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行政手続法の施行状況に関する調査結果
- 国の行政機関 -
平成29年3月
総 務 省
第1 調査の目的・調査対象機関等
1 調査の目的、時点
本調査は、行政手続法(平成5年法律第 88 号)の施行状況として、審査基準・標準処
理期間・処分基準の設定状況、処分等の求めへの対応状況、意見公募手続等の実施状況等
(注記)
について、平成 28 年3月 31 日現在の状況を調査したものである。
本調査の結果は、
今後、
行政手続法のより円滑かつ的確な施行に資するよう活用してい
くものである。
(注記) 行政手続法の一部改正(平成 27 年4月施行)を踏まえ、
「行政指導の中止等の求め」
や「処分等の求め」への対応状況等の調査項目を、また、平成 27 年3月に発出された
運用改善通知「行政手続法第六章に定める意見公募手続等の運用の改善について」(平成 27 年3月 26 日 総管管第 29 号)を踏まえ、意見公募手続等の結果の公示や意見提
出の考慮に関する調査項目を追加した。
2 調査対象機関(全府省等)
〔別表〕
調査対象とした国の行政機関は、本省等(25 機関)
(全調査項目)及び東京都を管轄区
域とする地方支分部局の一部(14 機関)
(意見公募手続等及び任意の意見募集に関する調
査項目を除く。
)である。
3 調査項目
(1)申請に対する処分
1 審査基準の設定状況、公にしている状況
2 標準処理期間の設定状況、公にしている状況
(2)不利益処分
1 処分基準の設定状況、公にしている状況
2 不利益処分をしようとする場合に執るべきこととされている聴聞・弁明手続の実
施状況
(3)行政指導
1 行政指導の書面の交付状況
2 許認可等に関する権限の根拠等の明示の実施状況
3 行政指導指針の公表状況
4 行政指導の中止等の求めへの対応状況
(4)処分等の求め
処分等の求めへの対応状況等
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(5)意見公募手続等及び任意の意見募集の状況等
1 行政手続法に基づく意見公募手続等の状況
2 任意の意見募集の状況
(6)参考
行政機関による法令適用事前確認手続の実施状況
〔注〕
・審査基準、標準処理期間及び処分基準の設定状況は、
平成 26 年度及び 27 年度の2か年
に新設された処分(申請に対する処分及び不利益処分)を調査対象とした。
・聴聞・弁明手続、行政指導の書面の交付状況及び行政指導指針の公表状況は、平成 27
年度(1か年)について調査した。
・意見公募手続等及び任意の意見募集の状況等は、平成 27 年度(1か年)について調査
した。
・行政機関による法令適用事前確認手続の実施状況は、平成 21 年から同 27 年までにつ
いて調査した。
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第2 調査結果
I 申請に対する処分、不利益処分及び行政指導に関する手続
1 申請に対する処分
(1)審査基準の設定状況
行政庁は、審査基準を定めるものとする。
(法第5条第1項)
しろまる 審査基準
申請により求められた許認可等(行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対
し何らかの利益を付与する処分をいう。
以下同じ。)をするかどうかをその法令の
定めに従って判断するために必要とされる基準
しろまる 処 分
行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為
しろまる 申 請
法令に基づき、許認可等を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾
否の応答をすべきこととされているもの
行政庁は、許認可等をするかどうかを法令の定めのみによって判断することができ
る場合は、判断基準が法令の定めに尽くされているので、別途、審査基準を定めるこ
とを要しない。また、許認可等の性質上、個々の申請について個別具体的な判断をせ
ざるを得ないものであって、法令の定め以上に具体的な基準を定めることが困難であ
ると認められる場合にも、審査基準を定めることを要しない。
加えて、処分の先例がないか、稀であるもの又は当面申請が見込まれないものであ
って、審査基準を法令の定め以上に具体化することが困難な場合には、当面は、審査
基準を定めることを要しない。
平成 26 年度及び 27 年度の2か年に新設された処分(申請に対する処分)に係る審
査基準の設定状況は、表1のとおりで、新設された 154 種類(本省等及び調査対象地方
支分部局(以下単に「地方支分部局」という。
)の合計)の処分のうち、審査基準を設
定しているものは 80 種類(52.0%)であり、法令に判断基準が定め尽くされている 41
種類(26.6%)と合わせると、121 種類(78.6%)である。
設定が困難であるとして審査基準を設定していないものは 33 種類
(21.4%)
である。
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II 意見公募手続等及び任意の意見募集の状況等
意見公募手続等(行政手続法第 39 条第1項に基づき行われた意見公募手続及び同法第
40 条第2項に基づき委員会等により行われた意見公募手続に準じた手続。以下同じ。)については、制度のより適正な運用を確保する観点から、平成 27 年3月に「行政手続法第
六章に定める意見公募手続等の運用の改善について」
(平成 27 年3月 26 日総管管第 29 号
総務省行政管理局長通知。以下「運用改善通知」という。
)を発出し、結果の公示は原則
