核情報

2015. 7.29

日米団体、オバマ大統領に被爆地訪問要請
──核なき世界に向けた行動の発表を

米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」ほか著名な団体代表および個人(計12名)が7月10日にオバマ大統領に対し、今年の広島・長崎原爆記念日に両地を訪れ、核が二度と使われないようにしなければならないとの考えを再度表明すると共に、任期終了までに米国が取る具体的な措置について発表するよう呼びかける書簡を送付したのを受け、原水禁と原子力資料情報室は同13日、UCSの要請を支持するとの書簡を大統領に送付しました。日本側の書簡は、さらに、日本の団体として、唯一の役割(目的)政策等に反対しないように日本政府に要請すると約束すると共に、大統領に対して、

  1. プルトニウム及び高濃縮ウランをこれ以上蓄積しないように世界各国に呼びかけること、
  2. 既存の軍事用余剰・民生用プルトニウムの処分方法の開発のために日本政府その他と協力し合うプログラムを開始すること

を要請しました。

参考

長崎新聞2015年7月14日記事

長崎新聞2015年7月14日記事


生物・化学兵器及び通常兵器による攻撃を抑止するために、これらによる攻撃に対して米国が核兵器で報復する可能性を示すことによって威嚇して欲しいというのが1982年以来、日本政府が表明してきた立場です。核兵器の唯一の役割は核攻撃を抑止することだとの政策を米国がとると、日本の安全保障に不安を感じた日本が核武装するのではないかとの懸念が米国側にあります。日本は2014年末現在約48トン(核兵器6000発分)ものプルトニウムを持ちながら、使い道のないまま、青森県六ヶ所村の使用済み燃料再処理工場を来年春にも完成させ、さらなるプルトニウム分離を開始しようとしています。大統領は核物質の最小化を呼びかけています。日本側の書簡は、このような日本の政策を変えれば、大統領にとって核なき世界に向けた行動が取りやすくなることを示しています。そして、それは、大統領の被爆地訪問実現の準備ともなります。

[

The Honorable Barack Obama
President of the United States of America
The White House
Washington DC 20500
United States of America

大統領様

私たちは、広島・長崎の被曝70周年を記念するために日本に行かれるよう要請します。そうすればあなたはこれらの歴史的な場所を訪れる最初の米国大統領となります。

この訪問は、核兵器は二度と使われてはならないということを世界に想起させるまたとない機会を提供することになるでしょう。そして、2009年4月のプラハ演説のフォローアップの機会にもなるでしょう。あの演説において、大統領は、米国には、冷戦的思考に終止符を打ち、核兵器の役割を減らし、そして、最終的には核兵器のない世界の平和と安全保障を達成する上で世界の国々の先頭に立って「行動する道義的責任」があると述べられました。

ですから、私たちは、記念スピーチという機会を使って、核兵器が人類に対して与え続けている脅威を減らすために大統領の任期終了までに米国が取る具体的な措置を発表されるよう要請します。

これらの措置のなかには、たとえば、米国の地上配備の核兵器を高度な準備態勢からはずし、それにより、攻撃が起きているとの警報の段階でこれらのミサイルを発射するオプションをなくしてしまうこと、米国の核兵器の唯一の役割(目的)は米国及びその同盟国に対する核攻撃の抑止にあると宣言すること、あるいは、大統領の2013年6月のベルリンでのスピーチで表明されたように1000~1100発のレベルに米国の配備戦略核の数を独自に削減することなどが含まれ得るでしょう。

これらのどの措置も、大統領がプラハで表明されたゴールに今もコミットしていることを世界に訴える強力なメッセージとなるでしょう。

大統領、私たちはあなたに期待しています。私たちの子供たちもあなたの子供たちもあなたに期待しています。世界があなたに期待しています。

敬具

Angela Canterbury
アンジェラ・カンターベリー
Executive Director, Council for a Livable World/Center for Arms Control & Nonproliferation
生きられる世界のための協議会/軍備管理・核不拡散センター 事務局長
Jay Coghlan
ジェイ・コグラン
Executive Director, Nuclear Watch New Mexico
ニューメキシコ・ニュークリア・ウォッチ 事務局長
Lisbeth Gronlund
リズベス・グロンランド
Co-Director, Senior Scientist, Global Security Program, Union of Concerned Scientists
憂慮する科学者同盟世界安全保障プログラウム 共同ディレクター(上級科学者)
Morton H. Halperin
モートン・H・パルパリン
Former Director of Policy Planning, Department of State (1998-2001)
元国務省政策企画本部長((1998-2001)
William D. Hartung
ウイリアム・D・ハータング
Director, Arms and Security Project, Center for International Policy
国際政策センター軍備・安全保障プロジェクト・ディレクター
Marylia Kelly
メリリア・ケリー
Executive Director, Tri-Valley CARES
トライバレーCARES 事務局長
David Krieger
デイビッド・クリーガー
President, Nuclear Age Peace Foundation
核時代平和財団 所長
Peter Kuznick
ピーター・カズニック
Director, American University's Nuclear Studies Institute
アメリカン大学核問題研究所 所長
Kevin Martin
ケビン・マーティン
Executive Director, Peace Action
ピース・アクション 事務局長
Jon Rainwater
ジョン・レインウォーター
Executive Director, Peace Action West
ピース・アクション・ウェスト 事務局長
Susan Shaer
スーザン・シャエル
Executive Director, Women's Action for New Directions
新しい方向のための女性行動 事務局長
Catherine Thomasson
キャサリン・トマソン
MD, Executive Director, Physicians for Social Responsibility
社会的責任のための医師 事務局長(医学博士)

連絡先:Lisbeth Gronlund, UCS, 2 Brattle Square, Cambridge, MA 02138


AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /