5時から作家塾

応募結果発表

第 5 回 (締め切り/2001年8月20日)
総評
第5回の企画書は、全体的に粒ぞろいというか、第1回に次ぐレベルであった。とくに構成や目次に関しては、熟考されているものが多かった。その反面、タイトルやサブタイトルに安直なものが目立った。やはり、タイトルに"引き"があると応募者にセンスが感じられるだけに、中身だけでなく外見も大事にして欲しい。
また、いい企画書であればあるほど、審査を行う過程で、もっと知りたいことが出てくる。それは何か? 応募者の職業経験を始めとする"その人ならでは"を感じさせる情報である。年齢や職業、著者の立場だけでは語り切れないことも、積極的にアピールしてもらうに越したことはない。
また、出版社にも企画が認められ(面談もクリアして)、いざ書き始めたはいいがそれからが......、と編集者が匙を投げざるを得ないケースも出て来ている。ひとつは、忙しくて筆が進まないという(今更ながらの)不届きなケース。或いは、いい企画なのだが筆力が足りなくて断念、なんてこともある。「出版社内で企画が通れば、何が何でも書き上げる(脱稿する)」という意志が必要だ。その粘りや根性も著者としての才能のうちである。企画書通過は、あくまでも第一歩であると心得られたい。

『カップル喫茶に行こう』
ペンネーム エロ子
寸 評 第4回に引き続き、同じテーマでの応募。前回に比べ、実例に関するページが増え、目次案も詳しくかつ具体的である。私自身のサブカル好きも手伝って、「確かに面白そう!」というのが、率直な感想である。
エロ子嬢?は20代半ばということだが、著者の立場には「IT戦略部門に携わっている」「実は小料理屋の女将もしてみたい」「天職はイメクラ嬢」といった言葉が並んであおり、「いったいどんな人?」「なんでそんなに詳しいの?」というのも確か。
あとは具体的なネタと筆力次第だが、内容が内容だけに、ここは一旦部分的にでも原稿を用意してもらおうと考えている――文章力次第では妄想が湧くどころではないし、文体によっても解説文になってしまったりするからなぁ。【吉田 克己】
『国語は勉強しても成績が上がらない?』
ペンネーム 吉川一世
寸 評 国語ほど社会に出て役に立つ教科はない――という吉川さんは、自ら小中校生向けに国語の実践教育を手掛けてきた。国語が不得手な子どもを持つ親としての試行錯誤、自ら手掛ける国語教室の主宰者としての実績と経験から生み出されるコンテンツは、多くの読者の共感と納得を得ることだろう。
著者のホームページをご覧いただくとわかるが、たいへん精力的に、興味深い活動をされていることがわかる。私もこうしたところで、しっかりと国語を勉強しておけば、その後の人生がどれだけ豊かになっただろうかと、後悔させられた。このように、本企画の内容的裏付け、バックグラウンドは申し分ない。
しかし、大ベストセラー『日本語練習帳』(大野晋著/岩波書店)以来、類書が数多く市場に出て、いくらか飽和気味であるという現実もある(オンライン書店サイトで、「日本語」「練習」というキーワードで検索してみると、多くの本が刊行されていることがわかる)。そういう点では、内容が魅力的であっても、この時期(さらに出版不況も重なっている)の商業出版として成立することは困難であると思われる。
こうした状況のなか、出版に向けての突破口を探ると、やはり、吉川さん自身の執筆原稿如何ということになるだろう。何章分か原稿を執筆してしまうのである。本格的に国語教育を始動させてから一年半余であることを考えると、まだ、教育手法や話材という点で整理できていない、あるいは、不足しているところも多分にあるかと思う。次回は、ぜひ、その原稿を元に審査・検討させていただきたい。【盛池 雄歩】
『一"書く"千金! コピー公募[必賞]マニュアル』
ペンネーム コピー楽勝委員会
アドバイス タイトルも工夫とユーモアを注入し、インパクトのある内容になっている。
自費出版と商業出版の違いのひとつに、「実例」「具体性」の差が挙げられる。一般の人が出版企画書・本文を書くときに最も陥りやすい部分でもあるが、まず「実例」「具体性」があればあるほど、客観的なTASTEになり、そこに、著者の切り口をSPICEとして入れれば、醍醐味のあるメニューになる、というわけだ。
次にそれとリンクすることであるが、「マニュアルからの卒業」である。これは出版・文章の世界のみならず、芸術・音楽・スポーツの世界についてもいえることであるが、「自分で作ったマニュアルは自分しか使えない」ということだ。例えば、竹村健一も、秋元康も、中谷彰宏もイチローも、松井秀喜も、全部自己流のTASTE・ノウハウを持っている。しかし、これらの黄金律(ゴールデンルール)が使えるのは全て自分オンリー。
つまり、コピーはこう書くんだ、というノウハウ書ではなく、むしろ、KHさんのORIGINAL TASTEを出しつつも、実例を具体的に挙げるようにして、寸評していく......、こういう本は出版社のみならず、読者にも歓迎されるし、売れるファクターになっているのだ。
前回の企画書よりはかなり具体的になっているが、多少、遠慮がある。隠し味は出してこそ、意味あるもの。隠しているだけでは「味」にならない。客観的分析と著者の個性がもっとあっても良かった気がする。【塾長:唐沢 明】
『ダイエットの秘密』
ペンネーム KT
アドバイス 企画書を要約すると、具体的なダイエット法を実践する前に、ダイエットが失敗する理由や上手くいくときの条件を、心理学的アプローチや栄養学、果ては性学?までも援用し、その人に最も向いたダイエット法を見つけてもらうための本である。要は、具体的なひとつのダイエット法(ex.世によくある眉唾な方法)を解説するものではない。
企画意図や目次案がしっかりしていることは勿論のこと、著者の経歴(加工食品の開発者、食糧関連の公務員)や、現在 AllAbout Japan のガイドを務めていることなど、かなりの説得力を感じた。
課題になるとすれば、ダイエット法そのものについては、大半の女性が対象読者になり得ると言ってもいいくらいなのに対し、その前段となると果たしてどれくらいの女性が読む(勉強する)気になるか? そこまで真剣になっている(ならざるを得ない)女性がどれくらいいるのか? という点だろう――男が読んでも面白そう(タメになりそう)ではあるが。
敢えて企画書のなかのマイナス点を挙げるとすれば、「ダイエットの秘密」というタイトルは、あまりにも安直である。既刊本のタイトルを応用するだけでも、「やせられる人、やせられない人」「勝ちパターンのダイエット」「ダイエット力」といったタイトルが浮かぶ。
総じて、次点とは言え、次のステップに進めてよい企画書である。【吉田 克己】

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