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規制の事前評価書
法律又は政令の名称:危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令案
規 制 の 名 称:危険物の取扱いの技術上の基準の追加
規 制 の 区 分:新設、改正(拡充、緩和)
、廃止 (注記)いずれかにしろまる印を付す。
担 当 部 局:総務省消防庁予防課危険物保安室
評 価 実 施 時 期:令和元年 10 月
1 規制の目的、内容及び必要性
1 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)
「規制の新設又は改廃を行わない場合に生じると予測される状況」について、明確かつ簡
潔に記載する。なお、この「予測される状況」は 5〜10 年後のことを想定しているが、課題
によっては、現状をベースラインとすることもあり得るので、課題ごとに判断すること。
(現状をベースラインとする理由も明記)
ガソリンは国民生活に不可欠なものとなっており、広く流通しているものであるが、引火点が
低く、ひとたび着火すれば極めて重大な被害を伴うおそれがあるため、取扱いには十分な注意が
必要である。
ガソリンの容器への詰替え販売に当たっては、危険物の取扱いの技術上の基準として、消防法
令に適合し安全性の確認された容器への収納が義務付けられているが、
その使用目的等について
販売時に確認することは義務付けられていない。
今回の規則改正では、ガソリンスタンド事業者に対し、ガソリン販売時に使用目的等の確認を
義務付ける。このような義務付けを行わない場合、犯罪目的など本来の用途以外の目的での購入
を看過してしまうおそれがある。
2 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較に
より規制手段を選択することの妥当性)
課題は何か。課題の原因は何か。課題を解決するため「規制」手段を選択した経緯(効果
的、合理的手段として、「規制」「非規制」の政策手段をそれぞれ比較検討した結果、「規
制」手段を選択したこと)を明確かつ簡潔に記載する。
【課題及び課題発生の原因】
令和元年7月 18 日、京都府京都市伏見区において死者 36 名、負傷者 32 名(容疑者1名を含
まず。
)の極めて重大な人的被害を伴う爆発火災が発生した。この火災の詳細は調査中であるが、
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容器に詰め替えて携行したガソリンをまいて火をつけたものとみられている。
これを受け、同月 25 日、消防庁から各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・指定都市消
防庁、石油連盟及び全国石油商業組合連合会に対し、1ガソリンの容器への詰め替え販売を行う
場合には、消防法令に適合した容器を用いて行うなど消防法令の遵守を徹底するとともに、2購
入者に対する身分証の確認や使用目的の問いかけ、
当該販売記録の作成を行うよう要請を行った
ところ。
今回は、当該要請事項のうち、現行で義務付けされていない上記2について義務化し、同種事
案の発生抑止を図るものである。
【課題解決手段の検討】
非規制による課題解決として、現在、ガソリンスタンド事業者において任意で使用目的の確認
等がなされているが、あくまで自主的な取組にとどまっており、実効性の確保のために義務付け
が必要である。
2 直接的な費用の把握
3 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)
「遵守費用」、「行政費用」について、それぞれ定量化又は金銭価値化した上で推計すること
が求められる。しかし、
全てにおいて金銭価値化するなどは困難なことから、規制を導入した
場合に、国民が当該規制を遵守するため負担することとなる「遵守費用」については、特別な
理由がない限り金銭価値化を行い、少なくとも定量化して明示する。・「遵守費用」について
改正後は、
ガソリンの容器詰替え販売に当たり、
1顧客に身分を証明する書類
(運転免許証等)
の提示を求めるとともに、2顧客から使用目的を聞き取った上で販売し、3いつ誰が何の目的で
どれくらいの量のガソリンを購入したかを PC に入力又は紙に記録して保存するという作業の発
生が想定される。このように事務負担は増加するものの、従来の業務に付随して行われるもので
あるから、人件費等の増加は僅少であると想定される。・「行政費用について」
国から消防機関等の関係行政機関に対する制度改正の周知・徹底、消防機関等の関係行政機関
からガソリンの容器詰替え販売を行うガソリンスタンド事業者への制度改正の周知・徹底を行う
ほか、
ガソリンの容器詰替え販売を行っているガソリンスタンドにおいて適切に本人確認等が行
われているかの確認業務が発生する。
この行政費用についても、1前述の本年7月の火災以後、本人確認等の要請を関係各所に既に
行っていたことから一定の認知度があること、
2新たに義務が生じたガソリンスタンドにおいて
適切に本人確認等が行われているかの確認は、
各自治体の消防機関が従前危険物施設全般に対し
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て行ってきた立入検査等において追加的に実施するものであることから、限定的といえる。
4 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、
「行政費用」の増加の可能性に留意
規制緩和については、単に「緩和することで費用が発生しない」とするのではなく、緩和
したことで悪影響が発生していないか等の観点から、行政としてモニタリングを行う必要が
生じる場合があることから、当該規制緩和を検証し、必要に応じ「行政費用」として記載す
ることが求められる。
規制緩和に該当しない。
3 直接的な効果(便益)の把握
