核情報

2012. 9.23

用途のないプルトニウム製造を続ける「エネルギー戦略」
問われる日本の反核運動の役割

政府は、9月14日、「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指すと同時に、再処理政策を継続するという「革新的エネルギー・環境戦略」(pdf)を決定しました。日本はすでに、長崎型原爆5000発分以上のプルトニウムを持っています。原発をゼロにするとしながら、さらにプルトニウムを増やす政策は、世界の懸念と疑惑を呼びます。


  1. 高速増殖炉の「夢」の後に残る核拡散・テロの悪夢
  2. 再処理政策継続の理由と実質的モラトリアム
  3. 使用済み燃料の置き場問題解決は乾式貯蔵
  4. 参考



高速増殖炉の「夢」の後に残る核拡散・テロの悪夢

再処理の元々の目的は、使用した以上のプルトニウムを作る「夢の原子炉」に初期装荷燃料を提供することでした。希少なウランを「有効活用」するためのはずでしたが、ウランの埋蔵量は予想を上回り、原発の成長は予想を遙かに下回る一方、「夢の炉」の実現は遠ざかり続けました。国内外の再処理で蓄積してしまったプルトニウムを無理矢理普通の原子炉で燃やそうと導入されたプルサーマル計画も遅々として進まないまま起きた福島事故。現在運転中の原子炉は2基。消費しようのないプルトニウムを分離し続ける方針は、後は野となれ山となれといっているようです。

韓国は、2014年3月に期限切れとなる韓米原子力協力協定の改定交渉で、日本と同じ再処理の権利を認めるよう米国に求めています。日本が再処理政策を続行すると、米国にとって韓国の要求を拒否するのが難しくなります。受け入れれば、「南と北は核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しない」との1992年南北非核化共同宣言(仮調印1991年)に基づく北朝鮮の核問題の解決の可能性も縮小します。また、韓国が再処理政策をとり、他の国もこれに倣えば、核拡散の危険が高まります。

再処理政策継続の理由と実質的モラトリアム

2005年原子力政策大綱策定でも、今回も、再処理政策続行とした決め手は、使用済み燃料の置き場の問題です。各地の原発の使用済み燃料プールが満杯になりつつあり、六ヶ所工場の横にある受け入れプールもほぼ満杯で、空きを作るためには、使用済み燃料を工場に送り込むしかないというのです。

また、六ヶ所村や青森県は、再処理をしないなら使用済み燃料を各地の原発に送り返す、英仏からの返還廃棄物も受け入れない、と主張しています。本格操業となれば多額の固定資産税が入ってきますが、無用の施設となればそれが消えてしまいます。核施設関連の税収・交付金・寄付金に頼り切ってきた県内の他の市町村も県も、従来通りの原子力・再処理推進政策の維持を求める大合唱をしています。約束を守ってくれないと財政的に困る。また、これまでの村民や県民への説明がウソだったとなり、メンツが潰れる。しかし、約束が違うからといって、無用かつ危険な物質の生産を迫るのは理にかないません。交渉なしで返送となれば交付金や核燃料税が途絶え、新しい村作りの協力も得られなくなります。政府は、「引き続き従来の方針に従い再処理事業に取り組みながら、今後、政府として青森県をはじめとする関係自治体や国際社会とコミュニケーション」を図ると当座逃れの約束をしています。再処理事業を止めて議論するのが筋ですが、実質的には再処理はモラトリアム状態にあります。試運転で生じた高レベル廃棄のガラス固化が上手く行っておらず、少なくとも後1年余り、実際の運転はできないからです。この間に、なんとしても、再処理政策の完全放棄の道筋を作るようにしなければなりません。

使用済み燃料の置き場問題解決は乾式貯蔵

福島第一の4号機の例が示した通り、プールに詰め込んで保管する方法だと冷却水喪失により大事故となる危険性があります。自然対流による空冷式乾式貯蔵施設を各地の原子力発電所につくり、炉から取り出し後5年以上経って温度の下がった燃料をそこに移して、プールに余裕を持たせる必要があります。再処理中止・脱原子力を決めたドイツもこの方法を採用しています。施設の建設が間に合わない原発では、1−2ヶ月で建設可能な暫定貯蔵施設(5年間利用可)の建設を認めました。1.5−2年後に本格的貯蔵施設に移すことを前提とした措置です。暫定施設から本格施設への移動はすでに完了しているとのことです。

