核情報

2009年4月3日〜

世界の核兵器 2009年

米露、核軍縮で新条約の交渉開始を発表 関係改善へ一歩
2009年04月02日 09:31

【4月1日 AFP】(一部更新)バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領は1日、ロンドン(London)で開かれる......
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追加情報: 世界の核兵器 2010年米ソ(ロ)戦略兵器制限・削減条約一覧

4月1日 米国のオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領は、1991年締結の第一次戦略核兵器削減条約(START?T)が失効する今年12月までに、後継条約を締結すると発表しました(共同声明 英文)。今後、米露の核兵器の数が議論されることが多くなると思われますので、世界の核兵器の数の最新のデータを載せました。

調印時の1万発以上だったそれぞれの戦略核を約6000発に削減するとのSTARTの約束は2001年12月に達成されました。米国は、この数をさらに2012年末までに2200発以下にすることとする戦略攻撃兵器削減条約(SORT=モスクワ条約)の目標を今年1月にすでに達成しています。しかしSORTは、その過程についても、検証措置についても規定がありません。2012年12月31日の時点で2200以下になっていればよいというだけです。しかも、この条約は、その効力が同日に消失するという常識破りの「条約」です。検証措置が定められているSTART?Tは、2009年12月5日に失効します。このままでは米ロは何の検証措置も持たない状態に突入してしまいます。そこで、このSTARTの検証措置を何らかの形で延長させて、SORTか次の条約に組み入れるべきだとの提案がされて来ていました。このような背景の下、両大統領は、後継条約を年内に締結することに同意したのです。

ここで注意が必要なのは、条約で何を数えているかです。STARTやSORTで定めているのは、戦略核についてです。しかも、米国は、SORTで定めた2200発について、配備しているものだけを数え、その中には、予備のものなどを入れないという方針を独自にとっています。2200発というのは、配備戦略核です。米国科学者連合(FAS)のハンス・クリステンセンらによると、これに非戦略核 500発を加えた、2700発が配備核です。これに予備のものなどを含めた国防省保有の核兵器の総数は、5200発。それに、解体待ちの4200発(エネルギー省管轄)を加えた9400発が、米国に存在する核兵器の総数です。

2009年の世界の核兵器

表1は、核兵器の数を追い続けている専門家として著名な「米国科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセンと「自然資源防護協議会(NRDC)」のロバート・ノリスの二人のデータです。FASのサイトにクリステンセンが載せているもの(2009年4月2日更新)です。右端の2項目は、表の説明文とBAS誌の記事を参考に付け加えました。世界の核兵器は、実際に配備されているもののほか予備などを含む「保有核総数」が2万発弱、退役して解体待ちのものを入れると、約2万3300発以上という推定です。*表2は昨年のデータです。

(*様々な不確かさのため、合計は各項目を足したものと合わないとの注が付いています。)


2009年世界の核戦力の状況 (FAS:2009年10月2日)
国名 戦略核 非戦略核 配備
operational 予備含む保有核総数
stockpile 解体待ち退役核 退役核含む総数
ロシア 2,668 2,050 4,718 約13,000
(内非戦略5340) 左のうち約3,000 約13,000
米国 2,126 500 2,623 5,200 約4,200 約9,400
フランス 300 該当せず 300 >300
中国 180 ? 約180 約240
英国 160 該当せず <160 約185
イスラエル 約80 該当せず 該当せず 約80
パキスタン 約60 該当せず 該当せず 70〜90
インド 約60 該当せず 該当せず 60〜80
北朝鮮 <10 該当せず <10
合計 5,634 2,550 7,981 約19,185 約23,375


2009年世界の核戦力の状況 (FAS:2009年4月2日)
国名 戦略核 非戦略核 配備
operational 予備含む保有核総数
stockpile 解体待ち退役核 退役核含む総数
ロシア 2,790 2,050 4,840 約13,000
(内非戦略5340) 左のうち約3,000 約13,000
米国 2,200 500 2,700 5,200 約4,200 約9,400
フランス 300 該当せず 300 >300
中国 180 ? 約180 約240
英国 160 該当せず <160 約185
イスラエル 約80 該当せず 該当せず 約80
パキスタン 約60 該当せず 該当せず 約60
インド 約60 該当せず 該当せず 約60
北朝鮮 <10 該当せず <10
合計 5,850 2,550 8,190 約19,135 約23,335


2008年世界の核戦力の状況 (FAS:2008年4月9日)
国名 戦略核 非戦略核 配備
operational 予備含む保有核総数
stockpile 解体待ち退役核 退役核含む総数
ロシア 3,113 2,079 5192 約14,000 左のうち約3,000? 約14,000
米国 3,575 500 4075 5400 約5,000 約10,500
フランス 348 該当せず 348 >348
中国 180 ? 約193 約240
英国 160 該当せず <160 約185
イスラエル 約80 該当せず 該当せず 約80
パキスタン 約60 該当せず 該当せず 約60
インド 約50 該当せず 該当せず 約50
北朝鮮 <10 該当せず <10
合計 7,715 2,830 9,968 約20,373 約25,500

