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規制の事前評価書
法律又は政令の名称:放送法の一部を改正する法律案
規 制 の 名 称:衛星基幹放送業務の認定要件の追加
規 制 の 区 分:新設、改正(拡充、緩和)
、廃止 (注記)いずれかにしろまる印を付す。
担 当 部 局:総務省情報流通行政局衛星・地域放送課
評 価 実 施 時 期:平成31年 2月
1 規制の目的、内容及び必要性
1 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)
「規制の新設又は改廃を行わない場合に生じると予測される状況」について、明確かつ簡
潔に記載する。なお、この「予測される状況」は 5〜10 年後のことを想定しているが、課題
によっては、現状をベースラインとすることもあり得るので、課題ごとに判断すること。
(現状をベースラインとする理由も明記)
衛星基幹放送(BS・東経 110 度CS。以下同じ。
)における周波数(具体的には衛星放送の
周波数指定の基本単位となるスロット。)については、
視聴可能世帯数が3〜4千万世帯に達しニ
ーズが多いため、既存事業者の使用により逼迫(とりわけ右旋円偏波)し、新規参入等による放
送サービスの多様化・高度化に必要な新たなスロットがない状況にある。
現時点では、デジタル化のような技術革新による指定可能スロットの増加や、国際調整による
新たな周波数の確保が見込めないものの、既存事業者の中には指定後 10 年〜20 年が経過し、放
送機器の性能向上等によって、より効率的な放送の実施が期待される状況にある中、新規参入や
放送サービスの多様化(放送番組の増加等)
・高度化(高画質化等)を図るためには、スロットの
有効利用が必要であるが、
衛星基幹放送の業務の認定の際に事業者が希望する周波数が認定又は
認定の更新の申請に係るサービスに照らして必要十分か否かを検証する仕組みは存在しない。
他方、近年、ブロードバンドの利用の進展によって、OTT(注記)
事業者がインターネット上で動
画コンテンツを提供するようになっており、
これらコンテンツ配信サービスとの競争が激化して
おり、衛星基幹放送において新規参入等による放送サービスの多様化・高度化を促進するために
は、本件規制を導入することにより周波数の有効利用を促進する必要がある。
このように、現行の制度運用を継続し、新規参入の促進等による放送サービスの多様化・高度
化が見込まれず、
衛星基幹放送について市場の活性化や競争力の強化が困難な状況をベースライ
ンとする。
(注記) Over The Top の略。自社では通信ネットワークを持たずにコンテンツ等を配信する事業者。
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【衛星基幹放送の参入状況】 平成 30 年 12 月1日現在
BS 東経 110 度CS
右旋 左旋(注記)1
右旋 左旋(注記)1
事業者数 20 社 5社 20 社 1社
番組数
4K・8K 6番組(4K)(注記)2
4番組(4K) (注記)3
1番組(8K)
‐ 8番組(4K)
HD 28 番組 ‐ 42 番組 ‐
SD 1番組 ‐ 12 番組 ‐
注 データ放送、音声放送を除く。
(注記)1 新 4K8K 衛星放送を実施するために新たに確保した周波数
(注記)2 BS日テレは平成 31 年9月1日より放送開始予定。
(注記)3 WOWOW は平成 32 年 12 月1日より放送開始予定。
2 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較に
より規制手段を選択することの妥当性)
課題は何か。課題の原因は何か。課題を解決するため「規制」手段を選択した経緯(効果
的、合理的手段として、「規制」「非規制」の政策手段をそれぞれ比較検討した結果、「規
制」手段を選択したこと)を明確かつ簡潔に記載する。
【課題及び課題発生の原因】
衛星基幹放送における周波数については、現在、視聴可能世帯数が3〜4千万世帯に達しニー
ズが多いため、既存事業者の使用により逼迫し、新規参入等による放送サービスの多様化・高度
化に必要な新たなスロット(とりわけ右旋円偏波)がない。
衛星基幹放送の業務を行おうとする者は、総務大臣の認定を受けることが必要であり(放送法
(以下「法」という。)第 93 条第1項)、当該認定を受けようとする者は希望する周波数(スロット数等)
を申請し(同条第2項第5号)、当該認定は周波数(スロット数等)を指定して行うこととされており
(法第 94 条第1項第3号)、また、当該認定は、5年ごとに更新しなければその効力を失うこととされ
ている(法第 96 条第1項)が、現行制度では、事業者が希望する周波数(スロット数等)が申請に係
るサービスに照らして必要十分か否かを審査の対象としていない。
これらを受け、規制改革推進会議「規制改革推進に関する第3次答申」
(平成 30 年6月)にお
いて、
衛星基幹放送の業務の認定及び5年毎の更新に際してスロットの有効利用を検証する仕組
