研修認定セミナー開催予定
アニュアルエビデンスレビュー2025(AER2025春)大阪
ハイブリッドセミナー(会場参加およびweb参加)
- 会 期
- 2025年3月8日(土)12:00-16:50
- 会 場
- AP大阪駅前 B2F APホールI(ハイブリッド開催)
大阪府大阪市北区梅田1-12-12 東京建物梅田ビル
https://www.tc-forum.co.jp/ap-osakaekimae/access/
- 参加費
- 5,000円(お申込みいただいた後、参加費をご請求いたします。)
当セミナーは、医療従事者・製薬会社社員・医療系大学生に限定いたしております。
AERに参加されますと、学会員は、免疫療法認定医資格の研修認定単位3単位を取得できます。
ただし、「AER2025春」の内容は、第52回総会会期中(2024年10月12日)に実施した「AER2024秋」と同じ内容のため、両方参加されても6単位にはなりませんので、ご注意ください。
会場参加の方は会場で参加票にお名前を記入いただき回収いたします。web参加の方は、視聴ログが残ります。
会期終了後2週間程度で、「会員マイページ」に取得単位が登録されます。会員マイページから「会員情報を変更する」ボタンで、単位が確認できます。
参加申込は締切いたしました。
お問合せは、下記までメールにてお願いいたします。
日本臨床免疫学会事務局 Email:jsci@icongroup.co.jp
プログラム
12:00 – 12:50 ランチョンセミナー 共催:日本イーライリリー株式会社
- 座 長
- 松本 功(筑波大学医学医療系 膠原病リウマチアレルギー内科学)
- テーマ
- 若年性特発性関節炎におけるバリシチニブの適応拡大
- 講 師
- 森 雅亮(東京科学大学 生涯免疫医療実装講座/聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科)
- 抄 録
- 2024年3月、本邦の小児領域で初めて、バリシチニブ(BARI)が国際共同治験(Lancet 2023;402:555-570)を経て、「既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(JIA)」に対して適応を取得した。
BARIはJAK1およびJAK2活性を阻害し,シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)のリン酸化および活性化を抑制することによりシグナル伝達を阻害する。用法用量としては、2歳以上の患者に、体重によって1日1回経口投与する(30kg以上:通常4mg/日、患者の状態に応じて2mg/日に減量、30kg未満:通常2mg/日、患者の状態に応じて1mg/日に減量)。過去の治療において,少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても,疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること,またJIAのうち全身型JIAに対する有効性および安全性は確立していないため投与しないこと等が投与条件となっている。
関節リウマチ診療ガイドライン2024では、「他のDMARDが使えないまたは効果不十分で中等度以上の疾患活動性を有するJIA少関節炎型・多関節炎型の患者(児)に、短期的治療において、JAK阻害薬投与を推奨する(条件付き)」と記載されており、若年性特発性関節炎診療ガイドライン2024-25の治療アルゴリズムでは生物学的製剤と同じ位置に配している。
本講演では、国際共同治験の内容と小児における今後の展望について概説する。
- テーマ
- 乾癬性関節炎のWindows of Opportunityと治療選択〜トルツの有用性〜
- 講 師
- 岸本 暢將(杏林大学医学部 腎臓・リウマチ膠原病内科学)
- 抄 録
- 乾癬性関節炎(PsA)は、QOLの低下と関連し、診断の遅れは進行性の関節破壊や長期的な身体障害につながる可能性があるため、日常診療で早期診断を促進するために、PsAの主要な臨床的特徴を熟知する必要がある。特に、皮膚、爪病変に加え、末梢関節炎、体軸関節病変、指趾炎、付着部炎などの関節症状、また併存症合併症の評価を含めたマルチプルドメインの評価が早期診断そして、治療薬選択にも非常に重要である。治療薬の進歩にともなうT2T治療戦略が整備され、RA同様Windows of Opportunitiesを示すエビデンスがオランダから報告された。早期に治療を開始することにより関節破壊抑制効果が示されている。
GRAPPA治療推奨、欧州リウマチ学会の治療推奨が昨今アップデートされたが、経口DMARDs無効例(不耐例)においては生物学的製剤がファーストチョイスとなる。皮膚乾癬におけるIL17阻害薬の有用性は既知であるが、H2H試験によるTNF阻害薬との有用性を爪病変、付着部炎、DIP関節病変を示しており末梢関節病変への選択肢としての解説を行う。また、難治病変として知られる体軸病変の臨床像がAXIS studyで明らかになり、その臨床像と治療選択に関しても解説を行う。
