1安心・安全なメタバースの実現に関する研究会
報告書2024 概要(案)
2024年●くろまる月4第1章
メタバースをめぐる最近の動向5(1)市場動向
○しろまる メタバースはその市場拡大やユーザ数の増加が予測されており、全世界のメタバース市場は、2022年の461
億ドルから、2030年には5,078億ドルまで拡大すると予測されている。
○しろまる 主要なプラットフォーマーに大きな変化はなく、VRChat、ZEPETO等が勢力を持っており、一般消費者向け
の市場が伸びているように見える一方で、メタバースに係る既存の技術を産業応用するインダストリアルメタ
バースが注目を集めている。
○しろまる 日本のメタバース市場は、2022年度の1,377億円(前年度の173.6%)から2027年度には2兆59億円ま
で及ぶ予測。
メタバースの世界市場規模推移・予測 メタバースの国内市場規模推移・予測
(出典)総務省「令和6年度版情報通信白書」6(2)国内の動向
【1政府の動向】
<総務省>
●くろまる 2023年7月、「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」の報告書を公表。メタバース等の
発展に向けて、アバターに係る課題を始めとした6つの論点と課題、メタバースの理念に関する国際的な共通認
識の形成等の課題解決の方向性を示す。
<内閣府知的財産戦略推進事務局>
●くろまる 2024年2月、「『メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題等に関する論点の整理』(2023年5
月)の主なポイント」を公表。メタバースプラットフォーマー及びプラットフォーム利用事業者向けとメタバース
ユーザー(ユーザ生成コンテンツ(UGC)を含む)及びメタバース上のコンテンツ権利者向けのそれぞれにまとめ
た文書として公表。
【2業界団体等の動向】
<一般社団法人Metaverse Japan>
●くろまる 2023年4月、「世界初のメタバース・シンクタンク」として「Metaverse Japan Lab」を立ち上げ。ワーキング
グループとの連携を通じた社会実装の推進やメタバース・スタンダード・フォーラム(MSF:Metaverse
Standards Forum)や世界経済フォーラム(WEF)への参画をはじめとする国際標準化に向けた活動を実施。
●くろまる 2023年2月に、シンクタンク活動の一環として1産業基盤強化、2人材育成、3メタバース特区創出、4ルー
ル形成と国際標準、5ダイバーシティ&インクルージョンの5つの柱からなる政策提言ペーパー「知が循環し、世
界を主導するメタバース産業立国 」を公表。7(2)国内の動向
【2業界団体等の動向】(続き)
<一般社団法人メタバース推進協議会>
●くろまる 2023年12月、メタバースに関わる全ての関係者に向けた「メタバースセキュリティガイドライン(第2版) 」を
公表。将来的な認証制度の確立も視野に入れながら、ユーザやコンテンツ、プラットフォームといったメタバース
を巡る機能別レイヤごとに「コンテンツの設計・制作」「ユーザへの販売」といったバリューチェーンを洗い出し、
ユースケースにおける課題と対策の方向性を整理。2024年度には本ガイドラインの有効性評価を行うための
実証実験を実施予定。
<バーチャルシティコンソーシアム>
●くろまる 2022年4月、メタバースの理念と指針をまとめた「バーチャルシティ宣言 」及び「都市連動型メタバース」の関
連事業者がサービス開発・運営において考慮すべき論点の整理と指針を示した「バーチャルシティガイドライン
ver.1.0」を策定。2023年7月には政府動向等も踏まえ項目をアップデートした「バーチャルシティガイドライン
ver.2.0」を策定。
<一般社団法人日本デジタル空間経済連盟>
●くろまる 2022年11月、デジタル空間上でのビジネス発展に向け、企業が抱える課題について専門家との議論をまと
めた「デジタル空間の発展に向けた報告書」を公表。
●くろまる また、2024年1月、ユーザや関連事業者のメタバースに対する一定の知識や倫理観といった「メタバース・リ
テラシー」の向上を目的とし、「メタバース・リテラシー・ガイドブック」 を公表。8(2)国内の動向
【2業界団体等の動向】(続き)
<NPO法人バーチャルライツ>
●くろまる ×ばつメタバースに係る調査」といったアンケート調査等を実施。
<京都府>
●くろまる 2023年3月、安全性・信頼性の高いメタバース空間づくりを促進するべく、「メタバースの制作や活用に関わ
る方々が、セキュアで信頼できるメタバース空間づくりを自主宣言する指針」として「メタバース・トラスト・ステー
トメント京都宣言」を公表。
●くろまる また、2022年度に京都府と一般社団法人CiP協議会を中心とした産学官による「京都府メタバース検討会」
を立ち上げ、メタバースを活用した新産業創出に向けた実証等の支援に取り組んでいる。
【3利用者の動向】
●くろまる 総務省の「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、メタバース等
の仮想空間に関する利用について、年代別では10代及び20代の「利用経験がある」との回答が、他の年代と比
べ高い傾向となった。また、利用機器は、全年代ではゲーム機での利用が最も多く、スマートフォン、パソコンが
続く結果となった。「VRゴーグル、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)」での利用は、概ね年代が上がるにつれ多
くなる結果となった。9(3)海外の動向
米国 EU 英国 中国 韓国2020▲さんかくデジタルサービス法、
デジタル市場法の提出
●くろまる韓国版ニューディール2.0202110月
Facebook社名を
Meta Platformsに改名
メタバースに関する見解の発表
●くろまる上海市:第14次5カ年計画2022▲さんかく子どもオンライン安全法提出
▲さんかく米国データプライバシー法提出
議会調査局の報告書
欧州委員会委員長
Letter of Intent
▲さんかくデジタルサービス法、
デジタル市場法の成立
▲さんかくオンライン安全法提出 ●くろまる上海市:メタバース新分野
育成のための行動計画
●くろまる北京市:メタバースの革新的
発展のための行動計画
▲さんかくメタバース産業振興法提出
●くろまるメタバース新産業先導戦略
メタバース倫理原則2023▲さんかく米国データプライバシー法
再提出
▲さんかく子どもオンライン安全法
再提出
●くろまるWeb 4.0と仮想世界をリー
ドするEU戦略
市民パネル8原則と23の提言
メタバースに関するメディ
アリテラシーペーパー
没入型技術への見解
▲さんかくオンライン安全法成立
●くろまる上海市:メタバース基幹技術
の難関攻略行動計画(2023