現在世界に存在する分離済みプルトニウムの量は500トンで、民生用と軍事用がほぼ同量の250トンずつです。核軍縮を進めて、約2万発ある世界の核兵器の総数が1000発となると、1発当たり4キログラムとして、総量は4トンとなります。核兵器利用可能な民生用プルトニウムが増え続けていたのでは、核兵器国は、自国の軍事用余剰プルトニウムの処分を拒むかもしれません。民生用プルトニウムの増加は、核拡散防止、核テロ防止の努力の障害にもなります。日本は、不要なプルトニウムを増やすことにではなく、使用済み燃料と一緒に埋設するなどのプルトニウム処分方法の共同開発にこそ力を注ぐべきです。

参考

民主党政策

『我が国のプルトニウム管理状況』(pdf) 原子力委員会
  • 世界の核分裂性物質の量と民生用再処理 核情報
  • 韓国の再処理と日本の再処理政策 核情報
  • 惰性で続くか核兵器利用可能物質プルトニウムのさらなる生産 核情報 [
  • 原発利益誘導によってゆがめられた地方財政(pdf)
    「全国市民オンブズマン連絡会議」 [

    表 4は、原発立地市町村及び再処理工場等のいわゆる核燃サイクル基地が所在する六ヶ所村の歳入及び原発関連収入を示したものである。

    ほとんどの原発立地市町村では、固定資産税収入の歳入総額に占める比率が一般の市町村を大幅に上回っており、原発施設からの収入が原因と思われる。

    表 5は、歳入及び歳出の人口一人あたり額を原発立地市町村と全国の市町村とで比較したものである。立地市町村によってばらつきがあるものの、全般的に見て、固定資産税と寄附金収入が大きく、一人あたり歳出額もふくらんでいることがわかる。このようにして、一旦、原発マネーに浸かってしまうと薬物依存のように原発依存体質となり、地方自治が蝕まれてゆく。

    核燃料サイクル見直し」に揺れる六ヶ所村(出井康博) 2011年08月24日 フォーサイト [

    村の年間予算の半分近い60億円は、再処理工場と関係する税収である。工場が稼働すれば、さらに年10億円を超す固定資産税も村に入る。通常の小さな自治体では考えられないほどの収入だ。

  • 核燃税の税収見込み2年で312億円 (2011年11月23日) デーリー東北

    2012年4月以降の「核燃料物質等取扱税(核燃税)」について、青森県は22日、使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の税率を現状のままとし、その他の核燃料サイクル施設、東北電力東通原発1号機(東通村)の税率を最大1・25倍にする更新案を明らかにした。国の原子力政策の行方が不透明なことから、適用期間は暫定的に2年間とし、建設段階にある施設は除外。2年間の税収は約312億円を見込み、直近の約307億円とほぼ同規模となる。・・・

    今回の更新案で、再処理工場の税率は変わらないものの、特例で10年1月から貯蔵分の使用済み核燃料に課している、従来の6倍超の税率は維持する。

    一方、現在、核燃料に12%を課税している東北電東通原発は13%とし、新たに原子炉の熱出力も加味。合わせて税率は15%相当、現在の1・25倍となる。

    再処理工場以外のサイクル施設では、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設施設、高レベル廃棄物一時貯蔵施設の税率を1・16倍にする。・・・

    12年度以降の2年間の税収見込みは、再処理工場240億6千万円、東北電東通原発16億4千万円、廃棄物埋設27億2千万円、廃棄物管理25億1千万円、ウラン濃縮2億2千万円。・・・

    [六ヶ所村の]施設建設が始まった八八年度から二〇一〇年度までの電源交付金は、計約三百億円。日本原燃から村に入る固定資産税は一〇年度で五十七億円と村予算の半分近い。関連企業の固定資産税も入る。

    村は県内で唯一の地方交付税の不交付団体。村民一人当たり平均所得は県内トップクラスだ。日本原燃などで働く人たちが買い物などで村に落とす金も大きい。

  • 電源交付金 青森県内11年度は過去最高 (2012年05月31日) デーリー東北

    原子力施設が集中立地する青森県内に交付される電源三法交付金の2011年度実績が191億円に上り、県内への交付が始まった1981年度以降、単年度で最高となったことが30日、県のまとめで分かった。11年度分から核燃料サイクル施設の算定方法が変わり、交付金が拡充されたのが大きな要因。・・・

    累計の交付総額は2334億円。これには水力、火力分も含まれるが、大半は88年度から交付されている原子力関連分。過去の最高は08年度の141億円で、11年度はそれより50億円も増加した。

    原子力施設の立地市町村では、むつ市が30億円、六ケ所村が26億円、大間町が9億6千万円、東通村が37億円で、むつと東通の実績が過去最高だった。・・・・

  • 核燃税引き上げ 総務相が同意 (2009年12月17日) デーリー東北

    六ケ所村に搬入される使用済み核燃料に、青森県が課税している核燃料物質等取扱税(核燃税)の税率引き上げについて、総務相が16日同意した。これを受け、県は来年1月から新たな税率を適用する。・・・