参考


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米国の核戦力

米国の核兵器 2009年 (FAS・NRDC)
運搬手段数 配備年 搭載個数 弾頭名X威力kt 配備/スペア 予備含む保有核総数 解体待ち退役核 退役核含む総合計 保管ピット
ICBM ミニットマンIII
Mk-12 ~0 1970 1-3 W62 x 170 ~0
Mk-12A 250 1979 1-3 W78 x 335 (MIRV) 350/20
Mk21/SERV 200 2006 (注a) 1 W87x300 200/10
合計 450 550/30
SLBM トライデント II D5(注b)
Mk-4 1992 4-6 W76 x 100 (MIRV) 718/40
Mk-4A 2008 4-6 W76 x 100 (MIRV) 50/10
Mk-5 1990 4-6 W88 x 455 (MIRV) 384/20
合計 288 1,152/70
爆撃機 B-52Hストラトフォートレス 93/44(注c) 1961 ALCM/W80-1 x 5-150 350/25
B-2Aスピリット 20/16 1994 B61-7, -11, B83-1 150/25
合計 113/60 500/50(注d)
戦術核 トマホーク SLCM 325 1984 1 W80-0 x 5-150 100
B61-3, -4 爆弾 n/a 1979 0.3-170 400(注e)
合計 325 500
総計 ~2,702/150(注f) 約5,200 約4,200 約9,400 >14,000
(2012年予定) 約4,600(*訳注)
  • ALCM=空中発射巡航ミサイル
  • ICBM=大陸間弾道ミサイル
  • MIRV=複数目標多弾頭
  • SLCM=潜水艦発射巡航ミサイル
  • SLBM=潜水艦発射弾道ミサイル
  • a W87は、MXピースキーパーに搭載されていたもの。最後のMXピースキーパーは2005年に、退役となった。
  • b 通常このほかに計48基のミサイルを搭載の2隻が点検整備中で、配備には使えない。これらの合計288発の核弾頭は、状況対応用の予備の核兵器と見なされる。新型のW76-1/Mk-4Aの引き渡しが、2008年10月に開始された。この核弾頭は現在配備されつつあると推定。[訳注:現在は、ミサイル1基当たり4発の核弾頭搭載と推定。1隻に24基搭載で、1隻当たりの弾頭数は、96。12隻で1152となる。改修型弾頭W76/Mk-4A は、破壊力が最大になる高度で起爆できる高性能信管を備えている。]
  • c 93は総機数(訓練・実験・予備用を含む)、44は主要ミッション航空機数、つまり、核・通常ミッションに割り当てられている現用航空機の数。
  • d 大量の核爆弾と巡航ミサイルのプールの存在が、ミッションによって多数の搭載形態を可能にしている。我々は、2012年までにすべての範疇を合わせてALCM350 という戦力レベルは──SORTレベルを2010年(2年早く)達成する準備として──すでに達成されていると推定する。
  • e これら約200発がヨーロッパの5つのNATO諸国の6つの基地に配備されている。核トマホークSLCMもNATO及び北東アジアの拡大抑止を支える。
  • f 米国政府は、スペアを現用核弾頭として数えない。ここでは、これを予備に算入。予備は、約2500と推定。このほか4200が解体を待っている。
  • *訳注 2008年の表の4,500から今回の4,600に変わったのは政府発表が変わったためではなく、FAS/NRDCの推定作業の結果。これらの数字は公表されていないので、細心の注意を払いながら推定を行っており、現在の結論が今回の数字とFASのクリステンセンが核情報に回答。
出典 U.S. nuclear forces, 2009 (pdf);
Bulletin of the Atomic Scientists, March/April 2009

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中国の核戦力

タイプ
名称 NATO名称 配備数 最初の配備年 射程(km)a 搭載核弾頭 核弾頭数
陸上配備ミサイル
DF-3A CSS-2 17 1971 3100 1 x 3.3 Mt 17
DF-4 CSS-3 17 1980 5400+ 1 x 3.3 Mt 17
DF-5A CSS-4 20 1981 13000+ 1 x 4−5 Mt 20
DF-21 CSS-5 55 1991 2100 1 x 200−300 kt 55
DF-31 ? ~6 2008 7200+ 1 x 200−300 kt ~6
DF-31A ? ~6 2008 11200+ 1 x 200−300 kt ~6
小計 121 121
潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)
JL-1a CSS-NX-3 0 1986 1000+ 1 x 200−300 kt 0
JL-2 CSS-NX-4 0 2009−2010? 7200+ 1 x 200−300 kt? 0
小計 0 0
航空機b
H-6 B-6 20 1965 3100 1 x 核爆弾
DH-10巡航ミサイル ~20
~15
Qian-5攻撃機 その他 Q-5 ? 1972−? ? 1 x 核爆弾 ~20
小計 >20 ~55
合計c ~176
  • DF=東風
  • JL=巨浪
  • ? = 不明
  • ~=約
原注:
  • a JL-1は、完全な運用状態となったことは一度もなかった
  • b 数字は、核搭載用装備の航空機のみを表す。数百機が非核用の形で配備されている。航空機の航続距離は、戦闘半径と同等。10キロトンから3メガトンの核爆弾を少数保有と推定。
  • c さらに65発が貯蔵されている可能性がある。