〜2025)
●くろまるメタバース産業の革新的発
展に向けた3カ年行動計画
(2023-2025年)
●くろまる四川省:中国メタバースバレー
創設計画
●くろまるソウル市:メタバースソウル推進計
画/倫理指針
●くろまる仮想世界に向けた規制革新
先導計画
メタバース実践倫理2024没入型技術に関する現状調査 仮想空間と生成AIの競争に関
する意見募集
▲さんかく仮想融合産業振興法成立
○しろまる 主な諸外国・地域5つ(1米国、2EU、3英国、4中国、5韓国)について、メタバースに関する政策動向を記載。
○しろまる 報告書では、欧米・アジアにおける、各政府の代表的な施策を2023年〜2024年以降の動向を中心に整理した。
●くろまる戦略関連 ▲さんかく法案関連 ※(注記)網掛け灰色は米国、青は欧州、赤はアジアを表す (各種公開情報を基に総務省作成)
14
第2章
メタバースの原則(第1.0版)の検討16(3)メタバースの原則(第1.0版)
(民主的価値を踏まえたメタバースの将来像の醸成)
⚫ 将来、メタバース上では国境を越えて様々な仮想空間であるワールドが提供され、メタバースが物理空間と同様に国民の生活
空間や社会活動の場として益々発展し、人々のポテンシャルをより一層拡張することが期待される一方、メタバースの設計や
運営が過剰に商業主義的な動機で支配され、民主的価値を損なうような仮想空間が出現する可能性、さらには、物理空間と仮
想空間がこれまで以上に融合した結果として、メタバース上での出来事や価値観が仮想空間のみならず物理空間にも影響を与
え、両空間の民主的価値を損なう可能性も想定される。このような状況を防ぐためにも、以下の1〜3をメタバースにおける
民主的価値の主な要素として国際的な共通認識とした上で、メタバースの将来像の醸成を図ることが重要である。
1 メタバースが自由で開かれた場として提供され、世界で広く享受されること
2 メタバース上でユーザが主体的に行動できること
3 メタバース上での活動を通じて物理空間及び仮想空間内における個人の尊厳が尊重されること
(原則の位置付け)
⚫ 上述の民主的価値を実現し、ユーザが安心・安全にメタバースを利用していくためには、仮想空間そのものの提供を担うメタ
バース関連サービス提供者(プラットフォーマー(※(注記) 1)及びワールド提供者(※(注記) 2))の役割が重要である。メタバース関連サー
ビス提供者の取組として、以下の2つを大きな柱として位置付ける。
1 社会と連携しながら更なるメタバースにおける自主・自律的な発展を目指すための原則
2 メタバース自体の信頼性向上のために必要な原則
※(注記) 1 プラットフォームを提供する事業者をプラットフォーマーと呼ぶ。プラットフォームはメタバースを構築したり利用したりするための基盤。メタバースを構築
するための機能や素材、法則やルールなどを提供するもの、ユーザの認証・管理やアイテム等の管理、コミュニケーション機能、契約・取引などの基盤的サービ
スを提供するもの、すぐに利用できるようにメタバースの基本的なサービス自体を運営・提供するものなど、多岐にわたる。
※(注記) 2 ワールドとは、プラットフォーム上で構築・運用される、メタバースの個々の「世界」。ワールド提供者は、プラットフォーマーと契約(有償・無償を問わず、利用
規約への同意等も含まれる)し、プラットフォーム上にワールドを構築して提供する者。なお、これをビジネスとして行う者については「ワールド提供事業者」と
いう。プラットフォーマー自身がワールドを構築して提供する場合もある。
(メタバースの自主・自律的な発展に関する原則についての考え方)
⚫ メタバースがメタバース関連サービス提供者による多様な仮想空間の提供と共に、ユーザ等によるクリエイティブなコンテンツ
(UGCを含む)の創造により、自主的な創意工夫により自律的に社会的・文化的発展を遂げてきた経緯を踏まえ、ワールドの
オープン性やイノベーションの促進、世界中の様々な属性のユーザがメタバースを利用する多様性・包摂性、ICTリテラシーの
向上やコミュニティ運営の尊重など社会と連携した取組とする。
(メタバースの信頼性向上に関する原則についての考え方)
⚫ メタバースの自主・自律的な発展を支えるために、透明性・説明性、アカウンタビリティ、プライバシーへの配慮、セキュリティ確
保などメタバースへの信頼性を向上させるために必要な取組とする。
<前文>17(3)メタバースの原則(第1.0版)
項目 内容
透明性・説明性 ・サービス利用時の保存データ(期間、内容等)及びメタバース関連サービス提供者が利用するデータの明示並びにユーザへの情報提供
・提供するメタバースの特性の説明
・メタバースの利用に際してのユーザへの攻撃的行為や不正行為への対応の説明
アカウンタビリティ ・事前のユーザ間トラブル防止の仕組みづくりや事後の不利益を被ったユーザの救済のための取組
・他のユーザやアバターに対する誹謗中傷及び名誉毀損の抑制
・ユーザ等との対話を通じたフィードバックを踏まえた改善
・子ども・未成年ユーザへの対応
プライバシー ・ユーザの行動履歴の適正な取り扱い
・ユーザとアバターとの紐付けにおけるプライバシーの尊重
・メタバースの利用に際してのデータ取得、メタバースの構築に際しての写り込み等への法令遵守等による対処
・アバター(実在の人物を模したアバターを含む)の取扱いへの配慮(知的財産権、名誉毀損及びパブリシティの観点を含む)
セキュリティ ・メタバースのシステムのセキュリティ確保(外部からの不正アクセスへの対処等)
・メタバース利用時のなりすまし等の防止
項目 内容
オープン性・イノベーション ・自由で開かれた場としてのメタバースの尊重
・自由な事業展開によるイノベーション促進、多種多様なユースケースの創出
・アバター、コンテンツ等についての相互運用性の確保
・知的財産権等の適正な保護
多様性・包摂性 ・物理空間の制約にとらわれない自己実現・自己表現の場の提供
・様々な国・地域、ユーザ属性等による文化的多様性の尊重
・多様な発言等の確保(フィルターバブル、エコーチェンバーといった問題が起きにくいメタバース)
・障がい者等の社会参画への有効な手段としての活用
・メタバースへの公平な参加機会の提供
・誰もが使えるユーザビリティの確保
リテラシー ・ユーザのメタバースに対する理解度向上の支援
・ユーザのICTリテラシー向上の支援
コミュニティ ・コミュニティ運営の自主性の尊重
・コミュニティ発展の支援
<メタバースの自主・自律的な発展に関する原則>
<メタバースの信頼性向上に関する原則>18第2章
メタバースの原則(第1.0版)の検討
(参考資料)19参考資料:原則(第1.0版)の解説
前文 補足
(民主的価値を踏まえたメタバースの将来像の醸成)
⚫ 将来、メタバース上では国境を越えて様々な仮想空間であるワールドが提供され、メタバースが物理空間と同様に国民の生活
