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5859 より 今後知っていないといけないキーワードらしい!
今の工学から未来を創る工学へ サステイナブル工学を始めよう
今日の内容 •「エコ」と「サステイナブル」 •サステイナブル工学までの道のりと 持続可能性 •LCA(ライフサイクルアセスメント) •LCAの具体例:ビンとペットボトル はどちらがサステイナブルか? •注意点とまとめ
「エコ」と「サステイナブル?」 デジタル大辞泉で調べてみると... 強調:考えろ! このまま続けて大丈夫か? 共通意識: 地球のために! エ コ サ ス テ イ ナ ブ ル エコ(エコロジー):自然環境保護運動。 →人間も生態系の一員であるとの視点 から、人間生活と自然との調和・共存を めざす考え方。 サステイナブル:持続可能であるさま。 →地球環境を保全しつつ持続が可能 な産業や開発などについていう。 私も思ってはいるけど...
環境との調和、生活の質の向上、経済の活性化(繁栄)の 3つを同時に達成=「サステイナブル社会」を実現する工学 考えるべき3つの側面 地球システムに対して: エネルギー問題、資源問題、 自然保護問題 人間システムに対して: 安心・安全・利便性を提供する製品 ・サービスの開発と普及 社会システムに対して: 経済を活性化し繁栄しつづけるための 社会問題 3つの側面を満足する工学技術の考え方と手法 Happy! + サステイナブル サステイナブル工学とは エコ 「エコ」と聞いて あまり思い浮かべ ないのでは?
サステイナブル のエコ以外の(少し極端な)例 人間システムに対して: 安心・安全・利便性を提供する製品・サービスの開発と普及 社会システムに対して: 経済を活性化し繁栄しつづけるための社会問題 Happy! 月明かりで 勉強すれば エコなはず! アレも無駄! コレも無駄! 何も使うな! 何も売れなくなった・・・ スムーズに 動く車椅子 で介護も楽に! 軽い材料・構造 安全な仕組み etc... 新しい産業の創出 エネルギー産業 製造業 サービス業 etc...
Sustainable Society 8 Planet 惑星 Prosperity 繁栄 People 人 サステイナブル 社会 地球システム 気候変動、生態系 資源・エネルギー 環境との調和 人間システム 安全・安心、健康 ライフスタイル 生活の質の向上 Happy! 社会システム 政治、経済 産業、技術 経済の活性化 私たちがめざす「サステイナブル社会」 3つのPのバランス→輝かしい未来への発展 3つのPを繋ぐのがサステイナブル工学
ここまでのまとめ • 「サステイナブル」とは「持続可能性」のこと • サステイナブル工学では以下の三つを考える • 地球システム(Planet)に対して:エネルギー問題、資源 問題、自然保護問題等 • 人間(People)システムに対して:安心・安全・利便性を 提供する製品・サービスの開発と普及等 • 社会システムに対して:経済を活性化し繁栄 (Prosperity)し続けるための社会問題 • 3つのPのバランスを考えてこそ,輝かしい未来へ の発展がある
今日の内容 •「エコ」と「サステイナブル」 •サステイナブル工学までの道のりと 持続可能性 •LCA(ライフサイクルアセスメント) •LCAの具体例:ビンとペットボトル はどちらがサステイナブルか? •注意点とまとめ
サステイナブル工学までの道のり 産業革命以降 の技術発展 経済活動 の拡大 問題の発生 ・顕在化 日本の 発展 昭和中期: 高度経済成長 四大公害病 対策 排出物規制 等公害対策 例) 化石燃料の 大規模利用 世界の 発展 CO2排出 化石燃料の 枯渇の問題 燃費の向上 & 新しい エネルギー の開発 排出量の 削減 このままじゃダメだ! 持続可能性を考えよう!
持続可能性とは? このままで大丈夫か 人間が環境から資源を取り出し, また環境へ物質を排出する速度 が,自然界が生み出し,そして処 理するできる速度より大きいこと 毎月稼ぐお金 毎月使うお金 借金地獄 < 破綻の原因 ゴミ屋敷捨てに行くゴミの量 < 散らけるゴミの量
持続可能性を保つための三つの原則 1. 「再生可能な資源」の持続可能な利用速度は,その供 給源の再生速度を超えてはならない. → 枯渇しないように使いましょう 2. 「再生不可能な資源」の持続可能な利用速度は,再生 可能な資源を持続可能なペースで利用することで代用で きる速度を超えてはならない. →再生可能な資源で賄えるように使いましょう 3. 「汚染物質」の持続可能な排出速度は,環境がそうした 汚染物質を循環し,吸収し,無害化できる速度を超えては ならない. →自浄作用以上に汚さないようにしましょう Reduce(減らす), Reuse(再使用), Recycle(再資源化) の 三つのRを考える
ここまでのまとめ • サステイナブル工学までの道のりは 「技術発展→経済活動の拡大→問題の顕在化→ 対策」の繰り返しから持続可能性を考えるように なった • 持続可能性を保つための三つの原則 • 枯渇しないように使う • 再生可能な資源で賄えるように使う • 自浄作用以上に汚さない
今日の内容 •「エコ」と「サステイナブル」 •サステイナブル工学までの道のりと 持続可能性 •LCA(ライフサイクルアセスメント) •LCAの具体例:ビンとペットボトル はどちらがサステイナブルか? •注意点とまとめ
製品等が発生させる環境への負荷を、そのライフサイクル 全体にわたって定量的、客観的に評価する手法 サステイナブル工学の必須アイテム: ライフサイクルアセスメント (Life Cycle Assessment, LCA) 環境影響評価の標準的な ツールでサステイナブル工学 への拡張と応用に大きな期待 「つくる」「使う」「捨てる」 「運ぶ」のにどれだけ 環境負荷がかかるか? 資源採掘 焼却 埋立 ライフ サイクル 製品の生産 製品の使用材料の製造 使用終了
1969年 「飲料容器に関する環境影響評価」(コカコーラ米国) ⇒ リターナブルビンと使い捨てPETボトルの比較 1984年 「包装材料のエコバランス報告書」(スイス連邦内務省環境局) 1989年 「SETAC(欧州)」 設立⇒以後、欧州のLCA研究を牽引 1990年 「エコベース包装材料」(欧州プラスチック製造協会環境部) 1991 〜 1992年 「LCA実施手法とマニュアル」(SETAC、ライデン大学) 「プラスチック製品のLCA」(プラスチック処理促進協会) 1993年 「ISO/TC207/SC5」 発足⇒国際標準化活動開始 1994年 「第1回エコバランス国際会議」⇒日本のLCAスタート 1995年 「LCA日本フォーラム」 発足 1996年 「International Journal of LCA」 創刊 1997年 「ISO14040(LCAの原則及び枠組み)」 発行 1998〜 「LCA国家プロジェクト」I期(〜2002年) ⇒手法、データベースの開発 2001年 「産業技術総合研究所LCAセンター」 発足 2003〜 「LCA国家プロジェクト」II期 (〜2005年) 2004年 「日本LCA学会」 発足 LCAの歴史 ※(注記)「LCA概論」(2007)より
LCAの計算:製品ライフサイクルへの入力と出力 資源採掘 焼却 埋立 製品の生産 製品の使用材料の製造 使用終了 入力:資源の投入 エネルギー 原料 輸送 ライフ サイクル 出力:環境への排出 CO2, NOx,SOx 液状廃棄物 固体廃棄物
<インプット項目> 使用材料の明細 製造プロセス 輸送手段と距離 使用時のシナリオ 使用後の処理方法 <エコデータベース> 材料の含有エネルギー 製造時の消費エネルギー CO2 排出係数 輸送時の消費エネルギー リサイクル / 焼却 LCAツール <対象製品> 材料 製造 輸送 使用 廃棄 (回収) 材料 製造 輸送 使用 廃棄 (回収) 消費 エネルギー CO2 排出量 LCAツールを用いて製品設計を支援(byCES EduPack 2015)
使用時の省エネがポイント 材料を変更してもあまり大きな影響はない? 容器の断熱性能を改善して使用時の熱効率を向上 材料 製造 輸送 使用 廃棄 (回収) (MJ) 消費エネルギー 設計の初期段階 で分かることほど 効果が大きい! 分析結果 から何が わかる? 例)電気ポットのLCA (ライフサイクルエネルギー)
ここまでのまとめ • ライフサイクルアセスメント(LCA)とは,製品等が発 生させる環境への負荷を、そのライフサイクル全体 にわたって定量的、客観的に評価する手法 • 実は1969年頃から既に考えられていた • LCAではエネルギー・原料・輸送などの資源を入力 とし,廃棄物や廃棄ガスなど環境への排出を出力 する • 電気ポットでのLCAの例を示した
今日の内容 •「エコ」と「サステイナブル」 •サステイナブル工学までの道のりと 持続可能性 •LCA(ライフサイクルアセスメント) •LCAの具体例:ビンとペットボトル はどちらがサステイナブルか? •注意点とまとめ
例)ガラス瓶とペットボトルとを比べてみよう Reuse(再使用) 洗って何度も使う Recycle(再資源化) 再びペットボトル等になる には色々な工程が必要 洗うだけだし エコっぽい!? 様々な 工程が 必要で 瓶よりはエコっぽく無い!? LCAで具体的に比較してみよう!