出典

Chinese nuclear forces, 2008 (pdf) Bulletin of the Atomic Scientists July/August 2008
(「米国科学者連合(FAS)」と「自然資源防護協議会(NRDC)」のデータ

説明

FAS/NRDCは、主として、米国国防省の報告書類を下に、中国の核弾頭配備数を約180、貯蔵分合わせて、約240と推定。この表は、昨年夏のものだが、上の「2009年世界の核戦力の状況」(FAS:2009年4月2日)」の総数と比べると分かるとおり、現在もほぼ同じ状態にある。後述の通り、国防省の年次報告書の2008年版と2009年版の推定もほとんど変わっていない。

内訳は次の通り。

陸上配備の核弾頭搭載用ミサイルの総数は、121。このうち、米国本土に届くのは、東風5A(DF5A=CSS4:液体燃料・サイロ配備)20基と配備され始めたばかりの東風31A(DF31A:固体燃料・道路移動型)10基以下。米国国防省は、中国のミサイルはすべて単弾頭と見ており、FAS/NRDCもこの見方を採用。

これと、航空機用の55を合わせて、176。これと予備65を合わせて、約240となる。

唯一の弾道ミサイル原子力潜水艦(夏型(092型): 1980年代製造の1隻のみ存在、ミサイル12基を搭載)は、抑止パトロールに出たことがなく、現在では、完全な運用状態にあるとは見られていない。米国国防省の「中国軍事力年次報告書」(「国防長官官房(OSD)」)は、2008年版も2009年版も、この潜水艦の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)(巨浪1:射程1000+km)をミサイル・リストに載せていない。

米国科学者連合(FAS)のクリステンセンは、2008年8月3日のブログで、この夏型原子力潜水艦が数年間の修理作業を経てドライドックを出た写真(2007年12月5日)を紹介し、今後同潜水艦が、新型潜水艦の補完的役割を果たすようになるのか、実験用になるのか不明だと述べている。

FAS/NRDCは、新型弾道ミサイル原子力潜水艦「ジン(晋)型(094型)」2隻以上が建設中と推定。各艦に12基搭載される潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)(巨浪2:射程7200+km)は、中国領海からは米国本土に届かない。

米国「国防省国防情報局(DIA)」の2009年版「脅威評価年次報告書」(2009年3月10日, pdf)は、「中国は、現在米国を標的にする能力を持つICBMを50基以下しか保有していない。しかし、米国に届きうるICBMの弾頭の数は、向こう15年間で2倍以上になり得る。とりわけ、MIRV(多弾頭個別誘導複数目標)方式が採用されれば、そうである」と述べている。だが、2009年版「中国軍事力年次報告書」(「米国国防長官官房(OSD)」, pdf)の核戦力推定は、新型ミサイル東風31(DF31)及び東風31A(DF31A)の数も含め、2008年版とほぼ同様になっている。これでは、15年間で2倍以上というのは、よほど急速な伸びがなければ現実のものとなりそうにないと、ハンス・クリステンセンは、ブログで指摘している。

下の表は、2009年版「中国軍事力年次報告書」(「米国国防長官官房(OSD)」, pdf)66ページにある表を翻訳したものである。備考欄は、本文の情報を下に付け足した。

この表のミサイルは、通常弾頭のものも含んでいる(CSS-6及びCSS-7、それに巡航ミサイルDH-10の大部分)。FAS/NRDCは、「中国の短距離弾道ミサイルのほとんど、おそらくはすべてが、通常弾頭のものと考えられている」と説明している。


中国のミサイル戦力
ミサイル数弾道・巡航ミサイル
ミサイル/発射機
推定射程距離備考
CSS-215-205-103000+km液体燃料
CSS-315-2010-155400+km液体燃料
CSS-4202013000+km液体燃料・サイロ
DF-31<10<107200+km固体燃料・道路移動
DF-31A<10<1011200+km固体燃料・道路移動
CSS-560-8070-901750+km固体燃料・道路移動:地域抑止用
CSS-6350-40090-110600km通常弾頭。08年9月までに合計1050〜1150基を台湾対岸に配備。年間100基の割合で増強
CSS-7700-750120-140300km
DH-10150-35040-551500+km地上・空中発射巡航ミサイル
JL-2開発中10-147200kmジン(晋)型潜水艦に12基ずつ搭載予定

2009年版「中国軍事力年次報告書」(「米国国防長官官房(OSD)」, pdf) (66ページ)

[画像:射程を示す地図]
参考:

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