令和5年度 建築技術の調査研究又は普及活動を応援する助成の決定について
4月から5月にかけて公募した標記の助成について、数多くの申請をお寄せいただきありがとうございました。このたび、下記の通り助成対象を決定いたしましたのでお知らせいたします。
審査経過
助成対象の選考に当たっては、審査委員会を設けて慎重に審査を行い、その審査結果を踏まえて助成対象を決定いたしました。
建築技術の調査研究又は普及活動を応援する助成審査委員会(敬称略 五十音順)
委員長 水流 潤太郎 (長岡市米百俵財団)
委 員 五十子 幸樹 (東北大学)
委 員 大橋 好光 (東京都市大学)
委 員 澤地 孝男 (国立研究開発法人建築研究所)
委 員 萩原 一郎 (東京理科大学)
委 員 林田 康孝 (建築技術教育普及センター)
委 員 松田 雄二 (東京大学大学院)
委 員 若山 尚之 (千葉工業大学)
講評
建築技術の調査研究又は普及活動を応援する助成審査委員会
(公財)建築技術教育普及センター
本助成制度は、建築技術の教育普及が一層促進されることを目的として、平成22年度に実質的に開始されたもので、今年度で14年目を迎えます。今年度も、幅広い活動内容に関して多くの意欲的な応募をいただきました。本制度の活用により、建築技術の教育普及が一層促進されることが期待されます。
審査に当たっては、以下に記載する観点から各審査委員間で議論を進め、評価を実施しました。
評価基準
調査・研究、普及活動を区別せず募集を行い、以下の評価基準の観点等を中心に審議し、審査を行いました。
- 調査・研究が目指そうとしている成果により、建築技術者の啓発や資質の向上が図られること、国民の建築技術者への理解や信頼を深めることが期待できること、または、建築実務、教育制度のあり方等を提案しようとするものであること。
- 調査・研究の実施方法や体制・行程が明確で実行可能なものであり、掲げた調査・研究の目標を達成しうると判断できること。
- 調査・研究の目的や内容に新規性、独自性が高く、今後の展開の可能性があると判断できること。
- 普及活動を通じて広めようとする内容が、建築技術者が体得すべき建築実務面で有用な知見である、若しくは、国民の建築技術者への理解や信頼を深めるものであると判断できること。
- 講演会などを企画・実施する方法や体制・工程が明確で、実行可能なものであり、期待する効果が発揮できると判断できること。
- これまで毎年問題なく実施している等、申請者の本来の活動として行うべきと考えられるものではないこと。
審査委員会による審査を踏まえて、5件を助成の対象として決定しました。
なお、継続的な応募案件については、これまでの成果や採択継続の必要性について議論を行ったうえで、評価基準(募集案内に掲載)に照らして、選考・決定しました。
助成対象として決定された案件及び案件ごとの選評は、下記の一覧表に掲載しているとおりです。
助成対象案件
助成対象案件(令和5年度分)5件 〔受付順〕
名 称 | 実施者 | 選 評 |
---|---|---|
洋風木造建築に用いられる木造軸組架構の耐震性能評価法の検証 | 宮本 慎宏 (香川大学創造工学部・准教授) |
歴史的な洋風建築物における木造軸組架構の耐震性能を正確に評価できれば、意匠の保全に配慮した適正な耐震改修設計に繋がると考えられる。 検証結果が広く公開されることにより、多くの歴史的な洋風建築物の保存促進に寄与することを期待したい。 |
執務者への建築設備情報提供による快適性・省エネ行動促進に関する調査研究 | 金 政秀 (武蔵野大学工学部建築デザイン学科・教授) |
オフィスビルの建築設備への理解度を高め、省エネルギーに繋がる行動変容を促そうとするもので、設備管理者ではなく、オフィス執務者(利用者)に焦点を当てていることは、新しい視点と思われる。建築物の使い方をコンテンツ化及び動画配信することにより多くの建築技術者に享受されるとともに、省エネの推進に向けた具体的な方策としての効果を期待したい。 |
オフグリッド住宅の性能および居住者評価からみたエンヴァイロンメント・デザイン手法に関する研究 | 脇坂 圭一 (静岡理工科大学理工学部建築学科・教授) |
環境性能設計技術と空間意匠設計技術とを統合したレクチャーブックの作成及びその内容について講師による講演をウェブ発信するものである。建築設計教育と設計実務の両面において、最先端の省エネ住宅を追求することに役立つものとなることを期待したい。 |
災害時の生活行為を想定した避難所照明環境に関する調査研究 | 大江 由起 (滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科・講師) |
避難所での生活には様々なストレスが伴い、睡眠の妨げとなる可能性がある照明環境もその1つである。これまでほとんど検討されてこなかった調査研究であり、その成果が、避難所における照明環境の改善に役立つ設計ガイドラインへ繋がることを期待したい。 |
豊かな団地環境を活かしたアフォーダブルな住戸リノベーションの普及促進 | アフォーダブル団地リノベ研究会 長尾 亜子 |
長期経年化した大規模分譲団地(バスが主な交通機関であるもの)における維持管理は社会的な課題となっており、管理組合と個々の組合員(居住者)・建築技術者とが団地再生方針を共有のうえ、団地全体の運営と個別住戸のリノベーションを整合させながら進めていくことは有効な方策と考えられる。今回の見学会を録画した動画を配信することにより、広く社会に普及促進されることを期待したい。 |