空間や社会活動の場として益々発展し、人々のポテンシャルをより一層拡張することが期待される一方、メタバースの設計や
運営が過剰に商業主義的な動機で支配され、民主的価値を損なうような仮想空間が出現する可能性、さらには、物理空間と仮
想空間がこれまで以上に融合した結果として、メタバース上での出来事や価値観が仮想空間のみならず物理空間にも影響を
与え、両空間の民主的価値を損なう可能性も想定される。このような状況を防ぐためにも、以下の1〜3をメタバースにおけ
る民主的価値の主な要素として国際的な共通認識とした上で、メタバースの将来像の醸成を図ることが重要である。
1 メタバースが自由で開かれた場として提供され、世界で広く享受されること
2 メタバース上でユーザが主体的に行動できること
3 メタバース上での活動を通じて物理空間及び仮想空間内における個人の尊厳が尊重されること
(原則の位置付け)
⚫ 上述の民主的価値を実現し、ユーザが安心・安全にメタバースを利用していくためには、仮想空間そのものの提供を担うメタ
バース関連サービス提供者(プラットフォーマー(※(注記) 1)及びワールド提供者(※(注記) 2))の役割が重要である。メタバース関連サー
ビス提供者の取組として、以下の2つを大きな柱として位置付ける。
1 社会と連携しながら更なるメタバースにおける自主・自律的な発展を目指すための原則
2 メタバース自体の信頼性向上のために必要な原則
※(注記) 1 プラットフォームを提供する事業者をプラットフォーマーと呼ぶ。プラットフォームはメタバースを構築したり利用したりするため
の基盤。メタバースを構築するための機能や素材、法則やルールなどを提供するもの、ユーザの認証・管理やアイテム等の管理、コ
ミュニケーション機能、契約・取引などの基盤的サービスを提供するもの、すぐに利用できるようにメタバースの基本的なサービス自
体を運営・提供するものなど、多岐にわたる。
※(注記) 2 ワールドとは、プラットフォーム上で構築・運用される、メタバースの個々の「世界」。ワールド提供者は、プラットフォーマーと契約
(有償・無償を問わず、利用規約への同意等も含まれる)し、プラットフォーム上にワールドを構築して提供する者。なお、これをビジネ
スとして行う者については「ワールド提供事業者」という。プラットフォーマー自身がワールドを構築して提供する場合もある。
(メタバースの自主・自律的な発展に関する原則についての考え方)
⚫ メタバースがメタバース関連サービス提供者による多様な仮想空間の提供と共に、ユーザ等によるクリエイティブなコンテンツ
(UGCを含む)の創造により、自主的な創意工夫により自律的に社会的・文化的発展を遂げてきた経緯を踏まえ、ワールドの
オープン性やイノベーションの促進、世界中の様々な属性のユーザがメタバースを利用する多様性・包摂性、ICTリテラシーの
向上やコミュニティ運営の尊重など社会と連携した取組とする。
(メタバースの信頼性向上に関する原則についての考え方)
⚫ メタバースの自主・自律的な発展を支えるために、透明性・説明性、アカウンタビリティ、プライバシーへの配慮、セキュリティ確
保などメタバースへの信頼性を向上させるために必要な取組とする。
民主的価値に沿った安
心・安全なメタバースの実
現のためには、メタバース
に関わる全てのステーク
ホルダーの取組が重要で
ある。本原則は、メタバー
スにおいて民主的価値を
実現し、ユーザが安心・安
全に利用できるようにす
るためには、仮想空間そ
のものの提供を担うメタ
バース関連サービス提供
者(プラットフォーマー及
びワールド提供者)の役割
が特に重要であることを
踏まえて整理したもので
ある。
したがって、本原則はメ
タバース関連サービス提
供者の取組を対象とした
ものであるものの、ユーザ、
コンテンツの創作や提供
を行う者(クリエイターを
含む。)、メタバースに関す
るルール整備に関わる者、
メタバースに関するユー
ザのリテラシー向上に関
わる者を含む全てのス
テークホルダーの取組に
おいても参照されること
が期待される。
<前文の補足>21参考資料:原則(第1.0版)の解説
項目 内容 解説
オープン性・イ
ノベーション
・自由で開かれた場と
してのメタバースの尊重誰もがアクセスできる、自由で開かれた空間として発展を遂げたインターネットと同様に、様々な属性のユーザに
よる参画とその主体的な取組が今後のメタバースの発展に欠かせない。メタバース関連サービス提供者は、様々な
属性のユーザの参画を歓迎するとともに、ユーザの自主性を尊重したメタバースサービスの開発・運営等を行うこ
とが期待される。
・自由な事業展開によ
るイノベーション促進、
多種多様なユースケー
スの創出
メタバースが様々な分野・目的で利活用されることにより、社会課題の解決にも寄与し得ることから、メタバース
関連サービス提供者は、創意工夫に基づき自由に事業を展開することを通じて、イノベーションを促進させ、ユーザ
とともに多種多様なユースケースの創出に繋げることが期待される。
・アバター、コンテンツ
等についての相互運用
性の確保
メタバースの利活用において、ユーザが様々なサービスを選択できることは、ユーザの利便性やオープン性の向
上・イノベーションの促進につながることから、メタバース関連サービス提供者は、その提供するメタバースサービス
の特性に応じて、アバターやコンテンツ等を複数プラットフォーム間で利用可能となるよう、相互運用性の確保に努
めることが期待される。
・知的財産権等の適正
な保護
メタバース上でクリエイターが安心してコンテンツ等を創作し、ユーザも安心してその利用が可能となるよう、メタ
バース関連サービス提供者は、メタバースサービスの開発・運営等に当たり、知的財産権をはじめとする諸権利の適
正な保護に努めることが期待される。また、メタバース関連サービス提供者は、利用規約やコミュニティガイドライン
等を通じて、知的財産権をはじめとする諸権利の適正な保護の重要性についてユーザへの浸透を図ることが期待
される。
多様性・包摂性・物理空間の制約にと
らわれない自己実現・
自己表現の場の提供
メタバース上でユーザが物理空間での年齢、性別、居住地等の属性や制約にとらわれることなく活動をし、自己実
現・自己表現につなげることができるよう、メタバース関連サービス提供者は、その提供するメタバースサービスの
特性に応じて、開発・運営等を行うことが期待される。
・様々な国・地域、ユー
ザ属性等による文化的
多様性の尊重
メタバース関連サービス提供者は、メタバースが国境を越えて提供され、様々な国・地域から、社会的・文化的背景
の異なるユーザが参加する可能性があること、また、それらが個々のメタバースの文化を生み出すことを認識し、
様々なユーザの属性に配慮するとともに、属性の異なるユーザ同士であっても互いに尊重し合う意識を醸成するこ
とにより、文化的多様性が尊重されるよう取り組むことが期待される。
・多様な発言等の確保
