民謡みんよう
概要
人々が生活の中で口伝えにより歌い継いできた歌を民謡といいます。民謡は、その目的や歌われる機会によって分類すると以下のようになります。
- 仕事歌
- 作業をする時に、大勢の人の動きを合わせたり、仕事のつらさを紛らわせたりするための歌。
- 祝い歌
- 正月、婚礼、新築など、祝い事のための歌。めでたい内容の言葉が歌われる。
- 踊り歌
- 盆踊りのように、踊りと一緒に歌われる歌。
- 子守歌
- 幼い子供の世話をする時に、泣く子を落ち着かせたり、寝かしつけたりするための歌。子守仕事のつらさを嘆く歌もある。
- 娯楽の歌
- 楽しむための歌。憩(いこ)いの時や酒の場などに歌われる。
民謡の歌詞には、各地の特色ある景色や生活、そこで暮らす人々の気持ちが詠み込まれています。また、人々の往来により、よく似た歌が異なる地域に伝わり伝承されていることもあります。現代の日本においては、民謡は自分の地域の良さを確認するために歌われます。また、プロの民謡歌手は、日本各地の民謡を舞台の上で歌います。習い事として、民謡を愛好する人も多数います。
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民謡「八木節(やぎぶし)」
提供:公益財団法人日本民謡協会
詞章
- ハアーまかり出ました 三角野郎(さんかくやろ)が
暑い寒いの辞宣(じんぎ)も言わず
音頭取るとは 恐れながら
ちょいと一節うかがいまする
かかる外題(げだい)は 何をと言えば
さても名高き 国定忠治(くにさだちゅうじ)
それじゃこれより 音頭(おんど)にかかるがオオイサネ - ハアー国は 上州(じょうしゅう)あの佐波郡(さわごおり)
音にきこえし国定村(くにさだむら)よ
親は代々名主(なぬし)をつとめ
人に知られし大身(だいじん)なれば
大事息子が すなわち忠治
幼な時から 剣術柔術
蝶よ花よと育てるうちに
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民謡「江差追分(えさしおいわけ)」
提供:公益財団法人日本民謡協会
詞章
- かもめのなく音にふと目をさまし あれが
演奏
民謡には、規則的な拍に基づいて歌われるもの(八木節(やぎぶし)様式)と、規則的な拍に縛られずに歌われるもの(追分(おいわけ)様式)があります。前者は、大勢が一緒に歌ったり、歌の最初を一人が歌い他の人々が続いて歌う音頭(おんど)一同形式で歌われたりします。後者は一人で歌われることが多く、声を長く伸ばしながら細かく変化させるコブシ(小節)(こぶし)
日本の伝統的な歌の技法のひとつ。音の高さを瞬間的に上下に細かく動かす装飾音的な節回し。なお、ロングトーンを震わせて波のように小刻みに音を揺らすことは、ビブラートという。の技法が使われます。
無伴奏や手拍子のみで歌われることもありますが、伴奏楽器としては、三味線や太鼓、尺八、笛などがよく使われます。
所蔵:国立劇場
豆知識
- 追分
- 追分は街道などの分岐点を表す言葉です。こうした分岐点には宿場(しゅくば)が設けられることが多く、各地のさまざまな文化が出会う場所でもありました。中山道(なかせんどう)と北国街道が交わる長野の追分宿で馬子唄(まごうた)を三味線の伴奏で歌ったのが始まりといわれます。