として命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。以下同じ。
)と同日
かそれ以前に行うこと、
提出意見数に応じて確保すべき意見考慮期間等について定め、その運用改善を図ることとした。
II-1 行政手続法に基づく意見公募手続等の状況
1 意見公募手続等の状況
(1)意見公募手続等及び命令等の数
(注)
「同条第1項」
・・・第 39 条第1項
意見公募手続等を実施して平成27年度に公布された命令等(平成28年3月31日まで
に命令等を定めないこととした場合を含む。以下同じ。
)の公示件数(以下「平成27
年度に実施した意見公募手続等」という。
)は、表13のとおり1,030件であり、同手続
等を経て、公布された命令等の数は、1,609(政令:167、府省令等:615、告示:
457、審査基準:278、処分基準:9、行政指導指針:84)である。
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに
関連する資料をあらかじめ公示し、意見の提出先及び意見の提出のための期間を定め
て広く一般の意見を求めなければならない。
(法第 39 条第1項)
しろまる 命令等
内閣又は行政機関が定める、1法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含
む。
)又は規則、2審査基準、3処分基準、4行政指導指針
しろまる 法律に基づく命令
法律に基づき定められる政令、府省令、
(行政委員会の)規則
しろまる 命令等制定機関
命令等を定める機関(閣議の決定により命令等が定められる場合にあっては、当
該命令等の立案をする各大臣)
命令等制定機関は、委員会等の議を経て命令等を定めようとする場合において、当
該委員会等が意見公募手続に準じた手続を実施したときは、同条第1項の規定にかか
わらず、自ら意見公募手続を実施することを要しない。
(法第 40 条第2項)
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(4)結果の公示状況
ア 命令等の公布から結果の公示までの期間等
平成 27 年度に実施した意見公募手続等 1,030 件について、命令等の公布から結果
の公示(平成 27 年度以降に結果の公示がされたものも含む。
)までの期間は、図1の
とおりであり、命令等の公布の日までに結果の公示をしたもの(図1「結果の公示を
先に実施」及び「同日」の合計)は 992 件(96.3%)である。
結果の公示が命令等の公布よりも遅れた案件数は 38 件(3.7%)であり、このうち
命令等の公布から結果の公示までに5日以上要したものは 21 件
(2.0%)
であった。
これは、平成 25 年度に実施した意見公募手続等では、全 722 件について、公布よ
りも遅れた案件数が 191 件
(26.5%)、このうち5日以上要したものが 75 件
(10.4%)
であったことと比較すると、
運用改善通知により、
命令等の公布から結果の公示まで
の期間等の状況が大幅に改善され、公示が速やかに行われるようになったといえる。
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令
等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為)と同時期に、次に掲げる事
項を公示しなければならない。
1 命令等の題名
2 命令等の案の公示の日
3 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
4 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令
等との差異を含む。
)及びその理由 (法第 43 条第1項)
命令等制定機関は、前項の規定にかかわらず、必要に応じ、同項第三号の提出意
見に代えて、当該提出意見を整理又は要約したものを公示することができる。この
場合においては、当該公示の後遅滞なく、当該提出意見を当該命令等制定機関の事
務所における備付けその他の適当な方法により公にしなければならない。
(法第 43 条第2項)
命令等制定機関は、前二項の規定により提出意見を公示し又は公にすることによ
り第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由があるときは、当該
提出意見の全部又は一部を除くことができる。 (法第 43 条第3項)
命令等制定機関は、意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこ
ととした場合には、その旨(別の命令等の案について改めて意見公募手続を実施し
ようとする場合にあっては、その旨を含む。
)並びに第一項第一号及び第二号に掲げ
る事項を速やかに公示しなければならない。 (法第 43 条第4
結果の公示について、原則として、命令等の公布(公布をしないものにあっては、
公にする行為。以下同じ。
)と同日又はそれ以前に行うこと、やむを得ない理由によ
り、結果の公示が命令等の公布よりも遅れる場合には、命令等の公布の際に、その
理由及び公示日の目途を明らかにすること。
(運用改善通知)
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イ 提出意見の公示状況
「提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
」の公示は、提出意見
を公示することにより第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由
があるときは、当該提出意見の全部又は一部を除くことができることとされている