(フィルターバブル、エ
コーチェンバーといっ
た問題が起きにくいメ
タバース)
メタバース関連サービス提供者は、デジタル空間における情報流通の特性から生じ、偽・誤情報の流通・拡散等の
リスクをもたらすフィルターバブルやエコーチェンバーといった問題への対処が、没入感の高さといったメタバース
の特性ゆえに今後一層難しい問題となり得ることを認識し、健全な言論空間の維持の必要性を踏まえ、その提供す
るメタバースサービスの特性に応じて、ユーザによる多様な発言等とそれらへの接触機会が確保されるよう開発・
運営等を行うことが期待される。
・障がい者等の社会参
画への有効な手段とし
ての活用
メタバースは、障がいや心身の状態から物理空間での移動やコミュニケーション等の活動が難しい人にとっても、
就学、就労、他者との交流等の場になり得ることから、メタバース関連サービス提供者は、その提供するメタバース
サービスの特性に応じて、社会参画への有効な手段として活用がなされるよう開発・運営等に努めることが期待さ
れる。
<メタバースの自主・自律的な発展に関する原則>22参考資料:原則(第1.0版)の解説
項目 内容 解説
多様性・包摂性・メタバースへの公平
な参加機会の提供
・誰もが使えるユーザ
ビリティの確保
インターネット上の仮想空間であるメタバースは、アクセス手段があれば誰もが参加できる開かれた場であること
が期待される。メタバース関連サービス提供者は、多様かつ柔軟なアクセス方法を通じて、ユーザに対して公平な参
加機会を提供するとともに、その提供するメタバースサービスの特性に応じて、誰でも使いやすいようなユーザビリ
ティを確保することが期待される。
リテラシー ・ユーザのメタバース
に対する理解度向上の
支援
・ユーザのICTリテラ
シー向上の支援
社会全体でメタバースの利活用を推進するためには、メタバースに対する理解の促進、ICTリテラシーの向上を図
ることが必要となることから、メタバース関連サービス提供者は、ユーザに対し情報提供するとともに、国や自治体、
関連団体等と連携し、学習機会の提供支援等を行うことが期待される。
コミュニティ ・コミュニティ運営の自
主性の尊重
・コミュニティ発展の支援メタバースにおけるコミュニティは、物理空間におけるコミュニティ同様、人々の社会的なつながりの一形態である
ことから、メタバース関連サービス提供者は、メタバースにおけるコミュニティがユーザによる創意工夫により発展
してきた経緯も踏まえ、コミュニティの運営に係るユーザの自主性を尊重するとともに、コミュニティの更なる発展
に向けて、ユーザ同士の交流が円滑に実施されるよう支援することが期待される。
<メタバースの自主・自律的な発展に関する原則(続き)>23参考資料:原則(第1.0版)の解説
項目 内容 解説
透明性・説明性・サービス利用時の保
存データ(期間、内容
等)及びメタバース関
連サービス提供者が利
用するデータの明示並
びにユーザへの情報提供メタバース関連サービス提供者は、ユーザに係るデータの取扱いが明確になるよう、メタバースの利用に際して取
得・保存の対象となるデータの内容やその保存期間をユーザに対して明示するとともに、取得・保存したデータの利
用範囲や利用目的、外部提供の有無を含めてユーザに対して可能な限り具体的に明示することが期待される。
加えて、取得・保存したデータの管理方法や管理体制についても、可能な範囲で明示することが期待される。
明示に際しては、ユーザが理解しやすいよう視認性の高いビジュアルや平易な言葉を用いて説明するとともに、掲
示する場所や方法等についてユーザの目に触れやすいように考慮することが期待される。
・提供するメタバース
の特性の説明
メタバースには多様なものが存在し、ユーザの利用形態も様々であることから、メタバース関連サービス提供者は、
提供するメタバースサービスの特性について、視認性の高いビジュアルや平易な言葉を用いてユーザに対し説明す
ることが期待される。
・メタバースの利用に
際してのユーザへの攻
撃的行為や不正行為へ
の対応の説明
メタバース上でユーザ間のトラブルを抑制するとともに、コミュニケーションが円滑に行われるよう、メタバース関
連サービス提供者は、提供するメタバースサービスにおいて、どのような行為が他のユーザへの攻撃的行為や不正
行為に該当するかについて説明し、また、それらの行為を行ったユーザに対して取り得る対応について説明するこ
とが期待される。例えば、メタバース関連サービス提供者は、以下の事項に留意することが考えられる。
●くろまるメタバースサービスの特性を考慮しつつ、ユーザに理解されやすいよう、他のユーザへの攻撃行為や不正行為に
該当する行為類型や行為態様を可能な限り具体的に定めること。
●くろまる攻撃的行為や不正行為を行ったユーザにどのような対応を取る可能性があるのか、可能な限り具体的に記載す
ること。
●くろまるユーザが理解しやすいように視認性の高いビジュアルや平易な言葉を用いて説明すること。
アカウンタビリ
ティ
・事前のユーザ間トラ
ブル防止の仕組みづく
りや事後の不利益を
被ったユーザの救済の
ための取組
ユーザ間のトラブルによりメタバースの利活用時の安心・安全が損なわれることのないよう、メタバース関連サー
ビス提供者は、提供するメタバースにおいて、事前のユーザ間トラブル防止の仕組みづくりや、不利益を被ったユー
ザへの事後的な救済のための取組に努めることが期待される。例えば、以下のような取組が該当する。
●くろまる視認性の高いビジュアルを活用して注意喚起すること。
●くろまるメタバースサービス内の巡回やコンテンツモデレーション等のモニタリングを実施すること。
●くろまるブロック・ミュート機能等の技術的なユーザ保護機能を実装すること。
●くろまるユーザからの通報窓口を設置するなど、トラブルが発生した場合に迅速に対応できる体制を構築すること。
・他のユーザやアバ
ターに対する誹謗中傷
及び名誉毀損の抑制
自由で開かれた場であるメタバースにおいて、他のユーザやアバターに対する誹謗中傷、また名誉毀損につながり
得る行為を抑制するために、メタバース関連サービス提供者は、提供するメタバースサービスにおいて、こうした行
為がなされないようにするため、利用規約やコミュニティガイドライン等を通じてユーザ間、ユーザとメタバース関
連サービス提供者の間で当該メタバースサービスに関する共通的な理念を形成し、これに基づき必要な措置を講じ
ることが期待される。
・ユーザ等との対話を
通じたフィードバック
を踏まえた改善
ユーザ等の声を踏まえたメタバースの発展のため、メタバース関連サービス提供者は、ユーザや幅広い関係者から
の意見の収集によるフィードバックの機会を得て、開発・運営等の改善につなげることが期待される。
<メタバースの信頼性向上に関する原則>24参考資料:原則(第1.0版)の解説
項目 内容 解説
アカウンタビリ
ティ
・子ども・未成年ユーザ
