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祈りの回廊

特別講話

「考え寄り添い、真に平等な社会の実現を」NEW 壷阪寺(南法華寺)
住職/常盤 勝範 師

ダイジェストムービー

─壷阪寺について教えてください。
─壷阪寺について教えてください。
大宝3年(703)に弁基というお坊様が山中で修行なさったところ愛用の壺の中に観音様を感得(かんとく)し、坂の上の庵にその壺を納めたのがお寺のはじまりです。御本尊様である観音様は「眼の観音様」と崇拝され、元正、桓武、一条の各天皇も祈願したと伝わります。古来から眼病平癒を望む方々を迎えてきて、昭和36年には日本で最初の「養護盲老人ホーム慈母園」を開設するに至りました。それについて語った短編映画『「救世のひと」 壷阪寺の常盤勝憲 盲老人ホーム慈母園誕生秘話』をインターネット上に公開しています。人形浄瑠璃の演目『壷坂霊験記』の舞台としてご存知の方も多いでしょう。明治時代作の盲目の沢市さんとお里さん夫婦のお話で、思い違いから悲劇が起きるものの最後は観音様に救われるという、歌舞伎や浪曲(ろうきょく)などでも人気の物語です。物語と言えば今年の大河ドラマに登場する清少納言や藤原道長にも縁があります。『枕草子』には「寺は壷坂......」と記され、金峯山寺に参詣する道長一行1500人は当寺に宿泊したそうです。また2026年の同ドラマの主人公である豊臣秀長公と、その家臣で戦国時代の壷阪寺再興に尽力した本多俊政公の像を、灌頂堂(かんじょうどう)に安置しております。
─様々なことをきっかけにご参拝される方がおいでなのでしょうね。
桜やあじさいなど四季折々の風景を楽しんでくださっている方も多いですね。秋には長谷寺さん、岡寺さん、室生寺さん、我々とで「もみじ回廊」を開催します。紅葉という共通のテーマでお寺を廻っていただくという催しは昨年も好評でした。今年は岡寺さんに教わったアイディアで和傘を境内に並べてみようと。仏様、伽藍を荘厳して、参拝くださった皆様に和んで帰っていただけたら良いなと考えています。考えるということは大事ですね。「こうだろう」と勝手に決めつけてはいけない。先の『壷坂霊験記』は相手への思いやりと思っていたことが思い込みだったお話です。どんなことも、その都度都度、一つの事柄、一人の人に向き合うことが大切です。例えば盲目の方にとって、ただ段差をなくせばバリアフリーとはならない。その段差が重要な情報となっている場合があるからです。話して知って寄り添うことが大切だし、それが平等な社会の実現につながるのでしょう。

プロフィール

壷阪寺(南法華寺)/
住職 常盤 勝範(ときわしょうはん)師


1962年奈良県生まれ。鳥取大学大学院修了。1989年から壷阪寺住職。

特別講話Special Interview

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