非核保有国の項を参照。
** : 核情報による計算。日本の国内外の保有量合計(46.1)と英仏での日本以外の外国籍のもの(2.3 + 0.2)の合計とを合算(48.6)。四捨五入のため、合計が合わないことがある。
出典:International Panel on Fissile Materials
参考
日本のプルトニウム保有量
解説:表にある高濃縮ウラン(HEU)の数字について
いくつかの概念を整理した後、表の具体的な数字について見てみましょう。
概念の整理
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高濃縮ウラン(HEU)とは?
核分裂を起こしやすいウラン235(天然ウランには約0.7%しか含まれていない)の率を20%以上に高めたもの。
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兵器級高濃縮ウランとは?
ウラン235の濃縮度が90%以上のもの。核兵器を作る際には普通このレベルに濃縮するが、もっと低くとも、濃縮度20%以上(=高濃縮ウラン)なら兵器ができる。
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有意量(SQ=Significant Quantity)とは?
国際原子力機関(IAEA)は、高濃縮ウランの中に含まれるウラン235の量で計算して25kgを有意量と定めている。これだけ行方不明になると核兵器が1個作られるかもしれないという意味の数字(工程ロスなども考慮)。実際には、18-20kgぐらいで初歩的な核兵器が1個できる。ただしこれは、ガンタイプ(砲身型)という広島型の場合ではなく、プルトニウム使用の長崎型の「爆縮方式」と同じ設計にした場合の数字。ガンタイプだと、兵器級のもので約50kg必要。
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広島に投下された原爆を作るのに使ったウランの量は?
広島の場合は、約64kg。異なる濃縮度のウランを使用したが、平均80%の濃縮。
これはウラン総量であって、ウラン235だけをはかった数字ではない。
核保有国
非核保有国
非核保有国のHEUは、IPFMの2022年版のものでは、国際原子力機関(IAEA)の年次報告2021(pdf)の表A4の数値から計算したものを示している。この数値は、IAEAの保障措置下にあるHEUを有意量(SQ)で示したものだ。156SQ、つまりSQの156倍ということだ。これがすべて濃縮度100%だとすると、上述の有意量の定義から、156X25kg=3,900kg(=約4トン)となる。すべてが濃縮度20%だとすると、156X(25÷0.2)=156X125=19,500kg(=約20トン)となる。5倍の差が生じるということだ。2022年版の表では、前者を使って、約4トン「以上」という意味で、4という数字が記載されている。言い方を変えると、4〜20トンという意味だ。(なお、IAEAの元高官によると、IAEAは、SQ量を報告する際、燃料内の元のHEUの量を使うという。炉内での照射による減量は反映されないということ)。
だが、実際には、156SQには、カザフスタンにある閉鎖済みの旧ソ連の高速増殖炉BN-350 の使用済み燃料約10トン(最高26%濃縮)が含まれている。IPFM 2021年版では、IAEAの年次報告2020(pdf)の表A4の数値(156SQ)から非核保有国の実際のHEUの重量を合計を15トンとし、そのうちの未照射(原子炉で使っていないもの)を約4トンと推定して、この4という数字を使っている。つまり、2021年版と2022年版の両方が4トンと記載しているが、その数字の意味が違うという結果となっている。このため、核情報の判断で、IPFMの両年版に、2021年版にあった非核保有国の実際のHEU量の合計推定値を示す(15*)を追加情報として挿入してある。ただし、この数字はあくまでも推定であることに注意。(なお、156SQにはNPT非締約国用の協定「INFCIRC/66型保障措置協定」を結んだ国のものがIAEA年次報告2021では2SQ、年次報告2020では1SQ含まれている。これは印パ両国のものを意味する。このため、非核保有国の保有量を計算するには156SQではなく、それぞれ、154SQ、155SQを使うべき。もっとも、その差はわずかであり、実質的には総量に大きな影響を与えない。)
合計の数字の扱いに注意
以上のことから、単純に各国の数字を足した合計の年ごとの細かい差には大きな意味はないことに注意が必要。
カザフスタンHEUまとめ
カザフスタンのHEUはほとんどが旧ソ連の高速増殖炉BN-350の使用済み燃料だ。
備考:
プロジェクト・サファイア
1994年11月21日に581kgのHEU(核爆弾20-25発分)がウルバ冶金工場から米国に輸送終了。
旧ソ連の秘密計画アルファ潜水艦用と言われるHEUが工場に保安体制の不十分な状態で保管されていたもの。これは、1990年代にダウンブレンドされた。
出典:GAO報告書