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規制の事前評価書(簡素化)
法律又は政令の名称:危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等
規 制 の 名 称:蓄電池により危険物を貯蔵する屋内貯蔵所の床面積等の緩和
規 制 の 区 分:新設、改正(拡充、緩和)
、廃止) (注記)いずれかにしろまる印を付す。
担 当 部 局 :総務省消防庁予防課危険物保安室
評 価 実 施 時 期:令和5年8月
1 簡素化した規制の事前評価の該当要件
1 簡素化した規制の事前評価の該当要件
規制の事前評価を行うことが義務付けられている政策のうち、以下の表1に掲げるi〜vii
のいずれかの要件に該当する政策は、簡素化した評価手法を適用できる。
簡素化した規制の事前評価を行う場合、
該当する要件を明らかにした上、
当該要件を満たし
ていることをいずれかの項目において説明すること。
該当要件:ii
(注記) 以下の表1を確認の上、該当する要件の番号を記載すること。
表1:簡素化した規制の事前評価の該当要件
番号 該当要件i規制の導入に伴い発生する費用が少額
遵守費用が年間 10 億円((注記))未満と推計されるもの。
(注記) 設備投資に関しては、一定の設備投資を伴う規制の場合は、初年度を中心とした設備投
資額の総額を対象とする。また、初期の設備投資を必要としない規制の場合は、10 年間程
度の設備の維持管理費用の総額を目安とする。
くろまる 「3. 直接的な費用の把握」4において、金銭価値化した遵守費用を記載するこ
と。ii規制緩和措置であり、副次的な影響が無視できるもの
・ 副次的な影響が十分に小さいことが予想されるもの。
・ 副次的な影響を小さくするための行政による監視措置が十分に考慮されているも
の。ただし、行政費用が大きく増加することが予想される場合は、簡素化した評価の
中で、行政費用は可能な限り定量化して推計することが望まれる。
くろまる 「4.副次的な影響及び波及的な影響の把握」6において、副次的な影響(社会に
対する負の影響)が小さいことを記載すること。
- 2 -iii国際条約批准に伴う規制であって裁量余地のないもの
国際条約の批准に伴い、我が国において履行するため導入することとした規制であ
って、批准国として裁量の余地がなく機械的に整備するものであるもの。
くろまる 「2.規制の目的、内容及び必要性」3において裁量余地がないこと及び「3. 直
接的な費用の把握」4において金銭価値化した遵守費用の推計を記載すること。iv国内法に基づく下位法令により導入される規制であって裁量余地のないもの
我が国の法律により規制を導入されることが決定されているものの、具体的要件に
ついては政令に委任されていることに伴い導入される規制であって、裁量の余地がな
く機械的に整備するものであるもの。
くろまる 「2. 規制の目的、内容及び必要性」3において裁量余地がないこと及び「3. 直
接的な費用の把握」4において金銭価値化した遵守費用の推計を記載することv科学的知見に基づき導入される規制であって、行政裁量の余地がないもの
研究者等専門家の知見や実証実験結果といった科学的知見を根拠に導入される規制
であって、その内容、度合い等について行政の裁量余地がないもの。
ただし、規制の導入により副次的な影響(重要な効果(便益)の喪失、重要な行動変
容(代替)等)
((注記))が発生する可能性があるものについては適用しない。
(注記) 例えば、ある物質を規制することで、これまで医療用途など有益な用途に使っていたもの
が使えなくなる、代替された別物質がまた異なる影響を及ぼす可能性が高いなどが想定され
る。
くろまる 「2. 規制の目的、内容及び必要性」3において科学的知見の根拠並びに裁量余地
がないこと及び「4.副次的な影響及び波及的な影響の把握」6において副次的な影
響(重要な効果(便益)の喪失、重要な行動変容(代替)等)がないことを記載する
こと。vi何らかの理由により緊急時に導入することとされたもの
事前評価に時間を割けない合理的理由がある場合に、
避難的措置として、
簡素化した
評価を実施し、最低限の説明責任を果たすもの。ただし、一定期間(3 か月〜半年程度
経過)後に、本来行われるべき事前評価を行うものとする。
くろまる 「2.規制の目的、内容及び必要性」3において、緊急的に導入する理由を記載す
ること。vii規制を導入する時点では、規制の対象・範囲が予測又は特定できないもの
・ 災害発生時に発動される規制のように、
