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対象となる病気target diseases

転移性肺腫瘍

転移性肺腫瘍(転移性肺がん)とは、いかなるものでしょうか?肺に転移をきたした悪性腫瘍は、基本的には局所疾患ではありません。悪性腫瘍が全身化した状態の、一表現形と認識すべきものです。つまり、基本的には進行したがんの状態であるので、原則としては、原発臓器の治療戦略に従った、抗がん剤による全身化学療法の適応となります。

なぜ、肺に転移するか?

肺は解剖学的に、体循環系(血液の流れ)のフィルターの働きをしています。そのため、特殊な腫瘍をのぞき種々の転移性腫瘍が高頻度に発生します。ほかの臓器のがんが全身化する前に、肺のみに転移していて、その他の臓器への転移が成立していない時期が存在するなら、つまり、全身臓器のフィルターを超えて、全身化する前ならば、局所的な治療(外科切除)を加えて、根治的状態を達成できる可能性があります。

どこのがんが転移するか

大腸がん、乳がん、子宮頚部がん、腎がん、唾液腺腫瘍、絨毛上皮がん、精巣腫瘍、耳下腺腫瘍、甲状腺がん、骨肉腫などの骨軟部腫瘍、などが肺転移を起こす可能性の多い腫瘍です。

特に大腸がんの肝転移を伴わない場合では、比較的限局性に発育し、単発切除したときの5年生存率は50%以上という報告もあり、積極的に切除されています。逆に、甲状腺がんなどは多発の小結節病巣を形成するため、外科切除の適応になりにくいといわれています。

外科切除の適応は

一般には、Thomfordよる選択基準(1965年)が、外科治療の適応基準とされています。

  1. 1. 耐術能に問題がない(心・肺機能に問題がない)
  2. 2. 原発巣切除から転移巣出現までの期間
  3. 3. 肺以外に転移巣がないこと
  4. 4. 転移病巣が片肺であること

といわれていますが、現在では胸腔鏡などの低侵襲手術が多くなっているため、両側であっても完全切除が可能であれば適応となっています。しかし、胸腔鏡では触診ができないという大きな問題があり、5mm以下の小さな腫瘍の場合は、胸腔鏡でもわかる1cm大になるまで待つか、小切開を追加して切除することになります。病巣が数個になると、区域切除や肺葉切除といった通常の肺切除と同じ程度の手術になることもあります。

また、最近では抗がん剤との組み合わせの中で、外科切除が治療の一部として入ってくることがあります。この場合でも、切除を考慮する際には、

  1. 1. 転移巣の大きさと個数
  2. 2. 原発巣切除から転移巣出現までの期間
  3. 3. 腫瘍の増大速度(腫瘍径が倍になる速度)

などにより手術適応を判断します。

同時に両側を切除することもありますが、片側を切除後に、2〜3週間あけて反対側を切除する方法が比較的多くされています。

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