代表あいさつ
「味覚の一週間」の取り組みがフランスと日本で行われることは、両国の食文化の豊かさを思えば当然のことに思えます。味の良さ、調理の技術、創造性、食のバラエティ、伝統...どれをとっても日仏の優劣はつけがたいでしょう。
しかし、少し違うことがあります。それは、食材、食事、サービスなどが単に美味しい、良いと済ませるのではなく、フランスでは、それを人に伝えます。つまりおしゃべりをします。この食材の組み合わせのどこがおもしろい、この調理法の何が新しい、あそこのレストランとここでは、同じ料理名なのに味の違いが、季節が違うと、どう味が異なる...。
フランス人の分析と評論は際限がありません。食事のテーブルではメニューを見ながら、注文までに平気で3,40分かかります。それは好き嫌いを言っているのではありません。今日のこの時にこの人と、どんな味を一緒に味わいたいかに真剣なだけなのです。そうした味覚の違いがわかる感性と、それを表現する言語能力は、子供のときに身につくのだと、フランス人は考えたのです。そこで、「味覚の授業」という運動が起こりました。
「味覚の授業」は4つの味の基本を、舌で味わい、頭で感じ、口に出してその感覚を言い合います。子供の嫌いな「苦味」を「味覚の授業」で覚えたことにより、「苦味」と「甘味」はそれぞれ味のひとつであるということが理解でき、苦いものも、「苦いから嫌い」なのではなく、「これが苦味だよ」と言いながら、食べられるようになったという、親の話を聞きました。
日本には5つめの味、「うまみ」があります。「うまみ」を取りだして、教えていくことによって、日本の食の奥深さを子供たちに伝えていくことができるでしょう。
こうした味覚の教育の活動はこれまでも各方面でなされていましたが、この度、フランスの「味覚の一週間」と連携して、大きな力として、日本の子供たちの味覚と感性をゆたかにしていきたいと思います。
まさに、ゆたかなこころは、ゆたかな味覚から生まれるのではないでしょうか。
「味覚の一週間」実行委員会
実行委員長 瀬古篤子
「味覚の一週間」呼びかけ人 *敬称略、順不同
故・磯村 尚徳(いそむら ひさのり)
日仏メディア交流協会会長、パリ日本文化会館初代館長、元NHK報道局長
略歴
1929年、東京生まれ。
学習院大学を卒業し、日本放送協会(NHK)に入局。
インドシナ、中東、パリ特派員(1958〜62年)を経て、ワシントン支局長(1965〜71年)本部外信部長(1971年)を歴任。
1974年からは、報道局副主幹として"ニュースセンター9時"の編集長兼キャスターを務め、現在の報道番組の原型を作り、"ミスターNHK"と呼ばれ、一世を風靡した。
その後、欧州総局長、報道局長、専務理事待遇特別主幹などを勤めた。
1991年にNHKを退社後は、1995年パリ日本文化会館初代館長に就任(1995〜2005年)。また、ユネスコ事務総長特別顧問など、多くの要職を務めるとともに、日欧関係の団体で、日本とヨーロッパの架け橋として活躍している。
1975年には"テレビ大賞"、1977年"日本記者クラブ賞"、1996年フランス大統領より、"レジオン・ドヌール勲章オフィシエ賞"、2000年フランス"芸術文化勲章コマンドウール賞"、平成23年春の叙勲で"旭日中綬章"などを受賞。
著書に、"ちょっとキザですが"シリーズ 講談社など多数。
2023年12月永眠
三國 清三(みくに きよみ)
「オテル・ドゥ・ミクニ」 オーナーシェフ
略歴
札幌グランドホテル、帝国ホテルで修業後、駐スイス日本大使館料理長。大使館勤務の傍ら、フレディ・ジラルデ氏に師事する。その後も、トロワグロ、オーベルジュ・ドュ・リル、ロアジス、アラン・シャペル等の三つ星レストランにて修業を重ね、1983年に帰国。ビストロ・サカナザのシェフを経て、1985年東京・四ツ谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」をオープンする。世界各地でミクニフェスティバルを開催するなど、国際的にも活躍。2000年には九州沖縄サミット・福岡蔵相会合の総料理長を務める。