への対応
メタバース関連サービス提供者は、子どもや未成年のユーザによるサービスの利用に際して、特段の配慮を要する
ことから、安全の確保及びトラブルの防止に努めることが期待される。メタバース関連サービス提供者は、例えば以
下の事項に留意することが考えられる。
●くろまる子ども・未成年にも理解しやすいよう、視認性の高いビジュアルや平易な言葉を用いて注意喚起すること。
●くろまる子どもや未成年のユーザにとって有害となるコンテンツへのラベリングや対象年齢のレーティングを実施するこ
と。
●くろまるコンテンツモデレーション等のモニタリングを実施すること。
●くろまるフィルタリング等の保護機能を実装すること。
●くろまるペアレンタルコントロールの実装等、保護者が関与できる仕組みを構築すること。
プライバシー ・ユーザの行動履歴の
適正な取り扱い
メタバースの利用において、ユーザの様々な行動に関する履歴が大量に記録され、蓄積され得る状況を踏まえ、メ
タバース関連サービス提供者は、ユーザのプライバシーに十分配慮した取扱いを行うことが期待される。メタバース
関連サービス提供者は、例えば以下の事項に留意することが考えられる。
●くろまるどのような行動履歴を取得するか明示し、行動履歴を利用する場合は、利用目的を併せて明示して、ユーザから
同意を得ること。
●くろまる取得する行動履歴は、利用に必要な範囲にとどめること。
●くろまる行動履歴の管理方法や管理体制について明示すること。
・ユーザとアバターとの
紐付けにおけるプライ
バシーの尊重
ユーザは、用途や目的に応じてアバターを使い分けるなど、ユーザのアバターに対する自己投射の程度は様々であ
ることに加え、ユーザの公表している情報の度合いも様々であることから、メタバース関連サービス提供者は、ユー
ザのプライバシーが尊重され、ユーザとアバターの意図しない紐付けにより本人の意に反して情報が公開されるこ
とがないよう、利用規約やコミュニティガイドライン等での考え方の明示や、プライバシーを侵害するような行為をし
たユーザに対し適切な対応をとることが期待される。
・メタバースの利用に
際してのデータ取得、
メタバースの構築に際
しての写り込み等への
法令遵守等による対処
メタバース関連サービス提供者は、ユーザに係るデータの取得や利用等について、個人情報に係る法令を遵守す
るとともに、物理空間を撮影したデータを利用する場合や、ユーザによってメタバース上でのスクリーンショットが
行われる場合を考慮して、その撮影データにおける人物等のプライバシー情報等の写り込みに対処することが期待
される。例えば、以下のような取組が該当する。
●くろまるデータの取得・利用については、取得する内容及び利用目的を明示し、同意を得ること。
●くろまる物理空間を撮影したデータに個人を特定できる情報が入り込んでいる場合、撮影データの利用について同意の
取得が可能な場合には、同意を得ること。同意を得ることが難しい際は、個人を特定できない形に加工すること。
●くろまる他のユーザによってスクリーンショットが行われる場合があることについて、事前にユーザに対し同意を得るこ
と。
<メタバースの信頼性向上に関する原則(続き)>25参考資料:原則(第1.0版)の解説
項目 内容 解説
プライバシー ・アバター(実在の人物
を模したアバターを含
む)の取扱いへの配慮
(知的財産権、名誉毀
損及びパブリシティの
観点を含む)
実在の人物を模したアバターを無断生成・利用した場合には、その容ぼうの実態等に即して肖像権又は知的財産
権の侵害が起こり得るほか、その利用の形態によっては実在の人物に対するプライバシー侵害や名誉毀損も起こり
得る。また、有名な人物をアバターとして無断生成・利用した場合にはパブリシティ権の問題が生じ得る。このため、
メタバース関連サービス提供者は、アバターをめぐる権利の扱いに関する議論の動向等も踏まえ、以下のような対
応を取ることが期待される。
●くろまる著作物や肖像の利用等について、利用規約やコミュニティガイドライン等で、基本的な考え方や、留意すべき事
項、許諾に関する必要となる手続、権利侵害が確認された場合の取り得るべき対応等を明示すること。
●くろまる名誉毀損や権利侵害にあたる可能性のある状況が確認された場合には、速やかに利用規約やコミュニティガイ
ドライン等に沿った対応をとること。
セキュリティ ・メタバースのシステム
のセキュリティ確保(外
部からの不正アクセス
への対処等)
メタバース関連サービス提供者は、ユーザに係る情報等を適切に保護する必要性を踏まえ、メタバースに係るシス
テムのセキュリティが確保されるよう、外部からの不正アクセスへの対処等を含めた必要な措置を講じることが期
待される。例えば、提供するメタバースサービスの特性に応じて、以下のような取組が該当する。
●くろまる登録時の本人確認システムを含む必要な措置の導入・強化に向けた検討を行うこと。
●くろまるログイン時の認証システムの導入・強化に向けた検討を行うこと。
●くろまるセキュリティリスクに対応するための体制を構築すること。
●くろまる情報セキュリティポリシー等を策定すること。
・メタバース利用時の
なりすまし等の防止
メタバース関連サービス提供者は、なりすまし等によりユーザに不利益が生じることを防ぐため、必要な措置につ
いて検討・導入することが期待される。例えば、以下のような取組が該当する。
●くろまる利用規約やコミュニティガイドライン等でアバターの模倣等に関する考え方等を明示すること。
●くろまるなりすましと判断をした場合、当該アバターのアカウントを速やかに凍結するなど、被害の拡大防止のために適
切な対応をとること。
<メタバースの信頼性向上に関する原則(続き)>26参考資料:第1回研究会での原則案への構成員の主な意見
第1回構成員コメント(構成員名(敬称略))
・そもそもなぜ原則をつくるのか、誰のためにつくるのかということは、立ち返って、初期の段階に改めて構成員の皆様と共に議論していくことが
大事(江間)
・どこに向けて、どういうガイドラインをつくっていくのかというのが、結構重要なポイントになってくる(塚田)
・原則間には必ずトレードオフが生じる。その時に、どの原則をどういう文脈で考えていけばいいのかという、ある種原則の目的や考え方自体のも
のを、前文のようなところで表に示しておくということは、非常に重要(江間)
・あらゆる国が支持可能なレベルまで薄い価値を打って出ることに意味があるのか。やはり、リベラルデモクラシーのようなものを一つの基軸とせ
ざるを得ないのではないか。(大屋)
・イノベーションを促進すると同時にリスクを緩和していくというような、2つのバランスを取っていくに当たって、この辺の開発・訓練・提供のよう
なところに関しては、やはり関係者間での契約をしっかりと取り交わしていくこと、それに対して、社会的責任として市場の監視や、あるいは市民