  • 核燃税の貯蔵税率6倍以上に 青森県、原燃と調整 (2009年09月15日) デーリー東北

    青森県が、六ケ所村に搬入される使用済み核燃料に課税している核燃料物質等取扱税(核燃税)のうち、貯蔵時の税率を現行の1キロ当たり1300円から6倍以上に引き上げる方向で事業者の日本原燃と調整していることが14日分かった。・・・

    核燃税は、搬入時と貯蔵時に分けて課税する方式。搬入に1キロ当たり1万9400円の税率で課税しているが、貯蔵施設が満杯に近づき、新たな搬入の増加が見込めない状況。県は税収の急激な落ち込みを懸念し、貯蔵分への税率をアップする方向で事業者と調整を進めてきた。

    09年度の県税収入約1200億円のうち、核燃税は約8%を占め、貴重な自主財源となっている。・・・

  • 2009年核燃税条例改正 平成21年10月19日青森県報号外第71号 - 青森県(pdf) [

    青森県条例第七十八号青森県核燃料物質等取扱税条例の一部を改正する条例

    青森県核燃料物質等取扱税条例(平成十八年六月青森県条例第六十一号)の一部を次のように改正する。附則第五項中「百分の十二」の下に「とし、使用済燃料の貯蔵に係る核燃料物質等取扱税の税率は、同条第四号の規定にかかわらず、当分の間、使用済燃料に係る原子核分裂をさせる前のウランの重量一キログラムにつき八千三百円」を加える。附則1この条例は、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第二百五十九条の規定による総務大臣の同意を得た日から起算して一月を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。2改正後の青森県核燃料物質等取扱税条例附則第五項の規定(青森県核燃料物質等取扱税条例第二条第九号に規定する使用済燃料の貯蔵に係る核燃料物質等取扱税に係る部分に限る。)は、この条例の施行の日以後に行う同号に規定する使用済燃料の貯蔵に係る核燃料物質等取扱税について適用――12し、同日前に行った同号に規定する使用済燃料の貯蔵に係る核燃料物質等取扱税については、なお従前の例による。

  • 画像:歳入予算の構成内容]

    県税の税目別構成内訳
    [画像:県税の税目別構成内訳] 平成24年6月 青森県財政事情 青森県(pdf)
  • 六ヶ所村電源三法交付金実績額 六ヶ所村
  • 青森県財政事情
    県税の内訳 青森県(pdf)
  • 核燃料物質等取扱税 青森県

    県税の内訳 (平成24年度当初予算)


  • 使用済み燃料貯蔵問題

    六ヶ所貯蔵燃料返送による発電所管理容量の超過時期
    六ヶ所貯蔵燃料返送による発電所管理容量の超過時期

    六ヶ所貯蔵燃料返送による発電所管理容量の超過時期
    (注記)使用済燃料の管理容量を超過した発電所は、運転できない。
    (今年度中に六ヶ所再処理工場から搬出元の発電所に使用済燃料が返送された場合を仮定し試算)
    (今年度から運転を再開し、再処理操業なしと仮定し試算)


    英仏からの廃棄物受け入れ問題

    再処理工場のしゅん工時期の変更について 2012年9月19日 日本原燃

    [

    再処理工場のしゅん工時期をこれまでの「2012年10月」から「2013年10月」へ変更することを決定しました。・・・

    ガラス溶融炉におけるアクティブ試験につきましては、2008年10月のガラスの流下性低下事象により中断いたしました。・・・

    この事前確認試験につきましては、6月18日からB系において模擬廃液および実廃液を用いた試験を、そして8月25日からはA系において模擬廃液を用いた試験を実施し、8月31日までに、いずれの試験も順調に終了いたしました。・・・

    これらの取り組み状況を踏まえた上で、今後のガラス固化試験や法定点検などの作業全体を含めて精査した結果、しゅん工時期につきましては、2013年10月といたしました。・・・

    その後、年内を目途に、B系におけるガラス固化試験に着手したいと考えております。

    終了後は、年1回の法定点検(約3ヶ月程度)を行った後、A系におけるガラス固化試験を実施し、ガラス固化設備に関する国の使用前検査を受検いたします。ガラス固化試験B系・A系と国の使用前検査等は、約6ヶ月程度かかるのではないかと思っております。 その後、最終的なアクティブ試験全体の試験結果を取りまとめた報告書を国へ提出し、審議をいただき、しゅん工ということになります。この国の審議につきましては、2ヶ月程度を織り込んでおりますが、ガラス固化設備に関する国の使用前検査の受検を社内的な工程管理上の大きな目標として、2013年8月までとしたいと考えております。・・・

    乾式中間貯蔵


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