2024年11月6日更新
マイコプラズマ肺炎
細菌の一種である、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)による感染症です。
小学生から若年成人における肺炎の原因として、最も多いものです。感染症法に基づく感染症発生動向調査では、5類感染症の定点把握対象疾患となっており、基幹定点医療機関(小児科および内科医療を提供する300床以上の指定された病院)から毎週患者数が報告されています。1990年代頃までは、ほぼ4年周期で流行が繰り返されていたことから、オリンピック肺炎などと称されていました。2024年に入り、定点当たり報告数が増加しており、43週(10月21日〜27日)には神奈川県全県で1.33、全国で2.49となっています。最近では、2016年に大きな流行がみられました。
[画像:肺炎マイコプラズマ]
(肺炎マイコプラズマ:神奈川県衛生研究所)
図1 年別・週別報告数の状況(2024年全国、神奈川県は棒グラフ、2020年〜2023年神奈川県は折れ線グラフ)
図2 年齢別定点当たり累積報告数の状況(2024年第1週〜第43週まで)
目次
感染経路
マイコプラズマ肺炎にかかった人の咳やくしゃみなどに含まれる病原体によって、人から人へ感染します(飛まつ感染)。肺炎マイコプラズマに感染してから症状が出現するまでの期間(潜伏期間)は2〜3週間です。
症状
主な症状は発熱、咳、頭痛などです。しばしば、頑固な咳となり、解熱した後も1カ月程度続くことがあります。胸部エックス線(レントゲン)では、肺炎マイコプラズマに感染した人の5〜10%に肺炎の所見が現れます。まれに、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの重篤な合併症を伴う患者が報告されています。
診断について
診断方法は、血清による診断、気道から採取した病原体の培養による診断、および遺伝子検出法で病原体を検出する診断の3つがあります。
血清による診断はしばしば用いられる方法ですが、正確な診断には肺炎マイコプラズマに感染したばかりの急性期と、感染後2週間程度経過した回復期とで2回の採血(ペア血清)を行い、抗体価の上昇を確認することが必要です。
病原体の培養による診断は確実な診断方法ですが、結果が出るまでに時間がかかることから、感染から早い時期の診断は困難です。
遺伝子検出法による診断は、PCR法やLAMP法※(注記)という方法があり、特にLAMP法は検査の手順が簡便で、結果が早く出ることから、新たな検査法として注目されています。平成23年10月に、LAMP法によるマイコプラズマの診断が保険適応になりました。
※(注記)LAMP法
Loop-Mediated Isothermal Amplification法の略です。従来の遺伝子検出法のPCRと異なり、一定温度(65°C付近)で保温することによって遺伝子増幅の反応が進み、遺伝子検出の過程を1ステップで行うことができます。
治療について
肺炎マイコプラズマに効果のある抗菌薬の投与(内服または点滴による薬の投与)、また各症状に対する対症療法を行います。使用される主な抗菌薬はマクロライド系と呼ばれるものです。近年、このマクロライド系抗菌薬に耐性化(薬の効果が低下する)した肺炎マイコプラズマの報告が増加していて、必要に応じてほかの種類の抗菌薬を使用することがあります。耐性化の原因の1つとして、マクロライド系抗菌薬の汎用によって肺炎マイコプラズマ遺伝子の変異が起こっていることが考えられています。
予防のために
肺炎マイコプラズマに感染した人の咳やくしゃみを吸い込まないように、また手についた病原体を口に入れることによっても感染するため、マスクの着用・手洗いが大切です。