13:00 – 15:50 アニュアルエビデンスレビュー: 1-4
(免疫療法認定医制度 研修認定単位3単位付与)
- 座 長
- 松本 功(筑波大学医学部医学系 膠原病・リウマチ・アレルギー内科)
渥美 達也(北海道大学大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室)
- 13:00 - 13:40
- Annual Evidence Review 1
- テーマ
- 難治性喘息の病態と治療戦略
- 講 師
- 今野 哲(北海道大学大学院医学研究院 呼吸器内科学教室)
- 抄 録
- 吸入ステロイド剤の登場により、喘息発作で命を落とす症例、あるいは命にかかわるほどの大発作をきたす症例は激減した。しかし、高用量の(吸入)ステロイド剤を使用しても、尚コントルールが不良である喘息(重症喘息、難治性喘息)が存在する。しかし近年の医学の進歩は目覚ましく、現在、重症喘息に対し、5種類の生物製剤が使用可能となり、劇的に喘息症状が改善し、ステロイドの内服が不要となる症例も多々経験できる時代になった。難治性喘息治療においては、喘息患者を種々の角度から分類することにより、それぞれの病型(phenotype)に基づいた治療法の選択が必要である。加えて、喘息のみならず、他臓器のアレルギー疾患の併存を常に念頭に置く必要があり、決して1臓器に限定せず、全身を診る姿勢が重要である。アレルギー疾患に対する生物製剤の登場により、全身を診るという医師の姿勢の大切さを改めて感じることができるようになったとも言えよう。今回は、本演者がこれまで展開してきた、当科での前向き観察研究の結果を中心に、気管支喘息という疾患の多様な病態理解の必要性、及びその克服に向けた今後の戦略について概説し、更には、当科で生物製剤を導入した症例を複数紹介し、全身を診るという医師の姿勢の重要性について考察したい。
- 13:40 - 14:20
- Annual Evidence Review 2
- テーマ
- 炎症性腸疾患の治療戦略 up-to-date
- 講 師
- 小林 拓(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター)
- 抄 録
- 近年の難治性の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease, IBD)に対する生物学的製剤や低分子化合物(advanced therapyと総称される)の開発により治療成績は飛躍的に向上した。特に潰瘍性大腸炎(UC)クローン病(CD)双方で近年注目されている作用機序がJanus kinase (JAK)阻害薬とInterleukin(IL)-23p19抗体である。JAK阻害薬のupadacitinibはその寛解導入における高い有効性から幅広く使用されるようになってきているが、その安全性については懸念が残る。IL-23p19抗体についてはCDにrisankizumabが、UCにmirikizumabが承認され、さらにはguselkumabも含めたエビデンスが蓄積してきている。さらには休薬(HAYABUSA、STOP-IT、SPARE)や併用療法(EXPLORER、VEGA)などadvanced therapyの最適な使用に関して様々な角度から検討がなされている。治療の進歩は治療目標を高めることを可能にし、treat-to-targetの目標として組織学的寛解や全層性炎症の消失を目指すことも可能になり、その評価のための人工知能やバイオマーカー、腸管エコーなどの多様なツールについての知見も発信されている。
- 14:30 - 15:10
- Annual Evidence Review 3
- テーマ
- 関節リウマチ・脊椎関節炎の最新エビデンス
- 講 師
- 池田 啓(独協医科大学 リウマチ・膠原病内科)
- 抄 録
- RAに対する分子標的薬の安全性のエビデンスとして、JAK阻害薬とTNF阻害薬を直接比較したORAL Surveillance試験(N Engl J Med 2022)のインパクトは大きく、JAK阻害薬のガイドライン等に大きな影響を与えた。RAの超早期治療に対する重要なエビデンスとして、関節腫脹の出現する前のRAハイリスク症例を対象とした無作為化治療介入試験TREAT EARLIER試験(Lancet 2022)およびAPIPPRA試験(Lancet 2024)が挙げられる。また、RAの病態解析においては、滑膜検体の大規模研究であるAMPより、単細胞RNAシークエンスを中心とした解析(Nature 2023)、マルチモーダルな解析(Nat Genet 2023)が報告された。SpA領域においては、IL-17A/Fを標的とするバイスペシフィック抗体の乾癬性関節炎(Lancet 2023, Lancet 2023)および体軸性脊椎関節炎(Ann Rheum Dis 2023)における有効性が示された。IL-17A阻害薬とTNF阻害薬の直接比較無作為化試験の副次解析において、隣接する爪・遠位指節間関節の罹患がIL-17A阻害の有効性を予測することが示された(Rheumatology (Oxford) 2024)。TriNetXという巨大なデータベースを用い、生物学的製剤による関節炎発症予防効果が解析されたが(RMD Open 2023)、データベース研究の信頼性が議論されている。探索的な検討として、特定のTCRモチーフを発現するT細胞の除去により改善した強直性脊椎炎の症例が報告され(Nat Med 2023)、今後の展開が注目される。
