Q&A
建物の耐震診断とは何ですか。
旧耐震基準で設計された建物の耐震安全性能の大きさを数値計算により構造耐震指標(Is値)として評価し、新耐震設計レベルの耐震性能(Iso)と比較して検討する手法です。 建物の耐震性能は、建物の強さと粘りに、建物形状と経年状況を考慮して評価されます。
鉄筋コンクリート造建物等の耐震性能は、ls値(構造耐震指標)という指標で表されます。値が大きいほど耐震性が高くなり、構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性を示す数値です。
住まいの安心を確保するため、安全確保の対策のため、資産価値向上のため、耐震診断により耐震性能を把握することが求められています。
耐震診断の手順・内容について教えてください。
耐震診断は、現地調査(予備調査)で建物等の概況を把握したうえで、外観、履歴、設計図書等の内容を確認し、構造の耐震性の検討・評価を行います。
耐震診断には計算精度が異なる1〜3次の診断レベルがあります。
予備調査
現地での目視調査、設計図書の内容の確認、建物修繕履歴等を確認し、詳細診断の必要性の有無を判断する。
詳細診断
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第1次診断
壁の多い建築物が対象
柱・壁の断面積から構造耐震指標を評価
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第2次診断
主に柱・壁の破壊で耐震性能が決まる建築物
柱・壁の断面積に加え、鉄筋の影響も考慮し、構造耐震性能を評価
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第3次診断
主に梁の破壊や壁の回転で耐震性が決まる建築物
柱・壁(断面積・鉄筋)に加えて、梁の影響を考慮し、構造耐震指標を評価
耐震性の判定はどう行うのですか。
耐震改修促進法によれば、下記の条件を満たせば「安全」と判定します。
1次診断 Is値 ≧ 0.8
2次診断 Is値 ≧ 0.6
3次診断 Is値 ≧ 0.6
2次診断や3次診断の結果のIs値の評価は下記のように言われています。
ls値が0.3未満の場合
地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い。
ls値が0.3以上0.6未満の場合
地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は、崩壊する危険性がある。
値が0.6以上の場合
地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低い。
精密診断をすると、耐震補強が必要になりますか。
精密診断は、現在の基準に対し、どこがどの程度の強さなのか診断することで、原則として、現在の基準を満たす耐震補強が求められます。
但し、マンションの場合、合意の形成や費用の点で、すぐに補強できるとは限りません。
明らかに弱い箇所があり、その部分の補強に対する合意の形成が比較的容易な場合は、そこだけ耐震補強工事を行い、他の箇所は、合意の形成がとれるのを待ったり、お金が貯まるのを待つような、段階的に補強する方法もあります。
補強工事費は概算でいくらくらいになりますか。
補強工事に相場は無く精密診断の前に概算工事費はわかりません。
精密診断の結果、現在の基準を満たしていれば、工事が必要無い場合もあります。
精密診断後に、補強レベルを決めて、補強計画案を作り、概算工事費を算出します。
コンクリートの強度が心配です。
精密診断では建物のコンクリートの一部をくり抜いて、実際のコンクリート強度を確かめます。
実際には直径75mm〜100mmのコアを抜き、試験場で圧縮試験をして圧縮強度を確認します。コアは1フロア3箇所必要です。
コンクリートの強度は建設時に試験をしながら建てていますが、圧縮強度試験をしてみると、意外にバラツキが多く、統計的にコンクリート強度を推定するには、1フロア3箇所必要です。
耐震改修は大規模修繕工事と一緒に出来ますか。
耐震改修と大規模修繕工事を、一緒に行うことは可能で、工事費の削減になります。
但し、合意の形成を含め、進み具合を合わせる事が求められます。
精密診断の見積りが高いと思います。
耐震精密診断はJASOで実施しなければならないという事ではありません。
他の一級建築士事務所から、見積もりを取って構いません。但し、耐震改修は構造設計者の技量が求められますので「構造設計一級建築士」や「JSCA建築構造士」が担当する事が望ましいです。
耐震改修工事をした場合、地震保険の料率は変わりますか。
地震保険には、耐震診断割引があり、地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合、保険料の割引率は10%です。
耐震診断の有無は表記できますか。
不動産取引きの際、重要事項説明書の中に、耐震診断の実施の有無の記載欄があります。
昭和56年以前に竣工したマンションは、表記の有無にかかわらず、旧耐震基準の建物という評価になります。耐震診断をすることにより、現在の基準に対しどのくらいの数値か示すことができます。