5 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要
規制の導入に伴い発生する費用を正当化するために効果を把握することは必須である。定
性的に記載することは最低限であるが、可能な限り、規制により「何がどの程度どうなるの
か」
、つまり定量的に記載することが求められる。
使用目的等の確認により、不適切な目的によってガソリンを購入することが抑止され、ひいて
は重大な火災を抑止し、人的・物的被害を防ぐことができる。
6 可能であれば便益(金銭価値化)を把握
把握(推定)された効果について、可能な場合は金銭価値化して「便益」を把握すること
が望ましい。
抑止する火災(人的、物的被害等)の効果を金銭価値化することは困難である。
7 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計
規制の導入に伴い要していた遵守費用は、緩和により消滅又は低減されると思われるが、
これは緩和によりもたらされる結果(効果)であることから、緩和により削減される遵守費
用額は便益として推計する必要がある。また、緩和の場合、規制が導入され事実が発生して
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いることから、費用については定性的ではなく金銭価値化しての把握が強く求められてい
る。
規制緩和に該当しない。
4 副次的な影響及び波及的な影響の把握
8 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握するこ
とが必要
副次的な影響及び波及的な影響を把握し、記載する。
(注記) 波及的な影響のうち競争状況への影響については、
「競争評価チェックリスト」の結
果を活用して把握する。
今回の改正で、ガソリンスタンド事業者に対する義務付けに伴い、顧客自身も身分証等の提示
と使用目的の回答が求められることを通じて、ガソリンの危険性に関する理解の醸成とともに、
本年7月に発生したような重大な人的被害を伴う火災の抑止につながることが期待される。
5 費用と効果(便益)の関係
9 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化で
きるか検証
上記2〜4を踏まえ、費用と効果(便益)の関係を分析し、記載する。分析方法は以下の
とおり。
1 効果(便益)が複数案間でほぼ同一と予測される場合や、明らかに効果(便益)の方
が費用より大きい場合等に、効果(便益)の詳細な分析を行わず、費用の大きさ及び負
担先を中心に分析する費用分析
2 一定の定量化された効果を達成するために必要な費用を推計して、費用と効果の関係
を分析する費用効果分析
3 金銭価値化した費用と便益を推計して、費用と便益の関係を分析する費用便益分析
上述のとおり、今回の改正で新たに発生する遵守費用や行政費用は限定的である一方で、不適
切な目的によるガソリンの購入、ひいては、重大な人的・物的損失を伴う火災の発生の抑止が図
られるという効果が得られることに鑑みると、便益が費用を上回るものと考えられることから、
規制の拡充は妥当であると言える。
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6 代替案との比較
10 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から
比較考量し、採用案の妥当性を説明
代替案とは、
「非規制手段」や現状を指すものではなく、規制内容のオプション(度合
い)を差し、そのオプションとの比較により導入しようとする規制案の妥当性を説明する。
代替する規制案として、
事前に登録した者や許可を得た者のみに販売を制限することが考えら
れるが、ガソリンは自動車燃料のほか、農業機械や除雪機、可搬型の発電機等の燃料として広く
利用されているものであり、販売自体を制限することは国民生活に及ぼす影響が大きいため、よ
り緩やかな規制である本案が妥当である。
7 その他の関連事項
11 評価の活用状況等の明記
規制の検討段階やコンサルテーション段階で、
事前評価を実施し、
審議会や利害関係者から
の情報収集などで当該評価を利用した場合は、その内容や結果について記載する。また、評価
に用いたデータや文献等に関する情報について記載する。
検討段階やコンサルテーション段階で事前評価を実施していない。
8 事後評価の実施時期等
12 事後評価の実施時期の明記
事後評価については、規制導入から一定期間経過後に、行われることが望ましい。導入した
規制について、費用、効果(便益)及び間接的な影響の面から検証する時期を事前評価の時点
で明確にしておくことが望ましい。
なお、実施時期については、規制改革実施計画(平成 26 年 6 月 24 日閣議決定)を踏まえる
こととする。
本改正の施行状況を踏まえ、施行後概ね5年以内に事後評価を実施し、必要があると認めると
きは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
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13 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあら
かじめ明確にする。
事後評価の際、どのように費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するのか、その把握
に当たって必要となる指標を事前評価の時点で明確にしておくことが望ましい。規制内容に
よっては、
事後評価までの間、モニタリングを行い、その結果を基に事後評価を行うことが必
要となるものもあることに留意が必要
事業者等へのヒアリングを通じて、
本人確認等の一連の作業において支障があるとすればそれ
は何かを把握し、必要な検討を行う。

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