I.調査要領
平成10年度分 不動産業総合調査(不動産業・海外投資編)
1.調査の目的
本調査は、昭和57年より総務庁承認統計として行っている。不動産業の実績、不動産取引業務の内容を調査することにより、不動産業の実態を把握し、不動産取引の円滑化を図るための基礎資料を得ることを目的として実施している。
なお、海外編は昭和61年度分より実施している。
2.調査方法
平成11年3月31日現在、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)の規定により宅地建物取引業(建設大臣)の免許を受けている事業者全数(2,185事業者=知事免許を含む全免許業者138,752の1.6%)を対象とした。
これらの事業者に対し調査票を直接送付し、被調査企業が自ら回答を記入した後、これを回収する方法をとっている。
有効回答数は1,110件(有効回収率50.8%)であった。事業者からの回答が半分程度であったのは、宅地建物取引業を縮小しているとの理由で調査を辞退した事業者があったこと、また、宅地建物取引業は兼業者の多い産業であり、免許を受けていても必ずしも宅地建物取引業を主たる業務としていないとの理由で調査を辞退した事業者があったのではないかと推定される。
3.調査対象期間
4.調査事項
5.その他
?U.調査結果の概要
1.企業の概要について
今回の調査における有効回答数は、1,110件と前回調査(平成9年度分)の1,164件と比べて54件減少した。有効回答率は50.8%と前回調査52.6%を1.8ポイント下回っている。
一事業者当たり不動産部門従業者数に関して、分譲(56.3人→70.0人)、流通(81.0人→88.7人)、管理(92.2人→130.8人)が増加し、賃貸(36.6人→31.7人)が減少している。前回調査では分譲が増加したが、今回調査では管理が増加している。
一事業者当たり主たる業務内容に係る事務所数に関して、分譲(4.6ヶ所→4.9ヶ所)、流通(8.7ヶ所→9.6ヶ所)、管理(4.0ヶ所→5.9ヶ所)が増加しており、賃貸(4.8ヶ所→3.5ヶ所)が減少している。
といった点である。
2.不動産業の収益状況について
本調査に回答を寄せた1,110事業者中、不動産業を主たる業種とする587事業者のうち「売上および利益の状況」の質問において有効な回答の有った525事業者についての収益状況は、次表の通りとなっている。
主たる
業務内容
平成9年度
(548事業者)
平成10年度
(525事業者)
売上高営業利益率
売上高経常利益率
売上高営業利益率
売上高経常利益率
分 譲
5.1%(229社)
0.8%(229社)
4.0%(218社)
▲さんかく 0.0%(218社)
流 通
▲さんかく2.2%(135社)
▲さんかく5.4%(135社)
2.1%(140社)
0.1%(140社)
賃 貸
11.2%(124社)
3.4%(124社)
13.4%(115社)
4.2%(115社)
管 理
5.2%( 43社)
4.1%( 43社)
4.3%( 46社)
3.2%( 46社)
合 計
6.9%(548社)
1.5%(548社)
6.0%(525社)
1.2%(525社)
前回調査と比較してみると、分譲、管理部門において営業利益率が減少している。しかしながら、流通部門は前回調査で営業利益率がマイナスであったものが、今回プラスに転じている。経常利益率も営業利益率同様に分譲、管理部門において減少し、流通部門はプラスに転じている。不動産業全体で見ると、営業利益率、経常利益率ともに減少している。
又、表3−2に見るように、不動産部門従業者別の収益状況は、20名以下の階層すべてで経常利益がマイナスであり、21名以上の階層ではプラスである。前回調査と比較して見ると1〜5名、501名以上の階層で経常利益が増加したものの、それ以外の階層では減少している。全体で見ると上記表の対売上高同様、営業利益、経常利益ともに減少している。
【平成11年の不動産業の収益動向関連資料】
法人企業統計調査(H11年12月大蔵省発表)では、不動産業の経常利益は1〜3月が赤字、その後4〜12月まで3期連続で黒字という昨年の状況と同様、平成11年も1〜3月が赤字であり、4〜6月、7月〜9月と2期連続して黒字となっている。
平成11年の不動産業の倒産件数は、前年同月と比して1、8、9、10、11月は減少している。負債総額は、1、10、11、12月は減少しているが、その他の月は増加している。(帝国データバンク「全国企業倒産集計」)