事態発生を想定して事前に導入する規制の
場合、これは、発生しない限りはその適用度合い等が予測できず、十全の事前評価を
行うことに限界があるもの。
・ 消費者や商取引者の保護のため、
適切な商取引を確保することを意図した規制のよ
うに、規制の導入の際にあらかじめ違法又は脱法による商取引を行っている者の総
数等を把握することが困難なもの。
くろまる 「2.規制の目的、内容及び必要性」3において、規制の対象・範囲が予測又は特
定できない理由を記載すること。
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2 規制の目的、内容及び必要性
2 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)
「規制の新設又は改廃を行わない場合に生じると予測される状況」について、明確かつ簡
潔に記載する。なお、この「予測される状況」は 5〜10 年後のことを想定しているが、課題
によっては、現状をベースラインとすることもあり得るので、課題ごとに判断すること。
(現状をベースラインとする理由も明記)
リチウムイオン蓄電池については、2050 年カーボンニュートラルを目指して普及拡大が推進
されているところであり、その普及拡大に向けて大量の蓄電池を効率よく保管するため、大規模
な貯蔵所の建設が求められている。
リチウムイオン蓄電池は、
その電解液が消防法
(昭和 23 年法律第 186 号。
以下
「法」
という。)に定める危険物であるため、危険物の規制に関する政令(昭和 34 年政令第 306 号。以下「令」
という。)で定める技術上の基準を満たす貯蔵所で貯蔵する必要があり、その貯蔵倉庫は平家で
床面積は 1,000 m2までとする等の基準が定められている。
これらの規制について一定の要件を満たす場合は適用しないこととする特例を設ける改正を
行わなければ、
事業者がリチウムイオン蓄電池を貯蔵するための大規模な貯蔵所を建設すること
ができない。特例を設けることにより、リチウムイオン蓄電池の大規模な貯蔵所の建設が可能と
なり、国内のリチウムイオン蓄電池の普及拡大に寄与するものである。
3 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較に
より規制手段を選択することの妥当性))
課題は何か。課題の原因は何か。課題を解決するため「規制」手段を選択した経緯(効
果的、合理的手段として、「規制」「非規制」の政策手段をそれぞれ比較検討した結果、
「規制」手段を選択したこと)を明確かつ簡潔に記載する。
【課題及びその発生原因】
リチウムイオン蓄電池は、その電解液が主に第四類の危険物に該当し、消防法上はガソリンや
軽油と同じ分類の危険物となるため、一定数量(例として第二石油類は 1000 リットル)以上を
貯蔵する倉庫は、令第 10 条において規定する技術上の基準に適合する必要がある。この規制で
は、万が一火災が発生した場合にその被害を局限化することを目的として、同条第 1 項第 4 号で
は軒高 6 メートル未満の平家建てとし、
同項第 5 号では床面積は 1,000 m2を超えないこと等の制
限が設けられており、これらの制限について、国内のリチウムイオン蓄電池普及拡大の観点から
欧米と同等の基準とするよう業界団体から要望が上がっている。
要望が上がる要因として、米国や欧州では、リチウムイオン蓄電池を保管する倉庫について、
床面積等を制限する規制がなく、大型の倉庫が建設可能となっていることがある。このため、国
内においても面積等の制限を撤廃し、大型の倉庫が建築できるようにすることについて、安全性
の確保を前提に欧米と同等の規制とすることについて検討することとして
「リチウムイオン蓄電
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池に係る火災予防上の安全対策に関する検討会」(座長:三宅淳巳 横浜国立大学 理事・副学
長。以下単に「検討会」という。
)を開催した。
【課題解決手段の検討】
検討会では、実証実験を行い、安全対策について検討を行った結果、欧米での保険の加入条件
(以下「欧米の基準」という。)として設置が求められているスプリンクラー設備と同等以上の
放水性能があり、リチウムイオン蓄電池の貯蔵方法も欧米の基準と同等であれば、リチウムイオ
ン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所の面積、
階数及び軒高の制限を緩和しても火災安全性が確保され
