国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第28号
「森の息づかいを測る−森林生態系のCO2フラックス観測研究」
の刊行について
(お知らせ:環境省記者クラブ、筑波研 究学園都市記者会同時配付 )
要 旨
国立環境研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第28号「森の息づかいを測る−森林生態系のCO2フラックス観測研究」が刊行されました。
森林は二酸化炭素の大きな吸収源であると認められていますが、実際の状況はよく分かっていません。国立環境研究所では2000年に「森林生態系炭素収支観測研究」を開始して、苫小牧、天塩(北海道)、富士北麓の森林で二酸化炭素のフラックス観測を行ってきました。本号では、このプロジェクトを立ち上げた研究者のインタビューを中心に、調査方法と成果を分かりやすく解説しています。苫小牧のカラマツ林では1年間に光合成によって吸収される二酸化炭素量から呼吸による放出量を差し引いて、正味1.6〜2.5トン/ha(炭素換算)が生態系に固定されていることなど重要な成果が得られています。また、天塩では新たに植林をして、その成長過程を通した炭素収支の長期観測が続けられています。このようなフラックス観測研究のアジアおよび世界におけるネットワークについても紹介しています。
1 第28号の内容
第28号では、森林生態系の二酸化炭素フラックスを観測する研究を紹介します。
日本は国土の3分の2以上を森林が占めていますが、これがどのくらいのCO2を吸収・放出しているかなど、実際のフィールドワークから森林全体のCO2収支を直接調べた例はあまりありませんでした。地球温暖化に関する意識が高まる中、当研究所においても本格的なCO2フラックス観測研究を始めました。苫小牧では樹齢40余年のカラマツが広がる100haの植林地でCO2収支の観測を行い、森林生態系へのCO2固定量を求めました。天塩では森林を伐採して新たにカラマツを植林し、その成長過程を通した炭素収支を調べています。台風被害を受けた苫小牧から観測サイトを移した富士北麓のカラマツ林ではCO2収支を支配する要因などについて研究しています。プロジェクトには所外からも研究者が参加し、また、アジア地域の観測研究ネットワークにも貢献しています。自然を相手に様々な要因を考慮した長期のモニタリングが必要とされるCO2フラックス観測研究への取り組みを、プロジェクトを立ち上げた研究者が紹介しています。
[画像:環境儀第28号「森の息づかいを測る−森林生態系のCO2フラックス観測研究」]
内容は、
(1) 研究担当者へのインタビュー
・藤沼 康実(ふじぬま やすみ)
地球環境研究センター陸域モニタリング推進室長 「日本から−アジア地域の観測サイトにみる炭素収支」
(2) 日本から−アジア地域の観測サイトにみる炭素収支、急速に充実する森林のCO2フラックス研究ほか、『森林の CO2の吸収と放出』『炭素換算』『渦相関法とは』などについてのコラム等
2 閲覧・入手についての問い合わせ先
連絡先:国立環境研究所環境情報センター情報企画室出版普及係
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)
(参考)これまで「環境儀」で取り上げたテーマ
バックナンバーはホームページから閲覧できます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/