2018年6月29日
宇宙と地上から温室効果ガスを捉える
-太陽光による高精度観測への挑戦-
環境儀 No.69
温室効果ガスの観測は、採取した大気の直接測定により行われてきました。直接測定は高精度な反面、全球を網羅することは困難でした。その後、物質が吸収する光の波長ごとの特性を利用して、離れた場所から物質の特徴を把握する「分光リモートセンシング」技術の進展により、直接測定に迫る精度で全球規模の観測が実現しました。この方法では人工衛星に観測装置を搭載し、地球大気を通過する太陽光を観測します。
国立環境研究所は、宇宙航空研究開発機構、環境省と、人工衛星分光リモートセンシングによる温室効果ガス観測プロジェクトを進めています。2009年に打ち上げられた日本の人工衛星「いぶき」は、9年を経た現在も観測を続けており、温室効果ガス観測を主目的とする人工衛星の現役としては最長期間の記録を誇っています。温室効果ガス観測の高精度化により「いぶき」の研究利用が進み、後継機である「いぶき2号」の打ち上げも迫っています。
このプロジェクトでは、私たちは人工衛星が観測した太陽光スペクトルから温室効果ガス濃度やその排出量の分布を推定する高次処理と推定結果の検証を担当しています。温室効果ガス濃度の推定には、誤差要因に対応できる高度な解析手法の開発が必要でした。また、「いぶき」の開発と同時期に、太陽光スペクトルから温室効果ガス濃度を推定する地上観測網ができたことは、データの精度の検証に、重要な役割を果たしました。
本号では、分光リモートセンシングによる温室効果ガスの観測について紹介します。
[フレーム]
目次
- サムネイル1 宇宙から温室効果ガスを観測するInterview研究者に聞く
- column1 フーリエ変換分光計(FTS)コラム1
-
column2-S
カラム量とカラム平均濃度
コラム2 - いぶきの観測手法についてコラム3
- 全量炭素カラム観測ネットワーク(Total Carbon Column Observing Network:TCCON)コラム4
- Summary 分光リモートセンシングによる温室効果ガス観測の高精度化への挑戦Summary
- 研究をめぐって-s 分光リモートセンシングによる温室効果ガスの観測研究をめぐって
- サムネイル4 国立環境研究所における「温室効果ガスの分光リモートセンシングに関する研究」のあゆみ
- マーク 過去の環境儀から
- No.69表紙 PDFファイル環境儀 NO.69 [6.77MB]
目次
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2025年8月26日報道発表森林と大気のガス交換を「渦」で捉える
—半世紀前に考案された理論を実用化—
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表紙
2015年10月29日MRI画像解析と同位体解析による栄養塩や温室効果ガスの底泥からのフラックス予測(分野横断型提案研究)
平成24〜26年度国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-110-2015 -
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2011年12月28日地球温暖化研究プログラム(終了報告)
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2008年12月26日地球温暖化研究プログラム(中間報告)
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2003年9月30日大気汚染・温暖化関連物質監視のためのフーリエ変換赤外分光計測技術の開発に関する研究(革新的環境監視計測技術先導研究)
平成12〜14年度国立環境研究所特別研究報告 SR-52-2003 - 表紙 1999年8月31日「地球規模大気環境の衛星観測の将来のあり方について」報告 国立環境研究所研究報告 R-148-'99