るとの結論が得られた。
そのため、令を改正し、一定の要件を満たす場合に屋内貯蔵所の面積、階数及び軒高の制限に
係る規定等を適用しないこととする特例を設ける改正が必要である。
【規制以外の政策手段の内容】
製造所等の位置、構造及び設備の基準については、当該基準による場合と同等以上の効力があ
ると市町村長等が認めるときにおいては、当該基準を適用しないことができる特例が、危険物の
規制に関する政令第 23 条に規定されている。
ただし、この規定を適用するか否かは各市町村長の判断に委ねられ、また、特例の適用基準は
市町村ごとに異なることとなるため、全国一律に同様の基準を設けることは困難である。リチウ
ムイオン蓄電池の普及拡大をはかっていくためには、令を改正し、全国一律に新しい基準を適用
させることが必要である。
また、火災安全性の観点からも、一定の要件を満たした場合にスプリンクラー設備による消火
が可能であることは検討会を通じて確認されており、規制の緩和が必要である。
【規制の内容】
リチウムイオン蓄電池のみを貯蔵する屋内貯蔵所について、危険物の規制に関する規則(昭和
34 年総理府令第 55 号。以下「規則」という。)で定める以下の措置を講じた場合は、令第 10 条
第1項第4号から第6号までの基準等を適用しないこととすることができるようにする特例を
設ける(改正後の令第 10 条第6項及び第 20 条第3項・規則第 16 条の2の7から第 16 条の2の
12 まで及び第 35 条の2等)。
(1) 欧米のリチウムイオン蓄電池の倉庫に設けられるスプリンクラー設備と同等以上の放水
性能を有するスプリンクラー設備を設置すること。
(2) リチウムイオン蓄電池の貯蔵方法についても、欧米と同等の貯蔵方法とすること。
(3) 屋内貯蔵所は、長時間の火災に耐えられるように耐火構造とすること。
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3 直接的な費用の把握
4 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)
「遵守費用」、「行政費用」について、それぞれ定量化又は金銭価値化した上で推計すること
が求められる。しかし、全てにおいて金銭価値化することなどは困難なことから、
規制を導入
した場合に、国民が当該規制を遵守するために負担することとなる「遵守費用」については、
特別な理由がない限り金銭価値化を行い、少なくとも定量化して明示する。
新規に建設する蓄電池により危険物を貯蔵する屋内貯蔵所について、
本件屋内貯蔵所の床面積
の緩和等による遵守費用としては、スプリンクラー設備の設置費用があり、新規に蓄電池を貯蔵
する屋内貯蔵所を建設する場合、土地の購入費や建物の建設費のほか、スプリンクラー設備の設
置に係る材料費や工事費が想定される。しかし、その費用は建設場所の土地価格、建築物の規模
及び数等により左右されるため、改正前との比較は難しく、定量的な把握が困難である。
なお、蓄電池により危険物を貯蔵する屋内貯蔵所については、現段階では統計資料がなく、そ
の数を把握することは困難である。また、参考として、一般社団法人電池工業会によるとリチウ
ムイオン蓄電池の販売数は、
過去5年間において年間平均約4億個販売されており、
今後も 2050
年カーボンニュートラルに向け、リチウムイオン蓄電池の需要は高まってくるものと考えられ、
それに伴い、蓄電池により危険物を貯蔵する屋内貯蔵所の需要も高まってくるものと考えられ
る。
5 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、
「行政費用」の増加の可能性に留意
規制緩和については、単に「緩和することで費用が発生しない」とするのではなく、緩和
したことで悪影響が発生していないか等の観点から、行政としてモニタリングを行う必要が
生じる場合があることから、当該規制緩和を検証し、必要に応じ「行政費用」として記載す
ることが求められる。
今般の改正により新たに建設される蓄電池により危険物を貯蔵する屋内貯蔵所での火災件数
は、既存の制度である消防本部からの火災報告により確認及び検証することが可能であるた
め、新たなモニタリングの必要性は生じない。
今回の改正は、事業者からの要望に基づくものであり、かつ、リチウムイオン蓄電池の貯蔵
を行う事業者にしか関係しないことから、一般社団法人電池工業会等を通じて制度の周知・啓
発を行えば十分であり、一般向けの周知用ポスターやパンフレット等を作成する予定はない。