みを導入する等、所要の制度整備を行うこととされた。
【規制の内容】
総務大臣が衛星基幹放送の業務の認定及び認定の更新を行う際に、事業者が希望する周波数
が、申請に係るサービスに照らして必要十分か否かを審査する根拠を明確化するため、認定の要
件を定める法第 93 条第1項及び認定の更新の要件を定める法第 96 条第2項において
「衛星基幹
放送に係る周波数の使用に関する基準(以下「周波数使用基準」という。)」に適合することを要
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件として追加する。
周波数使用基準では、映像の画質(SD、HD、フルHD、4K、8K)や音声、補完放送等の放
送サービス毎に必要なスロット数の上限を定め、
事業者に対して当該上限を踏まえた効率的な放
送サービスの実施等を求めることとする。
2 直接的な費用の把握
3 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)
「遵守費用」、「行政費用」について、それぞれ定量化又は金銭価値化した上で推計すること
が求められる。しかし、
全てにおいて金銭価値化するなどは困難なことから、規制を導入した
場合に、国民が当該規制を遵守するため負担することとなる「遵守費用」については、特別な
理由がない限り金銭価値化を行い、少なくとも定量化して明示する。
(遵守費用)
今回の改正により新たに制定することとなる周波数使用基準は、事業者が希望する周波数が、
申請に係るサービスに照らして適正な水準となっているかを検証するための基準であり、
衛星基
幹放送に関する技術の発達及び普及状況を勘案して定めることとしている。また、衛星基幹放送
の認定及び認定の更新の際における周波数使用基準への適合状況の確認については、
軽微な書式
を追加することが想定される。
よって、追加費用は限定的であると考えられる。
(行政費用)
本件規制の導入に伴う、総務大臣による周波数使用基準の策定・公表、関係事業者への周知及
び当該基準を踏まえた認定・認定更新に係る追加費用は限定的である。
4 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、
「行政費用」の増加の可能性に留意
規制緩和については、単に「緩和することで費用が発生しない」とするのではなく、緩和
したことで悪影響が発生していないか等の観点から、行政としてモニタリングを行う必要が
生じる場合があることから、当該規制緩和を検証し、必要に応じ「行政費用」として記載す
ることが求められる。
(規制緩和するものでないため、該当せず)
だいやまーく簡素化した評価手法による評価だいやまーく
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別に定める要件を満たす場合は、簡素化した評価手法による評価を実施することができる。
詳細は、
「規制に係る政策評価の事務参考マニュアル」第三部参照
3 直接的な効果(便益)の把握
5 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要
規制の導入に伴い発生する費用を正当化するために効果を把握することは必須である。定
性的に記載することは最低限であるが、可能な限り、規制により「何がどの程度どうなるの
か」
、つまり定量的に記載することが求められる。
衛星基幹放送の業務の認定及び認定の更新の際に、放送事業者等が希望する周波数が、申請に
係る放送サービスに照らし必要十分か否かを審査することにより、
周波数の有効利用が可能とな
り、新規参入の促進等による放送サービスの多様化・高度化が可能となる。
6 可能であれば便益(金銭価値化)を把握
把握(推定)された効果について、可能な場合は金銭価値化して「便益」を把握すること
が望ましい。
(金銭価値化が可能でないため、該当せず)
7 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計
規制の導入に伴い要していた遵守費用は、緩和により消滅又は低減されると思われるが、
これは緩和によりもたらされる結果(効果)であることから、緩和により削減される遵守費
用額は便益として推計する必要がある。また、緩和の場合、規制が導入され事実が発生して
いることから、費用については定性的ではなく金銭価値化しての把握が強く求められてい
る。
(規制緩和するものでないため、該当せず)
4 副次的な影響及び波及的な影響の把握
8 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握するこ
とが必要
副次的な影響及び波及的な影響を把握し、記載する。
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(注記) 波及的な影響のうち競争状況への影響については、
「競争評価チェックリスト」の結
果を活用して把握する。
衛星基幹放送における周波数の有効利用を行うことで、
事業者の新規参入の促進等による放送
サービスの多様化・高度化が可能となり、衛星放送市場の活性化や競争力の向上によって衛星放