2004年10月『ニューズウィーク日本版』2004年10月20日号「世界が尊敬する日本人100 Japanese」の1人に選出。2007年10月 厚生労働省より、卓越した技能を持つ『現代の名工』を受章。2010年2月外食産業記者会より「第6回外食アワード特別賞」を受賞。2010年7月 フランス共和国農事功労章 オフィシエを受勲。
藤野 真紀子(ふじの まきこ)
料理研究家
略歴
1972年、聖心女子大学文学部(フランス史)卒業後、夫の赴任先であるニューヨークへ。『コルドン・ローズベーキングスクール』にてアメリカンベーキングを学び、帰国後「ELLE JAPON」等の雑誌にて料理・お菓子のページを手掛け始める。1987年に渡仏。「エコール・リッツ・エスコフィエ」でお菓子とお料理を学び、ディプロマを取得。1992年に帰国した後、お菓子と料理の教室「マキコフーズ・ステュディオ」を主宰。2005年から4年間は、衆議院議員として活躍。
近年は、「みんなのお弁党」の党首に就任し、お弁当を通した食育活動に携わるなど食育活動に力を注ぐ。2011年9月からは、週一回保育園で子供たちに食育授業をスタートするほか、有機栽培の米から藤野眞紀子ブランドの米粉『ココレコルト』を2年前から商品化、日本の米消費拡大支援活動もスタートした。
主な著書
『”食育”調理技術の基礎ーShoku-iku & Cookingー』
(NPO 日本食育インストラクター協会 理事長・医学博士 服部幸應先生「食育」ページ監修)マキコフーズ・ステュディオ
『私のパリノート』大和書房
『エレガントに暮らす』ネスコ/文藝春秋
福田 順彦(ふくだ のぶひこ)
セルリアンタワー東急ホテル 名誉総料理長|東急グループ 総料理長
略歴
2001年セルリアンタワー東急ホテル開業時に総料理長に就任。以来、ホテルの食に関する総合プロデューサー役として料飲部門を牽引する。豊かな感性によって生み出される料理は情熱的で、常にチャレンジ精神にあふれている。「文化交流」をテーマに、料理と文化、音楽、ワインなどとの数多のコラボレーションを実現。
その一方で、子どもの「食の自立」と「五感の育成」を促す食育活動にも積極的に取り組んでいる。
フランス農事功労章協会(MOMAJ)会長、一般社団法人日本エスコフィエ協会 名誉会長、一般社団法人日本食文化会議 顧問などの要職に就き、食を通じた精力的なメッセージの発信を続けている。
2018年 フランス共和国政府より 「農事功労章オフィシエ」受章
2025年 フランス共和国大統領より「フランス共和国 国家功労勲章シュヴァリエ」受章
柳原 尚之(やなぎはら なおゆき)
近茶流「柳原料理教室」主宰
略歴
東京農業大学卒業。
近茶流宗家として、東京・赤坂の柳原料理教室で日本料理、茶懐石の研究指導にあたる。
2015年文化庁文化交流使、2018年農林水産省日本食普及の親善大使に任命され、世界へ日本料理を広める活動を行う。
2022年3月東京農業大学大学院農学研究科醸造学専攻後期博士課程修了、博士(醸造学)を授与される。
ライフワークは江戸時代の食文化の研究と継承、そして子ども向けの和食料理本の執筆や講義を通した子どもへの食育。
主な著書
『江戸から伝わる味をたずねて』(池田書店)
『世界一美味しいご飯をわが家で炊く』(青春新書インテリジェンス)
『「包む」「巻く」「結ぶ」で美しく 和のおもてなし料理』(池田書店)
『はじめての和食えほん』(文溪堂) 他多数
服部 吉彦(はっとり よしひこ)
学校法人服部学園 理事長|服部栄養専門学校 校長
略歴
食育の第一人者、故・服部幸應氏の長男として、1997年より服部栄養専門学校に参画。時代の変化に沿ったブランディングや産学連携を掲げ、広報部、韓国事務局、HATTORI食育クラブ、HATTORIギルドなどを創設する。
また韓国の給食事業アドバイザリー、ウズベキスタンでの和食普及などの海外での活動のほか、オーガニック農家と協力して規格外野菜の活用による食品ロス削減などにも積極的に取り組む。
特定非営利活動法人日本食育インストラクター協会 理事長、一般社団法人 全国料理学校協会理事、一般社団法人専門学校コンソーシアムTokyo業務執行理事(副会長)、公益社団法人東京都専修学校各種学校協会 理事、一般社団法人日本病院調理師協会 認定委員、東日本料理学校協会 副会長、渋谷区専修学校各種学校協会 会長などを務め、幅広く活躍。