不動産業業況等調査(H12年1月時点(財)土地総合研究所発表)では3ヵ月後の経営の見通しにつき、住宅・宅地分譲業、不動産流通業において「変わらない」という回答が過半数を占めたものの、ビル賃貸業においては「やや悪くなる」という回答が過半数を占めており、今後の見通しについては明るいとはいえない状況である。
3.指定流通機構の活用状況について
売買・交換の代理・媒介の実績に関し、今回調査における実績件数は143,782件(前回160,673件)中、売りの代理・媒介は78,140件(前回84,858件)であった。そのうち、指定流通機構に登録し成約したものの件数は29,696件、38.0%(前回24,999件、29.5%)であった。
平成8年度
成9年度
平成10年度
売買・交換の代理・媒介の件数
171,496
60,673
143,78
内、売りの代理・媒介の件数(A)
102,337
4,858
78,140
(A)の内、指定流通機構に登録し成約した件数(B)
34,615
4,999
29,696
売りの代理・媒介の内、指定流通機構
に登録し成約した件数(B)/(A)
33.8%
9.5%
38.0%
【指定流通機構の新規登録件数、検索件数、成約報告件数】
平成8年度
平成9年度
平成10年度
総 数
前年比
総 数
前年比
総 数
前年比
新規登録件数
969,214
9.9%
1,058,491
9.2%
1,177,406
11.2%
うち売り物件
559,856
▲さんかく5.3%
587,844
5.0%
607,185
3.3%
うち賃貸物件
409,358
40.8%
470,647
15.0%
570,221
21.2%
[参考]検索件数(月平均)・成約件数の推移
平成8年度
平成9年度
平成10年度
総 数
前年比
総 数
前年比
総 数
前年比
月平均検索数
844,855
20.6%
925,991
.6%
1,053,478
13.8%
成約報告件数
(売り物件)
83,588
▲さんかく4.7%
78,097
6.6%
79,591
1.9%
(建設省建設経済局不動産業課調べ)
市場規模の推定
調査結果と指定流通機構の利用状況から代理・媒介の市場規模は次のように推計される。
市場全体の売買・交換の代理、媒介の件数
調査結果
指定流通機構に登録された売りの
専属専任・専任媒介契約の件数
143,782 ・・・・・・ a
28,225 ・・・・・・ b
379,022 ・・・・・・ c
a×ばつ(c÷b) により 1,930,790
・・・・・・・・・・・・・・・・ 約193万件
売りの代理・媒介の件数
調査結果
・売りの代理・媒介の件数
・専属専任・専任媒介契約の件数
指定流通機構に登録された売りの
専属専任・専任媒介契約の件数
78,140 ・・・・・・ a
28,225 ・・・・・・ b
379,022 ・・・・・・ c
a×ばつ(c÷b) により 1,049,310
・・・・・・・・・・・・・・・・ 約105万件
売りの媒介の件数
調査結果
・一般媒介契約の件数
・専属専任・専任媒介契約の件数
指定流通機構に登録された売りの
専属専任・専任媒介契約の件数
20,971 ・・・・・・ a
28,225 ・・・・・・ b
379,022 ・・・・・・ c
(a+b)×ばつ(c÷b)により 660,633
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 約66万件
5.海外不動産投資について
海外不動産投資(フロー)は昭和61年度に調査を開始して以来、次頁図表の通り平成元年度に1兆2,016億円とピークを記録したが、平成10年度は253億円であり平成元年度の2.1%の水準までに落ち込んでいる。
海外不動産投資の今後の見通しに関しては、投資実績が下降を始めた平成2年度の結果において「投資を積極的に続ける」「投資を縮小しても基本的には続ける」という回答が60.0%あったものが、今回調査では28.3%に減少している。これは前回調査の25.0%より増加している。「投資を縮小または中止する」とする回答(43.4%)も前回調査(32.8%)より増加している。
今回調査では、アジア地域への投資が増加(5,804百万円→20,932百万円、+260.6%)したものの、それ以外の地域においては軒並み大幅に減少している。