平成22年度調査・研究助成、平成22年度第1回普及事業助成の決定について
6月から7月にかけて公募した標記の助成事業について、調査・研究あるいは普及事業の計画を数多くお寄せいただきました。このたび、下記の通り助成対象を決定いたしました。
なお、あわせて、今後の助成事業の実施予定のおおむねのスケジュールについてもお知らせします。
目次
助成対象案件
(1) 調査・研究(22年度分)8件
名称 | 実施者 |
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質の高い建築、まちづくりを実現するための建築関連法制の諸課題に関する基礎的研究 | 南 一誠(芝浦工業大学工学部建築学科教授) |
病院設備設計ガイドライン(電気設備・衛生設備)の作成 | 一般社団法人 日本医療福祉設備協会 |
工事監理の実態把握(アンケート)に関する調査 | 社団法人 日本建築構造技術者協会 |
建築物の設計及び工事情報確定過程における設計者、監理者、施工者の役割・責任の割り当ての時代的変化に関する研究 | 平野 吉信(広島大学大学院工学研究科建築学専攻教授) |
建築実務国際ハンドブック作成事業 | 社団法人 日本建築士会連合会 |
インテリアプランニングのキーワードに関する調査・研究 | 一般社団法人 関西インテリアプランナー協会 |
産学連携による分野別インターンシップ制度のあり方に関する調査・研究 | 社団法人 日本建築学会 |
歴史的建造物の保全活用に関する専門建築技術者の養成及び活用に関する調査・研究 | 社団法人 神奈川県建築士会 |
(2) 普及事業(22年度第1回分)11件
名称 | 実施者 |
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建築設備コミッショニング(性能検証)技術者資格制度普及講演会 | 特定非営利活動法人 建築設備コミッショニング協会 |
IPEC(Interior Pro Ex Co 2010) | 一般社団法人 日本インテリアプランナー協会 |
設計者選定コンペシステム『住・緑・家』〜国産材(県産材)使用の住宅〜 | 社団法人 神奈川県建築士事務所協会 |
JSCA構造デザイン発表会 | 社団法人 日本建築構造技術者協会 |
構造設計者の使命・目標・責任に関する自己研鑽 | 特定非営利活動法人 建築技術支援協会 |
大学・建築士・行政の連携による耐震診断の普及と耐震改修支援事業 | 東大阪市減災まちづくり研究会 |
大阪都市景観建築賞(愛称 大阪まちなみ賞)にかかる30回記念誌作成事業 | 大阪都市景観建築賞運営委員会 |
建築士・各職人を志す者の伝統的職能体験研修 | 一般社団法人 建築士協働プロジェクト |
IDTExpo(Inno Design Tech Expo)展示会への出展 | 東京インテリアプランナー協会 |
住宅セレクションVol.3-更新する家- | 社団法人 東京建築士会 |
親と子の都市と建築講座プログラム普及事業 | 社団法人 日本建築学会 |
審査経過及び今後の募集予定
1 審査の経過
応募件数は、調査・研究助成31件、普及事業助成35件でした。
調査・研究助成は、個人による申請71%、団体による申請29%でした。申請の区分ごとの割合については、
(1) 建築設計、工事監理業務等(建築設備、インテリアに関わるものを含む)に関する調査・研究:26%
(2) 建築教育、資格制度等(建築設備士、インテリアプランナーに関わるものを含む)に関する調査・研究:29%
(3) 建築技術者の資質の向上、活用方策等(建築設備士、インテリアプランナーに関わるものを含む)に関する調査・研究:10%
(4) (1)から(3)までのうち、2以上の分野にまたがる調査・研究:29%
(5) その他、建築技術の教育普及に資する調査・研究:6%
でした。
普及事業助成は、個人による申請11%、団体による申請89%でした。
助成対象の決定に当たっては、次の方々から構成する審査委員会を設け、慎重に審査を行いました。その審査結果に基づき、当センター理事長が助成対象を決定したものです。
建築技術教育普及調査事業等審査委員会(敬称略 五十音順)
委員長 杉山 義孝(日本建築防災協会)
委員 秋山 哲一(東洋大学)
委員 小林 克弘(首都大学東京)
委員 小峯 裕己(千葉工業大学)
委員 鈴木 秀三(職業能力開発総合大学校)
委員 鈴木 眞生(建築技術教育普及センター)
委員 竹内 徹 (東京工業大学)
委員 村口 峡子(駒沢女子大学)
2 今後の募集予定
(1)22年度第2回普及事業助成の募集予定
今年度10月以降23年3月末日までに実施を予定する普及事業を対象として10月に開始する予定であり、募集案内は10月1日前後にホームページに掲載する予定です。
(2)23年度調査・研究事業助成、普及事業助成の募集予定
