会員が作る「IUCN」
IUCNらしい、独特の仕組み 発議(モーション)について紹介します。理事会報告の後、今回「事前のインターネット投票」という仕組みを導入した新しいモーション(発議)プロセスについて紹介がありました。
写真 IISD/ENB http://www.iisd.ca/iucn/congress/2016/1sep.html
そもそもこの発議(モーション)というものは、一定の要件のもと、IUCNから第三者に出される意見書、IUCNの取り組みやその優先度に関する事柄について、IUCN会員が、4年に1度開かれる総会に対して提案できる仕組みです。この「モーション」を会員が作成するには、総会開催日の180日前までに最低5会員、総会期間中は10会員の共同名で事務局長宛に文案と補足資料を提出します。
海外で会員(メンバー)というとその会の運営を決定できる人(あるいは団体)をさして使います。このモーションという独特の仕組みは、メンバーであるIUCN会員が、IUCNが世界に発するメッセージを決め、IUCN(=自分たち)の仕事を決めるという仕組みです。
総会に対して発議された提案は、第三者への意見である勧告(Reccomendation)、IUCNの取り組み・指針に影響を及ぼす決議(Resolution)やプログラムの修正(Programme ammendment)と大きく三つに性格が分かれますが、それらが混在する提案も数多くあります。
さて、この発議の数は、会を追う毎に増える傾向にあり、前回は200近い発議がなされました。このため、200件の議題をおよそ4日間の間に、採決しなければならず、必然、議論に十分な時間が割けない、議論に参加していないので当事者意識がない、実施のフォローアップが出来ない、最も重要なIUCN全体としての4年間の行動計画の議論の時間が割けないといった課題が生じていました。
そこで、この4年間の間に規約を改正し、オンラインディスカッションを事前に行ない、そこでまとまったものについては事前投票を行なうという仕組みを今回から導入しました。結果、今回は100以下の発議に収まり、そのうち事前投票に回ったのは85件となりました。オンライン投票は、8月3日から8月17日に実施されました。
報告によると、会員から提出された発議のうち21件は一度モーション作業部会で要件に該当しないと判断を下され、その決定への不服申し立てと追加の理由書提出の結果、4件が改めて発議として採択されたそうです。発議に対する意見数、意見を言った団体数も、前回総会と比べて倍増しており、討議の時間も、これまでは総会期間中の1−2回の検討会(コンタクトグループ、およそ1回1時間半程度が割り当てられる)でまとめられてた意見が、2ヶ月かけて検討され、文案としての質も高まりました。総じて、民主的なプロセスであるという評価がありました。総会後にしっかりと検討・評価する必要はあるものの、当初の狙いは十分果たしたようです。
(公財)日本自然保護協会経営企画部副部長
国際自然保護連合日本委員会副会長・事務局長
道家哲平