本書は,平成 27 年 4 月に刊行した「HEAT20 設計ガイドブック」の増補版的な位置づけで刊行されました。つまり,最初の出版からわずか 1 年半後に,新しい情報と内容のガイドブックが追加出版されたわけです。このことは,住宅の断熱や省エネの分野がいま大きな盛り上がりを迎えていることを感じさせますが,私には,以下の二つのことが結実した結果であると思えてなりません。
一番目は,現行の断熱基準(平成 25 年の断熱基準)に関係したことです。(中略)住宅や建材の関係者にとっては,現行の断熱基準がもはや陳腐なものとなり,目標とはならなくなってしまったのです。そのために,現行基準よりかなり高いレベルの断熱基準として提示された本ガイドブックの二つの基準(G1 基準と G2 基準)が,関係者には新たな目標として認識され,大きな反響を巻き起こしたのです。
二番目は,ZEH(ゼロエネルギー住宅)の話題性と経済性です。(中略)この ZEH を設計・建設するにあたって,断熱の目標値として使用できるのが本ガイドブックの二つの基準なのです。ZEH 化するには,まず現行の断熱基準より高いレベルで断熱することが必須です。これによって暖房負荷を大きく減じ,一次エネルギー消費量を削減します。
そうすれば,あとは ZEH になるように,太陽光パネルの容量や給湯機などの効率を決定すればよいのです。
以上のように,住宅,建材,設備機器,エネルギーなどに携わっている関係者,そして住宅を求める消費者にとって,本ガイドブックの基準や情報は非常に有用なものなのです。
欧米などでは,民間の関係団体が中心となり,自らの技術開発の目標とする,国民の関心を高めるため,国の制度・基準とは一線を画して,「望ましい姿」を民間主導で提案する取組みが盛んに行われています。そして,それらの先導的な活動が足元の技術力を引き上げ,新たな技術革新を生み出しています。日本でもこれらと同じ取組みを......という想いから,2009 年,有識者・民間から構成される「2020 年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会(HEAT20)」がスタートいたしました。
下図は,活動を開始した 2 年後の 2011 年 2 月下旬,東京で開催された HEAT20 報告会で,「HEAT20 が目指す外皮性能の目標像」として筆者が説明に使用したものです。当時,集まられた方々にどの程度の反響があったかは定かではありませんが,「HEAT20」においてこの考え方は今も変わらず検討を進めてきました。それは,住宅生産者,住まい手に対して,単に省エネ対策のツールとしてではなく,室内環境性能の向上に大きな効果をもたらす「外皮性能(断熱・遮熱・通風・採光など)の向上」の重要性と必要性を理解していただくために,室温という最もわかりやすい指標を用いて,エネルギー性能やコストとのバランスのなかで目指すべき水準を示していくべきという考え方です。
(中略)
「HEAT20 設計ガイドブック+ PLUS」は,これらの成果に合わせ,これまで HEAT20 委員会で検討してきた成果のうち「設計 GB(2015)」では掲載していない情報を中心にまとめたものです。
1 〜 7 地域の「HEAT20 G1・G2 水準」を示し、NEB(住宅内温度環境)と EB(エネルギー性能)の観点から G1・G2 水準が想定する住宅シナリオを紹介します。そのうえで、高性能外皮の住宅設計情報に関して解説しています。
1 〜 7 地域の「HEAT20 G1・G2 水準」を示し、NEB(住宅内温度環境)と EB(エネルギー性能)の観点から G1・G2 水準が想定する住宅シナリオを紹介します。そのうえで、高性能外皮の住宅設計情報に関して解説しています。