- 15:10 - 15:50
- Annual Evidence Review 4
- テーマ
- 免疫チェックポイント阻害と内分泌機能異常
- 講 師
- 岩間 信太郎(名古屋大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科)
- 抄 録
- 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)として抗PD-1抗体が2014年7月に初めて本邦で承認され、その後、抗CTLA-4抗体(2015年7月)、抗PD-L1抗体(2017年9月)、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用(2018年5月)が使用可能となった。また、他の抗がん剤との併用も進められており、ICIの使用は今後さらに拡大すると考えられる。ICIを用いたがん免疫療法では、抗腫瘍効果の一方で自己免疫疾患に類似した免疫関連有害事象(irAE)が発生する。irAEは肺、消化管、肝、皮膚、内分泌器官など全身の臓器で認められ、代表的な内分泌irAEとして下垂体機能低下症、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能異常症、副甲状腺機能低下症、1型糖尿病が知られている。ほとんどの内分泌irAEは永続的なホルモン補充療法が必要であり、下垂体機能低下症や1型糖尿病に対して適切な対処がなされなければ副腎クリーゼや糖尿病ケトアシドーシスといった重大な転帰を辿ることもあり得る。一方、一部のがんにおいて内分泌irAE発症者は非発症者と比し生命予後が良いことから、内分泌irAEのマネジメントは極めて重要である。我々は内分泌irAEの特徴を明らかにする目的で2015年11月より当院でICIを使用する全例を対象に前向き臨床研究を開始し、これまでに1,500例以上をフォローしてきた。本講演では内分泌irAEの臨床的特徴、高リスク因子および生命予後に関する知見を解説するとともに、irAEの発症機序について考察する。
16:00 – 16:50 イブニングセミナー 共催:中外製薬株式会社
- 座 長
- 渥美 達也(北海道大学大学院医学院 免疫・代謝内科学教室)
- テーマ
- 滑膜からみるIL-6阻害療法の使いどころ
- 講 師
- 土屋 遥香(東京大学大学院医学系研究科 アレルギー・リウマチ学)
- 抄 録
- 関節リウマチ(Rheumatoid arthritis; RA)は、遺伝的素因や環境因子を背景に発症する代表的な自己免疫性関節炎である。発症早期から、RAの関節内では多様な免疫細胞(例: T細胞・B細胞・単球)や間葉系細胞(例: 滑膜線維芽細胞)が細胞間接着や液性因子を介して相互に活性化し、免疫-間葉連関が局所の炎症環境を構成する。近年、欧米を中心に発展した滑膜シングルセルオミクス解析により、RAの炎症や骨・軟骨破壊、疼痛にかかわる細胞クラスターが次々と報告され、IL-6に代表される炎症メディエーターの産生源がより詳細に明らかになった。さらには、滑膜の多様性に基づく患者の層別化が、治療反応性の予測につながる可能性も期待されている。
本講演では、RA診療におけるIL-6阻害療法のポテンシャルと限界について、滑膜の視点から議論したい。
- テーマ
- NMOSDの治療:IL-6の重要性
- 講 師
- 木村 公俊(京都大学大学院医学研究科 臨床神経学)
- 抄 録
- 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD: neuromyelitis optica spectrum disorder)は、中枢神経系のアストロサイト上に発現するAQP4を標的とした自己免疫疾患である。抗AQP4抗体がバイオマーカーとなり、日本では約7000人が罹患している。同じく中枢神経系を標的とした自己免疫疾患である多発性硬化症やMOG抗体関連疾患と比較して、一度の再発により高度の神経障害を残すことが多い。再発後に完全寛解する患者は約2割にとどまり、視神経障害や脊髄障害が残ればADL悪化に直結する。このため、特に強力な再発予防治療が必要となる。従来はステロイドと免疫抑制剤の併用が再発予防治療の中心であったが、近年、複数の生物学的製剤が使用可能となった。各製剤の標的はIL-6受容体(サトラリズマブ)、補体C5(エクリズマブ、ラブリズマブ)、B細胞(CD20:リツキシマブ、CD19:イネビリズマブ)であり、いずれもNMOSDの病態に深く関与しており、高い再発予防効果が得られる。本講演では、NMOSDの病態と治療について最新の知見を交えながら概説する。