送の普及及び健全な発達に寄与する。
5 費用と効果(便益)の関係
9 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化で
きるか検証
上記2〜4を踏まえ、費用と効果(便益)の関係を分析し、記載する。分析方法は以下の
とおり。
1 効果(便益)が複数案間でほぼ同一と予測される場合や、明らかに効果(便益)の方
が費用より大きい場合等に、効果(便益)の詳細な分析を行わず、費用の大きさ及び負
担先を中心に分析する費用分析
2 一定の定量化された効果を達成するために必要な費用を推計して、費用と効果の関係
を分析する費用効果分析
3 金銭価値化した費用と便益を推計して、費用と便益の関係を分析する費用便益分析
前述のとおり、本件規制の導入による追加費用は限定的である一方、本件規制が導入されるこ
とにより、技術革新によるスロットの増加も見込めず逼迫し、国際調整による新たな周波数の確
保が見込めない状況にあっても、
新規参入等による放送サービスの多様化・高度化が可能となる。
6 代替案との比較
10 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から
比較考量し、採用案の妥当性を説明
代替案とは、
「非規制手段」や現状を指すものではなく、規制内容のオプション(度合
い)を差し、そのオプションとの比較により導入しようとする規制案の妥当性を説明する。
代替案として、
既存の放送事業者に対して周波数の自主返納を促すことにより新規参入のた
めの周波数を確保することが考えられる。
これまでも衛星基幹放送においては、
業界団体が画質評価等を行うことにより必要スロット
数について業界における合意形成を行ってきたが、
当該合意形成に至るまで長期間を要してき
たこと、周波数を返納するか否かはあくまで事業者の任意であること等から、当該手法は十分
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な実効性を有しているとはいえない。
一方、本件規制の導入は、これにより周波数使用基準への適合状況を定期的に審査すること
が可能となるため、軽微な遵守費用・行政費用によって周波数の有効利用の確認について実効
性を確保することが可能となる。
7 その他の関連事項
11 評価の活用状況等の明記
規制の検討段階やコンサルテーション段階で、
事前評価を実施し、
審議会や利害関係者から
の情報収集などで当該評価を利用した場合は、その内容や結果について記載する。また、評価
に用いたデータや文献等に関する情報について記載する。
規制改革実施計画(平成 30 年6月閣議決定)において、
「衛星放送のソフト事業について、新
規参入等による放送コンテンツの多様化・競争力向上を促進する観点から、衛星基幹放送の業務
の認定及び5年ごとの認定の更新に際して帯域の有効利用を検証する仕組みを導入する等、平成
31 年度中に所要の制度整備を行う」こととされた。
放送を巡る諸課題に関する検討会 第二次取りまとめ(平成 30 年9月策定・公表)において、
「新規参入に関する認定、5年ごとの認定の更新いずれについても、帯域が有効利用される、あ
るいはされてきたかを検証し、有効利用が見込まれない場合には、総務大臣が指定する帯域を有
効利用が担保できる水準とする仕組みを法制度上明確に定めることが適当」とされた。
これらを踏まえ、本件規制の導入を行うもの。
8 事後評価の実施時期等
12 事後評価の実施時期の明記
事後評価については、規制導入から一定期間経過後に、行われることが望ましい。導入した
規制について、費用、効果(便益)及び間接的な影響の面から検証する時期を事前評価の時点
で明確にしておくことが望ましい。
なお、実施時期については、規制改革実施計画(平成 26 年 6 月 24 日閣議決定)を踏まえる
こととする。
改正放送法の施行状況を踏まえ、施行後5年を経過した場合において事後評価を実施し、必要
があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
13 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあら
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かじめ明確にする。
事後評価の際、どのように費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するのか、その把握
に当たって必要となる指標を事前評価の時点で明確にしておくことが望ましい。規制内容に
よっては、
事後評価までの間、モニタリングを行い、その結果を基に事後評価を行うことが必
要となるものもあることに留意が必要
衛星基幹放送に係る周波数が有効利用されているかを評価するため、事業者の参入状況、周波
数使用基準への適合状況、衛星基幹放送の多様化・高度化の状況を確認する。

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