に対しての社会的責任を負うというようなことが非常に重要になってくる(江間)
・本当に危険なことがおこらないようにするためのルールづくりは大事だと思う一方で、縛り過ぎて結局利用者が何もできなくなってしまったとな
らないようにしないといけない(木村)
・新しいメタバースの活用方法を阻害しないような形でのルールづくりというのを心がけていく(中略)成功事例のようなものを早い時期につくっ
ていけると、多くの人が安心して、あるいは従来できなかったことができるというポジティブな面に引かれて、このメタバースの世界に入ってきて
くれるのではないか(安田)
・ある意味ルールを自分たちでつくりながら、面白い空間をつくってきたというふうな経緯もある(仲上)
・プラットフォーム側で用意されている機能を、ユーザがいろいろな活用の仕方でうまく使い、ある程度自分たちの仲間たちで安全な空間、メタ
バースの中で楽しもうというようなことが行われている(出原)
・メタバースの中を完全にリアルと切り離された空間として置いておくと危険性が高まっていく可能性はあるが、それをリアルとどう結びつけてい
くかというところが、一つ解決への鍵になるのではないか(安藤)
<全般的な意見>27参考資料:第1回研究会での原則案への構成員の主な意見
第1回構成員コメント(構成員名(敬称略))
・自由という価値も、民主的価値と同様のレベル感で捉えることができるのではないかと思う。例えばプライバシー侵害や誹謗中傷などからの自
由、それから、障がいのある方が現実世界で抱えている制約からの自由といったような形で、下に続く様々な原則に結びつけられる重要な価値で
はないか(石井)
・ユーザが操作されない、コントロールされないそういう環境を保護するための項目を一つ考えてもいい(石井)
・メタバースによって障がい者が活躍できる社会に近づくと良い (岡嶋)
・透明性というのはむしろ民主的価値の実現に資する要素なのではないか(増田)
・透明性、それから説明性、アカウンタビリティ、そこから発生するレスポンサビリティもそうだが、アカウンタビリティ、何か問題が起きたときにど
こが責任を取るのかということ、あるいは取れないかもしれないので、それを公的な観点から担保するのかというような、セーフティネットをつ
くっていくのかというような議論をしていくことが大事になってくる(江間)
・諸原則の中で登場する「自由とルールの適正なバランス」のところは、内容との整合性が見られないように思う。プライバシーの観点を含む行動
履歴の扱い、これはまさにプライバシーの部分でカバーすべき(石井)
・「個人情報保護・プライバシー」というような形にして、プライバシー保護の部分と個人情報保護法を遵守する部分はきちんと書き分けるようにす
る必要があるのではないか(石井)
・ユーザ同士の協調によるコミュニティの維持・改善という項目は、むしろリテラシーではなく、端的にコミュニティや、コミュニティの自主性のよう
な形で別項目とされたほうがよい(増田)
・メタバースの場合、得られるユーザデータはSNS以上に潤沢なので、事業者側はできるだけユーザの滞在時間を長くしようとする。そのために快
適性を高めようとする。さらに言うと、ユーザにとって自分の考えと反するような意見等は不快なノイズ要素とみなされるため、それをフィルター
アウトするような動機づけは事業者の側にも強く働くのではないか(辻)
<個別の項目への意見>28参考資料:第2回研究会での発表内容及び主な意見
一般社団法人Metaverse Japan、一般社団法人メタバース推進協議会、バーチャルシティコンソーシアムの3者から取組紹介の後、意見交換を実施。
○しろまる一般社団法人Metaverse Japan
2022年3月14日に設立。Metaverse Standards Forumへの参画やMetaverse Japan Labというメタバースシンクタンクの設立等を行う。政策提言としては
ホワイトペーパーを発表しており、Five Pillarsとして「産業基盤強化」、「人材育成」、「メタバース特区創出」、「ルール形成と国際標準」、そして「ダイバーシティ&インクルー
ジョン」を設定している。
○しろまる一般社団法人メタバース推進協議会
2022年3月31日に設立。"人間本来の暮らし方"の探求を、生活者主体の視点から「現実社会連動メタバース」を創り育てることを目指し、ユースケース策定・検証や実証
実験を目的とした検討会などを実施している。スマートフォンセキュリティ協会、セキュアIoTプラットフォーム協議会等と共同でセキュリティガイドラインを作成しており、
2023年12月18日公開の第2版では本人確認・本人認証など、メタバースに関する情報セキュリティや利用環境上の課題と解決策の総論をまとめている。今後は認証制度
化に向けた各論を整備してゆく予定。
○しろまるバーチャルシティコンソーシアム
2021年11月9日設立。2020年5月に公開した「バーチャル渋谷」を基にした、メタバース及び都市連動型メタバースについてのバーチャルシティ宣言(理念・指針)及び
バーチャルシティガイドラインを2022年4月22日に発表。スピードを優先し、情報提供、透明化、各種規制・ルールとの相互運用を目的としている。原則の議論に当たって
は共同規制アプローチでのマルチステークホルダーの役割分担を基に、政府として「原則を定める目的」と「原則の対象」を明らかにすること等の全体のファシリテーションが
重要だと考えている。
第2回構成員コメント(構成員名(敬称略))
・マルチステークホルダー型でルール形成をしていくことを考えると、(バーチャルシティコンソーシアムの意見の)政府によるファシリテーションが重要であるというのは同感。
各団体やガイドラインの参加者や役割のカバレッジをマッピングしていくなどして整理を始めてみるというのが、今後の議論の進め方の一案か。自由とルールのバランスの観
点では、問題が起きた後の事後対応型のアプローチも重要だと考える(増田)
・(Metaverse Japanに対し)ダイバーシティ&インクルージョンの取組というのは素晴らしい。特に福祉機器や福祉産業はマーケットも小さく取組みにくいところだが、団体
として取組むのは良い流れ。インクルーシブというと身体障がいに目が行きがちだが、発達障がいのある方々のアクセシビリティについても深掘りしていくことが重要だと考
える(雨宮)
・(メタバース推進協議会の)セキュリティガイドラインではガイドラインに従わない場合のペナルティは想定しておらず、共通的に誰もが考えなければならないセキュリティ的観
点を整理している。(バーチャルシティコンソーシアムの発表の)民間主導ソフトローとハードローとのトレードオフ、エンフォースメントの難しさも踏まえ、マルチステークホル
ダーの中でオープンに進めていくべきというところは、まさしくそのとおりだと考える(仲上)
・(Metaverse Japanに対し)まずビジョン・ステートメントがあって、その下にガイドラインが来るというストラクチャーはすっきりしていて良い。今後の具体化に期待してい
