第2回高校生の建築甲子園
1.事業の名称 | 第2回高校生の建築甲子園 |
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2.事業の概要 | 平成23年 10月末 各建築士会へ応募作品の提出 11月 県予選(各建築士会単位で審査)。県大会での最優秀作品を連合会へ提出 12月9日 全国選手権大会(連合会で各建築士会から提出された作品を審査)。優勝校、準優勝校、ベスト8校、審査委員特別賞、奨励賞を選出) 平成24年 1月初旬 審査結果を公表 1月18日 優勝校「静岡県立科学技術高等学校」で、審査委員長、審査委員が出向き表彰式及び審査委員長の講評と講演「まちみちすまいの展開」を実施。 |
3.事業の成果・効果 | 県予選大会参加校56校 応募作品数94点 全国選手権参加校35校 応募作品数35点 優勝 静岡県立科学技術高等学校 準優勝 滋賀県立安曇川高等学校 ほかベスト8賞(優勝、準優勝を除く)6校、審査委員長特別賞1校、奨励賞26校 審査総評 審査委員長:片山和俊/建築家、東京芸術大学建築科名誉教授 少し重荷ではなかったろうか。 今回の第2回建築甲子園に寄せられた35作品を見た時の第一印象である。第1回に較べ作品の表現レベルは確実に上がっていたが、全体におとなしく真面目な感じを受けた。キチッと考えて貰いたいのはやまやまだが、その一方でもっと大胆で元気溢れた作品を待っているようなところがある。今回の作品群の大凡の傾向は前者で、飛躍するには難しいテーマかなと反省が頭をかすめた。 考えてみればテーマの"地域のくらし"は、私たちの世代を含めて先人たちが築こうとして築けなかった問題が山のようにあり、それを若い高校生の諸君に託して背負わせようというのだから、"そんなの重いよ"と一蹴されても仕方がない。受け止めて貰えるだけでよしとしなければならないようだ。何しろ現在の日本は、地方に地域性があっても過疎化し経済環境がよくない。一方都会に賑わいはあっても、地域性やコモンが見えない状態。そこから応えて欲しいというのだから無理難題ではある。真面目に取組めば取組むほど、現実的に考えれば考えるほど夢を描きにくく、表現が地味になるのもやむを得ない。しかも今年は3.11東日本大震災があり、被災地は勿論、日本の各地で明るい未来を描くような気持ちにはなれなかったかも知れない。一瞬にして"地域とくらし"が破壊され痕跡すら見えなくなってしまった大自然の猛威に、立ちすくんでしまったというのが正直なところである。けれどもこの被災を乗越え、また何時くるか分からない猛威に立ち向かうには、やはり"地域とくらし"しかないことを改めて思い知らされた。そして無理難題と分かっていてもやってみなければ、先人たちの本当の苦労は分からないと思い返した。 さらにコンペティションは、初回に較べて2回目の方が難しいことも確かだろう。無手勝流と行かなくなった分、考えることが増えて慎重にならざるを得ないからだ。その上で作品を見直すと、自分が住む地域への愛して止まない思いと重い現実との間、その狭間にそれぞれに見出した高校生諸君の確かな問題意識と提案の数々が見えてきた。その中で勝ち上がった作品は、自分や自分たちの閉じた世界で終わるのではなく、地域への広がりや他への影響を与えることが期待でき、現実の小さな種から未来に向けて夢を描けるものであり、その鮮明さと強さが勝敗を分けたように思われる。 審査方法は昨年に準じトーナメント方式で行った。はじめに審査員がそれぞれ全作品の採点を行い、シード校を選び、抽選で対戦高校を決めて2校ずつ議論して勝敗を決めながら進めた。好敵手が早めにぶつかる不運もあったが、大旨順調に戦いが進んだ。終盤に近づき、昨年と同じように滋賀と静岡の闘いであることが分かり審査に熱が入ったが、今年は入れ替って静岡の勝利となった。まさに甲子園の熱戦のようであった。全体的に見ると若干東日本の方の作品に元気があり、西日本から四国・九州地方に勢いが足りなかった。理由は分からないが、これからの奮起を期待して待ちたい。 最後に昨年も指摘したことだが、平面図に色を使い過ぎる作品が目についた。空間には色がない。折角構成した空間的な魅力が、図面から読取りにくいので注意して貰いたい。もう一つの不満は丁寧な説明を心がけたためかも知れないが、文字量が多く文字が小さく読みづらい作品があったこと。共にコンピュータという便利な表現手段に縛られた弊害かも知れない。紙に打ち出された作品を少し離れて見た時に、見やすく理解しやすいように配慮するのも作品をまとめる基本的なセンスの一つではないかと思われる。 |
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