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障がいがあっても、子ども自身が人生の主人公として
自分らしく生きていくことを願っています。

伊佐市子ども発達支援センターたんぽぽ
堀ノ内真理子園長

「遊び」を通して 成長の土台づくりを支援
 「伊佐市子ども発達支援センターたんぽぽ」は、人との関わりが苦手、落ち着きがなく多動など、発達に不安の感じられる小学校入学前の乳幼児の療育を支援する施設です。
 0歳から6歳は、人間の一生の中で最も複雑で重要な発達的変化を遂げていく時期ですから、早い段階から成長の土台づくりを総合的に支援する必要があります。
 そのため、子ども一人ひとりの力に合わせ、専門指導員や仲間との遊びなどを通して、楽しい経験を積み重ねることで、食事・睡眠・排泄といった身の回りのことや運動、言葉、社会性など全体の発達を促すことをめざしています。
 子どもたちの療育は「遊び」が基本で、じっくり遊ぶ力を養い、先生やお友だちと一緒に遊ぶことによって人と関わる楽しさを知り、「できること」を増やしていくことで自信につながります。そうした自己肯定感を育んでいくことが、大人になったときの「生きる力」の土台になるのです。
 親子関係も大切で、乳幼児期はお母さんを大好きになる「愛着形成」が重要ですので、親子教室を通して愛着心を育て、自分を受け止めてもらえる安心感をもてるよう支援しています。
 最初は不安な気持ちで「たんぽぽ」に来られるお母さんが多いのですが、通い続けているうちに子どもに変化がみられたり、保育園の先生に「最近、落ち着いてきましたね」と言われたり、少しずつ成長を実感するようになります。そうすると、「子どもが変わることで自分も元気になれて、『たんぽぽ』に来てよかった」とお母さん自身も変わってきます。
 お母さん方にとっても、子どものことをよく知ることができて安心して向き合え、悩みを相談でき、子育ての見通しが得られる場、同じような経験をもつ母親同士が話し合える貴重な場です。


障がいもつ子どもたちの療育に 地域のあたたかい理解
 この「たんぽぽ」は平成9年に開設され、今年20周年を迎えました。
 「たんぽぽ」ができる前は、障がいをもつ子どもとお母さんは家に閉じこもり孤立しがちでしたが、療育の場ができたことで地域で安心して子育てができるようになり、20年前とは大きく変わりました。
 いまのお母さん方は明るくて、子どもに障がいがあることを隠しません。子どもが「たんぽぽ」に通っていることを、周りの人にも普通に話します。そうした「療育の場は特別な場ではない」というお母さん方からの発信が、地域全体の意識を変えていく大きな力になっていると思います。
 また、「たんぽぽ」の場所も変わり、現在は、「おぎゃー献金」を提唱された遠矢善栄先生の医院跡地に完成した「伊佐市子ども交流支援センター笑(すまいる)」の中にあります。
 平成23年にこちらに移転する前は、周りに家や建物のないところにありました。それが街中の住宅街に移ることになり、「うるさいと苦情がくるのではないか」などと心配しましたが、地域の方からは「子どもたちの声が聞こえると元気になる」と言われ、逆に励まされています。
 近所に、生前の遠矢先生をご存知だというお年寄りもいらっしゃって、「よかったね、遠矢先生も喜んでいるね」と声をかけられました。こうして地域の方々にも理解していただき、本当にありがたいことだと感謝しています。


どの地域で暮らしても 必要な療育受けられるように
 「おぎゃー献金」発祥の地の伊佐市は、子育て支援の体制が整い、療育の環境に恵まれていますが、鹿児島県内でも市町村によって障がい児の支援には差があります。そのため、転勤で他の地域に転居した場合、どうしたらいいか心配だと、お母さんから相談されることも少なくありません。
 発達支援には、保健・医療・教育・保育・福祉の各分野が連携し、「いま、この子にとって何が大切か」という視点で考えた、きめ細かな継続的な取り組みが求められます。ですから、障がいをもつ子どもたちが、どの地域でも同じように必要な療育が受けられる発達支援システムが整うよう、「おぎゃー献金」の支援に期待しているところです。
 どの地域で生まれても、暮らしても、各地域で障がいをもつ子どもたちを支援してくれる場があり、お母さんたちが安心して子育てできること。そして、障がいがあっても、地域の中で、子ども自身が人生の主人公として能動的に自分らしく生きていくことを願っています。


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