るが、具体化するにはサービスとの紐付けが必要になるのかと思う(栄藤)
・(メタバース推進協議会に対し)日本人特有の自然感や倫理感、美意識というところを強調しすぎると、例えば欧米のものとの相互運用性やハーモナイゼーションが難しいと
ころもあるのではないか。どの辺りまで日本特有や日本独自ということを主張して、どの辺りから例えばG7の体制につくかといった観点が問題になってくると思う(大屋)
・民主的価値の主体について、日本に住む人全員ではなく、実際にメタバースを利用している人たちを主体として、自分たちにとっての民主的な仕組みを作るという発想もあ
るかもしれない。追加の論点として、NPCの活用が今後のメタバースの発展に重要ではないかと思っているが、その際に発生しうる、人間とNPCの誤認のような論点も出て
くるかもしれない(安田)
・G7などで民主的価値という時の「民主的」とは政治体制としての民主制ではなく、もっと根源にある社会の中で重要視される価値の話だと思うので、アバターに参政権や意
思決定権を与えるような話にはならないと思う。政府による規制より自主ルールを積み上げたいというニュアンスを強く感じたが、第三者に関わる話については関係者の外側
に対してどのように効果を及ぼすかも問題になるかと思う(小塚)29参考資料:第3回研究会での発表内容及び主な意見
第3回構成員コメント(構成員名(敬称略))
・日本は文化的・宗教的制約の小ささから諸外国に比べて表現の自由度が高い。この高度な表現の自由を享受しているという状況に対して過度な制約が生じ
ないようにすることは重要と思う。また、新たな取引形態である、個人のクリエイターが事業者的な行動を取るような場合の問題への対応として、取引形態や
コンテンツの利用許諾の標準化やパターン化を通じて透明性や予測可能性の向上を図るのが一案である(増田)
・日本特有のメタバース文化は多様性の中で保護されるべきだが、日本だけでなくそれぞれの国の文化が保護された上でグローバリゼーションを図る必要が
ある。日本はボランタリティにあふれたクリエイターが多く、クリエイターのエコノミープラットフォームも諸外国に比べて環境が整っている。メタバース上での
クリエイター保護や利用者とクリエイター同士のトラブル解消等も含めて一定の方向性を出す必要があると思う(仲上)
・民主的価値について考えたとき、「プラットフォーマーのあるべき姿」や「ユーザーに対するガイドライン」がこれまでは頭にあったが、今回の発表を聞いて「コ
ンテンツを作る側・提供する側がどういう態度で臨むのか」は結構大きいと思った。どういうコンテンツを作っていくのかが今後の民主的価値を決めていくの
ではないか。日本のコミケ文化は二次創作が許されている世界だが、一方で例えばVRChatでもそのようなコンテンツが多くある。しかしこれを厳格に取り
締まると日本の良いところがなくなってしまうのではないか。厳格にするかどうかのさじ加減が重要(栄藤)
・国際的な場ではルールや原則的なものが求められる雰囲気を感じるときがある。リアルの世界で居場所がない方にメタバースが使われている、という話を
原則や民主的な価値においてうまく表現できないか悩んでいる。言葉では美しく立派な内容でも、実際の事業者の活動につながらないと意味が無い(小塚)
・メタバース空間内でのアバターの著作権については議論が必要。いわゆる版権もののアバターについては国によって著作権の考え方や利用形態等が異なる。
メタバースはグローバルな場であるため、どう調和を図っていくか。曖昧さが求められる一方、グローバリゼーションにどう折り合いを付けるかが重要(仲上)
一般社団法人日本デジタル空間経済連盟、NPO法人バーチャルライツ、京都府の3者から取組紹介の後、意見交換を実施。
○しろまる一般社団法人日本デジタル空間経済連盟
2022年4月15日に設立。web3の活用によるデジタル空間における経済活動の活性化を目指し、政策提言や情報発信等を行っている。「メタバースリテラ
シー」の向上のため、「メタバース・リテラシー・ガイドブック」(ユーザー向け、事業者向けの2種)を公表。ガイドブックと原則は概ね内容が一致しているものの、
「メタバースビジネスの発展・イノベーションを妨げない範囲での一定の指針(事業者は何ができて、何ができないのか)」、「生体情報の取得、使用、管理に関す
る観点」、「ユーザーの身体への影響について医学的な観点」も踏まえた原則の検討を提言。
○しろまるNPO法人バーチャルライツ
2021年3月29日に設立。VR文化の振興・表現の自由の擁護等を目的に、公益活動、政策提言、情報発信を活動の軸としている。原則に関しては、「日本特有
の事情に合わせた民主的価値の確立」、「行動履歴の適正な取扱い(プライバシーの観点を含む)を踏まえたメタバースの運営」、「子ども・未成年ユーザへの対
応」、「ユーザーの住み分けを適切に行えるような環境整備」、「説明責任と透明性に関する議論・誹謗中傷及び名誉毀損の抑制」、「(クリエイターの創作意欲等へ
の影響を十分留意の上での)クリエイターの事業者責任の明確化」が必要と考えている。
○しろまる京都府
セキュアで信頼できるメタバース空間づくりを自主宣言する指針として「メタバース・トラスト・ステートメント京都宣言」を2023年3月15日に策定し、現在
135団体・企業が賛同中。異分野融合プロジェクトとしてメタバースを活用して、新産業創出に向けた実証等を支援。原則に関しては、「各項目のマーク制定
(SDGs方式)」、「多様性を認めること」が重要と考えている。30参考資料:第4回研究会での発表内容及び主な意見
第4回構成員コメント(構成員名(敬称略))
・今後、メタバースのプラットフォーム、プラットフォーマー、コンテンツはどうあるべきかという議論をする上で、(メタバース教室の様に)具体的に保護者の方
の意見や事例がたくさん見られると良いと思う。今後とも活動を応援したい(栄藤)
・OECDのフォーカスグループでは、ヨーロッパ、EUやイギリスは、没入型技術による未成年に対する影響ということを非常に強く意識して発言をしていた。
報告書のようなものも作られており、私どもとしても調査研究していく必要があると感じた(小塚)
・メタバースというキーワードでいろいろ考えるときに、住み分けしないといけない部分と幅広く捉えていかなければいけない部分があるのかなと、国際的な
動きを見て思った(仲上)
・メタバース関係では、知財は確かにイノベーション促進に位置づけられるが、信頼性向上の中でも関係する項目があれば(例えばアバター絡み)、入れて頂く
案もあるかと思う(石井)
・事後対応(典型的にはプライバシー侵害、誹謗中傷、なりすまし等に対する被害者救済等)を適切に実施すべき旨の項目を入れて頂くことが考えられる(石井)・メタバースを運営する営利的民間事業者も消費者的価値は当然尊重するだろうが、民主的価値を尊重するインセンティブが自ずと働くと考えにくい。民主的