ところ、平成 27 年度に実施した意見公募手続等 1,030 件のうち、提出意見があった
735 件について公示状況をみると、
「提出された意見(原文)
」を公示しているものは
350 件(47.6%)で、
「提出された意見を整理・要約したもの」を公示しているものは
363 件(49.4%)であり(双方に該当するものもある)
、いずれの公示もしていない
ものは2件であった。
次に、
「提出意見を考慮した結果及びその理由」の公示については、提出意見があ
った 735 件から最終的に命令等を定めなかった8件を除いた 727 件のうち、717 件
(98.6%)が行っていた。
2 命令等の題名・趣旨等の公示のみ実施したものの状況
(注)法第 39 条第4項各号については、参考資料1参照。
(1)命令等の題名・趣旨等の公示のみ実施した件数及び命令等の数
平成 27 年度に公布された命令等のうち、行政手続法第 39 条第4項各号に該当する
ため、意見公募手続を実施せずに公布を行い、
「命令等の題名及び趣旨」及び「意見公
募手続を実施しなかった旨及びその理由」の公示を実施したものは、表 18 のとおり、
536 件である。また、公布を行った命令等の数は 632 である。
命令等制定機関は、
第 39 条第4項各号のいずれかに該当することにより意見公募手
続を実施しないで命令等を定めた場合には、
当該命令等の公布と同時期に、
次に掲げる
事項を公示しなければならない。ただし、
第1号に掲げる事項のうち命令等の趣旨につ
いては、
同項第1号から第4号までのいずれかに該当することにより意見公募手続を実
施しなかった場合において、当該命令等自体から明らかでないときに限る。
1 命令等の題名及び趣旨
2 意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由 (法第 43 条第5項)
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III 今後の対応
本調査の結果として、各調査項目については、概ね適切に運用されているものとい
える。
しかし、以下の事項については、一部に改善を要するものもみられたことから、今
後、
各府省への改善通知の発出及び職員への研修を通じて法の趣旨を周知徹底するこ
とにより改善を図ることとする。
1 審査基準及び処分基準を設定していない処分について、
事例の蓄積等により設
定が可能となり次第設定するとともに、設定している処分については、その内容
が、随時できる限り具体的なものであるよう努める。
2 標準処理期間を設定していない処分については、随時、設定の可否について検
討し、可能なものについては設定する。
3 意見募集手続の結果等の公示について、
公示が命令等の公布よりも遅れる場合
に行うべき「遅れる理由及び公示の目途の明示」が担当職員の認識不足等により
行われていないものが散見されたことから、
職員に対する運用改善通知の内容の
周知を図るとともに、当該明示を徹底する。
IV 参考(行政機関による法令適用事前確認手続の実施状況)
行政機関による法令適用事前確認手続(注1)
は、民間企業等がある行為を行うに際し、
法令に抵触するかどうかの予見可能性を高めるため、当該行為について特定の法令の規
定との関係を事前に書面で当該法令を所管する各府省に照会できるようにするとともに、
行政の公正性を確保し、
透明性の向上を図るため、
当該照会内容と行政機関の回答を公表
するものである。
今回、本手続についても、実施状況をフォローアップしたところ、各府省が、平成 21
年度から同 27 年度までに手続の対象として民間企業等から照会を受けた件数は、手続を
導入している 14 府省(注2)
のうち 12 府省で計 91 件(公正取引委員会2件、国家公安委員
会(警察庁)1件、金融庁 25 件、消費者庁3件、総務省2件、法務省9件、文部科学省
1件、厚生労働省5件、農林水産省1件、経済産業省 18 件、国土交通省 23 件及び環境省
1件)であり、回答を行った案件は、12 府省で計 89 件である。
(注1)
「行政機関による法令適用事前確認手続の導入について」
(平成 13 年3月 27 日閣議決定)
(注2)内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府、宮内庁、個人情報保護委員会、復興庁及び防衛省
は、手続の対象とすべき所管法令がないとして、手続を導入していない。
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別表 調査対象機関一覧
本省等 地方支分部局
内閣官房 -
内閣法制局 -
人事院 -
内閣府 -
宮内庁 -
公正取引委員会 -
国家公安委員会(警察庁) -
個人情報保護委員会
金融庁 関東財務局((注記)金融庁所管関係に限る)
消費者庁 -
復興庁 -
総務省 関東総合通信局
公害等調整委員会 -
法務省 東京法務局
外務省 -
財務省
関東財務局[再掲]
((注記)金融庁所管関係を除く)
東京税関
東京国税局
文部科学省 -
厚生労働省
関東信越厚生局
東京労働局
農林水産省 関東農政局
経済産業省
関東経済産業局
関東東北産業保安監督部
国土交通省
関東地方整備局
関東運輸局
第三管区海上保安本部
環境省 -
原子力規制庁
防衛省 北関東防衛局
会計検査院 -
25 機関 14 機関
(注)1 調査対象とした地方支分部局は、各ブロック機関及び都道府県単位機関のう
ち、東京都を管轄区域とする機関の一部である。
2 本調査における「II 意見公募手続等及び任意の意見募集の状況等」の調査
対象は本省等 25 機関である。

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