<容器の種類> 材料 製造 輸送 使用 廃棄 回収の可能性 ライフサイクル各段階の消費エネルギー(MJ) 瓶は 重い 瓶は割れたら 再使用不可 リサイクル材料は エネルギーが 少なくても作れる 掘削 抽出 輸送 etc... 不要 瓶は作るのに エネルギーが必要 瓶はエネルギー もあまり回収 されない 分析例:1リットル飲料水100本の消費エネルギー エコっぽい瓶はサステイナブルでは無い!?
<容器の種類> 材料 製造 輸送 使用 廃棄 回収の可能性 ライフサイクル各段階のCO2排出量(kg-CO2) エネルギーとほぼ同じ分布 分析例:1リットル飲料水100本のCO2排出量 エコっぽい瓶はサステイナブルでは無い!? 使用時に多く電力を消費する電気ポットだと, どのような発電地域かによって変わり得る
<容器の種類> 材料 製造 輸送 使用 廃棄 回収の可能性 ライフサイクル各段階のコスト(円) 分析例:1リットル飲料水100本のコスト エコっぽい瓶は実はコストも高い!? ガラスは材料の項目にガラス瓶の成形まで 含まれているためだからではないか (データベース次第)
ここまでのまとめ • 再利用をするガラス瓶とペットボトルのリサイクルを LCAで比較した • 一見エコのように見えるガラス瓶の再利用よりも ペットボトルをリサイクルした方がサステイナブルで あった. • 更に,ガラス瓶の方がコストも高いことがわかった
今日の内容 •「エコ」と「サステイナブル」 •サステイナブル工学までの道のりと 持続可能性 •LCA(ライフサイクルアセスメント) •LCAの具体例:ビンとペットボトル はどちらがサステイナブルか? •注意点とまとめ
1 日に 10 分 1 年に 300 日 3 年 使用 空輸、距離 12,000 km 14-t トラック、距離 250 km ×ばつ2 輸送 製品の材料、製造プロセス、使用後の処理 調査対象の電気ポット 消費電力:2kW 東南アジアで製造 イギリスへ空輸 3年間使用して廃棄 想定 シナリオ 注意点1:具体的なデータを入力し,条件を明示 条件は具体的に決める必要がある
• 比較対象の製品システムが同等でなければならない 調査範囲がシステムを比較できるように 設定されている 同一の機能単位である 同様の方法論で比較されている さらに、性能、システム境界、 データ品質、配分手順、インプッ ト・アウトプットを評価する判断の 基準、影響評価、等にも注意が 必要 1台の冷蔵庫Bに対 し、4台の冷蔵庫A と製氷機とで比較 する必要がある 注意点2:製品のLCA結果を比較はフェアに 200L 6年使用 製氷機なし 冷蔵庫A 冷蔵庫B 400L 12年使用 製氷機あり +製氷機
色々面倒臭そうなことも言いましたが • 未来に向けて「サステイナブル」ということに ついて考えよう • そのためには表面的なことだけではなく, その背景についても考えなければならない • それを考えるためのツールとしてLCAを紹介 そんな「考え方」に興味を持って もらえそうなゲームを作りましょう.
ゲーム制作に参考になりそうなURL 国際連合大学:安井先生 http://www.yasuienv.net/index.html 産業環境管理協会(LCAのページ) http://www.jemai.or.jp/lca/index.html 産業環境管理協会(小学生向け) http://www.cjc.or.jp/j-school/ 産業環境管理協会(一般向け) http://www.cjc.or.jp/school/ 国立環境研究所(Kids向け) http://www.nies.go.jp/nieskids/ 全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA):子供向け http://www.jccca.org/kids/ 国立環境研究所(LCAのイベントリデータ) http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d031/3eid.html ※(注記)実際にゲームをリリースするようであればきちんとデータの出元の 許可を取ってください.
ご清聴ありがとうございました 太陽光を集めてレーザーを作っています