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4 副次的な影響及び波及的な影響の把握
6 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握するこ
とが必要
副次的な影響及び波及的な影響を把握し、記載する。
(注記) 波及的な影響のうち競争状況への影響については、
「競争評価チェックリスト」の結
果を活用して把握する。
副次的な影響及び波及的な影響について、本改正後によって新たに導入される規定は、既存事
業者と新規参入者との間で差異がない。また、既存の屋内貯蔵所について、改正後も基準を選択
しない限り、改修の必要性は生じないため、本改正により事業者が負担する新たなコストは発生
しない。よって、競争に負の影響を及ぼすものではない。
安全面については、検討会において検討を行った結果、消火実験で使用したスプリンクラー設
備と同等以上の放水性能があり、貯蔵方法も同等であれば、リチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋
内貯蔵所の面積、
階数及び軒高の制限を緩和しても安全性が確保されると考えられるとの結論に
至った。火災が発生した場合は、スプリンクラー設備が有効に機能することで、その被害を最小
限に抑えることができ、消防本部への影響は少ないと考えられる。
なお、具体的な検討内容については、リチウムイオン蓄電池に係る火災予防上の安全対策に関
す る 検 討 報 告 書 ( https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-
108/03/houkokusyo.pdf)にまとめている。
5 その他の関連事項
7 評価の活用状況等の明記
規制の検討段階やコンサルテーション段階で、
事前評価を実施し、
審議会や利害関係者から
の情報収集などで当該評価を利用した場合はその内容や結果について記載する。
また、
評価に
用いたデータや文献等に関する情報について記載する。
検討会において得られた結論を踏まえ、改正を行うもの。
なお、評価事項である副次的な影響及び波及的な影響(46欄記載)である火災安全性の確保
に係る検証に関する結果等は、以下の検討会資料にてまとめている。
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/post-108.html
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6 事後評価の実施時期等
8 事後評価の実施時期の明記
事後評価については、規制導入から一定期間経過後に、行われることが望ましい。導入した
規制について、費用及び間接的な影響の面から検証する時期を事前評価の時点で明確にして
おくことが望ましい。
なお、実施時期については、規制改革実施計画(平成 26 年 6 月 24 日閣議決定)を踏まえる
こととする。
本改正の施行状況を踏まえ、施行後概ね5年以内に事後評価を実施し、必要があると認めると
きは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
9 事後評価の際、費用及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確に
する。
事後評価の際、
どのように費用及び間接的な影響を把握するのか、
その把握に当たって必要
となる指標を事前評価の時点で明確にしておくことが望ましい。
規制内容によっては、
事後評
価までの間、
モニタリングを行い、
その結果を基に事後評価を行うことが必要となるものもあ
ることに留意が必要
消防本部からの火災報告により、リチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所の火災につい
て、その件数、焼損面積、損害額、詳細な出火原因等を分析することにより把握を行う。
また、
本規制緩和を適用して設置された屋内貯蔵所数について、
消防本部を通じた把握を行う。
なお、事前評価時点では、34のとおり、遵守費用の定量的な把握が困難であるため、改正後に
リチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所の設置者における遵守費用が過度な負担となって
いないかについても把握する。

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