本年度は6月の募集開始となりましたが、来年度の調査・研究事業、普及事業助成については、早期の開始を検討しており、平成23年2月目途でホームページに掲載する予定です。
講評
建築技術教育普及調査事業等審査委員会
本助成事業は長らく休止されていましたが、今回助成額が大幅に拡充され、広く公募する形で実施がされることとなりました。そのため、今回の募集は実施初年度と言ってもよいものでありました。準備期間があまりなかったため、告知手段や募集期間も十分ではなく、また、年度途中の募集となったことから、応募を検討される方々にとって、本助成事業の趣旨にふさわしい企画を検討する十分な時間的余裕がないという悪条件の中での応募していただくということになりましたが、それにも関わらず、多くの興味深く、意欲ある事業の応募をいただきました。告知の方法や募集時期については、今後、回を重ねる中で改善を進めていくことが求められると感じています。
なお、助成事業の対象範囲等については、相当広く解釈できる余地があったことから、調査・研究、普及事業とも、幅広いテーマや形態の事業の応募をいただきました。この点に関しては、以下の今回の審査に当たっての留意ポイント等を踏まえ、次回以降、助成の主として狙いとする分野や事業をわかりやすく表記する方向で検討を行っていく必要があります。
審査は、応募いただいた事業を本助成事業の趣旨等に鑑み、予算の枠内で優先順位付けを相対的に行ったものであり、調査・研究あるいは普及活動の価値の有無を絶対的に判定したものではありません。その前提のもとに、特に審査にあたって留意したポイントを述べることにより、今回の講評といたします。
(1)調査・研究助成
本助成事業の対象として優位に評価できるか否かを、概ね以下のような点から評価し、助成対象案件を決定しました。
第一に、調査・研究が目指そうとする成果が、建築技術者の啓発や資質の向上が図られること、国民の建築技術者への理解や信頼を深めることが期待できること、建築実務、建築教育、社会制度などのありかたを提案しようとするもの、と判断できること。なお、これらの検討の上で有用な現状と課題に関するデータを収集整理しようとするものである、と判断できるものも優位に評価しました。技術の開発研究等は、本助成事業の趣旨からは優位に評価することはできませんでした。
第二に、調査・研究の実施方法や体制、行程が明確で、実行可能なものであり、掲げた研究の目標を達成しうる、と判断できることです。なお、応募案件の中には、応募書類様式1中「6.調査・研究の実施の方針と項目、方法、そのスケジュール」に記載された内容が明快ではないために、他の案件との比較で優位であるか否かが判断することができず、優位とはならなかったものがありました。
第三に、既往の同種同様な調査・研究がなかったもの、あるいは、既往の調査・研究結果から新たな展望を開くものであるかどうか、といった新規性あるいは展開可能性がある、と判断できること。なお、複数のほぼ同様な趣旨での調査・研究の応募も寄せられ、これらに対しては、上述の第一及び第二の評価基準にも照らして総合的に判断しました。
(2)普及事業助成
本助成事業の対象として優位に評価できるか否かを概ね以下のような点から評価するとともに、助成対象事業の分野間のバランスにも一定の配慮を行い、助成対象案件を決定しました。
第一に、普及活動を通じて広めようとする事柄が、建築技術者が体得すべき建築実務面で有用な知見である、もしくは、国民の建築技術者への理解や信頼を深めるものであると判断できること。なお、有用な知見には、建築技術に限らず、倫理、社会貢献といった建築技術者の姿勢に関わるものも評価しました。
第二に、講演会などを企画・実施する方法や体制、行程が明確で、実行可能なものであり、期待する効果が発揮できうる、と判断できること。なお、実施主体の大小や、事業規模に占める助成対象費の大小は評価に当たり、優劣はつけないこととしました。応募案件のなかには、応募書類様式1中「6.事業の実施の方針と項目、方法、そのスケジュール」に記載された内容が具体的となっていないために、他の案件との比較で優位であるか否かが判断することができず、採択を見送ったものがありました。
第三に、申請者が例年実施している事業と判断されるものや、申請者の本来事業であると考えられるものについては、相対的に優先度は落ちるものと判断しましたが、内容や方法に意欲的で新たな試みがなされようとしていると思われ、あるいは同種同様なものであっても節目として次年度以降は新たな段階に入ろうとしている、といった新規性あるいは展開可能性がある、と判断できるものは例外的に扱いました。また、応募時の様式に例示はなかったが、講習会等に用いるテキストを作成するもので、その内容が普及すべきものと評価された案件については、普及事業においても採択できるものと判断しました。なお、複数のほぼ同様な趣旨や形式での普及事業の応募が寄せられたテーマがありましたが、これらに対しては、上述の第一及び第二の評価基準にも照らして総合的に判断しました。
以上、講評といたします。