価値を掲げる意義として前文などでもう少しはっきり打ち出せないか(辻)
・(前文について)物理空間に重きが置かれているが、物理空間とメタバース空間との関係性はより対等なものとして扱われていると理解しており、ニュートラ
ルな表現にするべき(増田)
・アバターと中の人の属性が異なることにも留意が必要であり、アバターを通じた交流によって中の人に対して差別的なことが行われてはならない(大屋)
・メタバース関連サービス提供者という言葉をもう少しリファインしたほうが良い。担当者から見て自分はこの原則の中でどこに当てはまるのかということが
重要。(江間)
東京都から取組紹介、PwC及び事務局からメタバースの海外動向に関する調査報告、事務局からメタバースの原則(1次案)を説明の上、意見交換を実施。
○しろまる東京都
東京都 生活文化スポーツ局 都民安全推進部にて、「メタバース教室」を2023年11月11日に開催。メタバースについて青少年の適正利用の啓発のための
先駆的な取組として実施。小学4年生以上高校3年生以下の青少年及びその保護者等を対象とし、メタバースの体験を通じた有用性・利便性等の紹介、及びメ
タバース上で起こり得る問題や対処法の紹介を行った。今後も引き続き青少年を中心とした適正利用の啓発に取組もうとしている。
○しろまるメタバースの海外動向に関する調査報告
PwCからメタバースに関する海外動向調査を、事務局からメタバースに関する国際的な共通認識の形成に向けた総務省の取組を報告。海外動向調査として
は、諸外国の主要プレイヤー毎の提供サービス一覧や各国政府関連機関の取組状況、メタバースに関する標準化の動向等を紹介。総務省の取組としては、
OECD及びITU-T(FG-MV)の最近の動向と、それぞれの活動での総務省の取組を紹介。
○しろまるメタバースの原則(1次案)について
事務局より、第1回から第3回までの研究会でのご意見を踏まえたメタバースの原則(1次案)を説明。メタバースについての基本的な考え方、原則の位置づけ
を記載する「前文」と、メタバース関連サービス提供者の役割を記載する「原則」を整理。原則は「メタバースの自主・自律的な発展に関する原則」と、「メタバース
の信頼性向上に関する原則」の2つに分けて整理した。31第3章
メタバースに関する技術動向等32(1)VR・AR等デバイスの動向等
○しろまる 国内における直近のVRデバイスの販売台数は40万台〜50万台程度であり、VR・ARデバイスの市場に関す
るレポートから今後は年率30%以上で成長する見込みとなっている。ARデバイスについては直近でVRデバイ
スよりも販売台数の規模が小さいものの、今後高い成長率が見込まれている。
○しろまる ユーザ層に関しては、米国では若年層のVRヘッドセット所有率が33%、週間利用率が13%という調査があり、
若年層を中心にVRデバイスが浸透していると考えられる。
(出典)第7回研究会 株式会社日本総合研究所御発表資料33(1)VR・AR等デバイスの動向等
○しろまる 「没入型・ビデオシースルー型」と「光学シースルー型」それぞれの状況について、価格、表示系(視野角・解像度)、
重量、その他の動向について整理を実施。
(出典)第7回研究会 株式会社日本総合研究所御発表資料34(2)VR・AR等を用いたメタバースの利活用と課題
○しろまる VR・AR等を用いたメタバースの利活用に際し、現在どのような影響・課題が指摘されているか、留意・着目す
べき課題は何かを整理。
○しろまる 文献や有識者のヒアリング等で得られた情報を元に整理すると、「身体的な影響・課題」、「精神的な影響・課題」、
「利用者のプライバシーに関する影響・課題」等、様々な観点で検討・指摘がなされている。
(出典)第7回研究会 株式会社日本総合研究所御発表資料35(2)VR・AR等を用いたメタバースの利活用と課題
○しろまる 列挙した課題のうちVR・AR等を用いたメタバースに特有の影響・課題を抽出し、事業者や有識者へのヒアリ
ングを通じて特に今後の実施が期待される対策を整理。
○しろまる 未だはっきりと解明されていないVR・AR等を用いたメタバースサービス・コンテンツによる身体・感覚・行動
への影響の仕組みやリスクの明確化及びこれらに関する教育と、コンテンツ提供者へのベストプラクティスの共
有について、今後の実施が期待される。
(出典)第7回研究会 株式会社日本総合研究所御発表資料36(3)デバイスの進化を踏まえたUI・UXの変化とその影響
<VR・AR等における入力・出力デバイスの開発動向>
●くろまる 入力デバイスは、現状のコントローラでの直感的な操作の難しさ(例えば物を掴む動作に難しさを感じるなど)を受け、ハンドト
ラッキングやアイトラッキング、音声認識など、体の動きの検知によってより直感的なアバター操作を実現する方向性となってお
り、今後の操作性の向上が見込まれる。出力デバイスは、より現実同様の体験ができるよう、アイトラッキングによる常に鮮明な
映像の維持や、立体音響の精度向上による没入感の向上、手袋型のデバイスなどによる仮想空間上の触覚の再現など、より没入
感を増す表現を実現する方向性となっており、今後の表現力の向上が期待される。
<デバイスの開発動向から想定される社会への影響>
●くろまる 操作性の向上から想定される影響として、VR酔いの低減や、より没入感の高い体験が得られると考えられる。一方、コンテンツ
開発負荷の増加や、所持デバイスの差によるメタバース体験の格差などが生じ得ると考えられる。メタバース上での社会形成の
観点では、高齢者や障がい者等の新たな活躍の場としてメタバース上での社会参画が増加する可能性がある一方、メタバース上
での生活時間が増える事による物理空間でのコミュニケーション低下や、メタバース上で形成された社会におけるいじめ・ハラス
メントが生じる可能性もある。業務においては、例えば製造業などにおける設計でメタバースを利活用することで、付加価値向上
も想定される。
<表現力の向上による社会への影響>
●くろまる よりリアルなNPCによる没入体験の向上や、アバターの外見が行動や認知に影響を及ぼすプロテウス効果等を用いた、物理世
界だけでは実現できないトレーニングや心理療法による、身体能力向上や精神状態の改善が考えられる。一方、もしそれらの技
術が悪用された場合は、NPCによるナッジの影響や、フィルターバブル・エコーチェンバー等が発生する可能性、身体能力や精神
状態への負の影響が生じる可能性もある。37(3)デバイスの進化を踏まえたUI・UXの変化とその影響
(出典)第7回研究会 株式会社日本総合研究所御発表資料より一部編集
○しろまる 以下のように、UI・UXの変化に伴う影響については、正と負の両面が想定されることから、
正の影響を増大させ、負の影響を最小化していくことが期待される。38第4章
メタバースに関する様々な利活用事例
41
第5章
今後の検討事項