1第92回人口・社会統計部会
議事概要
1 日 時 平成30年11月12日(月)12:57〜15:00
2 場 所 総務省第2庁舎6階特別会議室
3 出席者
【委 員】
白波瀬 佐和子(部会長)、嶋﨑 尚子、永瀬 伸子、西郷 浩
【専門委員】
川口 大司(東京大学大学院経済学研究科教授)、重川 純子(埼玉大学教育学部教授)【審議協力者】
財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、日本銀行、
東京都、神奈川県
【調査実施者】
総務省統計局消費統計課:阿向課長、塚田消費指標調整官ほか
【事務局(総務省)】
横山大臣官房審議官
統計委員会担当室:櫻川室長、肥後次長、吉野政策企画調査官
政策統括官(統計基準担当)付統計審査官室:澤村統計審査官、佐々木国際統計企画官
ほか
4 議 題 全国消費実態調査及び家計調査の変更について
5 概 要
○しろまる 冒頭、前回の部会において再整理が求められた、1「年収・貯蓄等調査票」に新た
に追加する「資産保有税額」の把握方法、2自動車の保有状況を継続的に把握する余
地、3「世帯票」における職業の表章区分について、調査実施者から補足説明があり、
その対応の方向性について、部会として了承を得た。
○しろまる その後、審査メモに沿って、
「調査方法の変更」から「家計に関する調査の体系的整
備の観点からの位置付け・役割分担」に至る残された論点について、審議を行った。
その結果、変更計画の基本的な方向性について異論はなかったものの、1レシート
読み取り機能付のオンライン家計簿の導入による回答特性の変化を検証することや、
2将来的な家計統計の体系的整備等に向けた検討の必要性について意見があり、答申
(案)等の取りまとめに反映することとされた。
○しろまる 最後に、一通りの審議が終了したことを受け、今回の変更計画は、調査実施部局に
よる積極的な取組であり評価するとの整理や、答申案の構成について、部会として了
承を得た。
委員等からの主な意見等は、以下のとおり。2(1)前回部会の追加説明等
ア 「年収・貯蓄等調査票」に新たに追加する資産保有税額の把握方法等
・ 資産保有税額について、不動産関連と自動車関連の税額を区分して把握する再
整理案は妥当と考える。
→ 再整理案は、報告者や実査機関の負担軽減等に向けた取組の中で、調査実施
者としても、ぎりぎりの選択と考える。調査の円滑な実施に向けては、実査を
担う地方公共団体や調査員への支援にも十分配慮していただきたい。
イ 世帯票における職業の把握方法
・ 今回、世帯主のみを対象に職業を把握することについては、本調査の課題解決
に向けた取組の方向性に照らし、やむを得ないものと考える。ただし、現行の全
国消費実態調査で用いている職業分類には、従業上の地位と日本標準職業分類と
が混在している面もあることから、今後の検討に当たっては、この点も含め、検
討していただきたい。
→ 従来の独自分類による表章も継続しつつ、日本標準職業分類に基づく表章の
充実を図るという方向性は妥当と考える。
(2)調査方法の変更
・ レシート読み取り機能付のオンライン家計簿の導入により、回答特性が変化する
ことも想定されるが、事後的に検証する予定はあるか。
→ その予定である。なお、本調査に先行してオンライン家計簿を導入した家計調
査では、今のところ回答特性に影響は見られない。
・ 家計調査において、オンライン家計簿で回答のあった個票データと、それ以外の
方法で回答のあった個票データとは区分できるのか。
→ 集計時の個票データでは、区分できない。
・ 今回の変更計画では、複数の変更を同時に行うことから、それぞれの変更による
影響の要因分析を行うことは重要であり、個票データに分析が可能なフラグを付す
などして、十分検証することが必要と考える。
→ 前向きに対応することとしたい。
(3)調査時期の変更
・ 調査時期については、地方公共団体において最も関心の高い事項の一つである。
特に、前回調査とは異なり、来年度は夏に参議院選挙が予定されている。市町村に
は選挙業務と統計業務を兼務しているところも多く、
業務の輻輳が生じることから、
選挙の時期は避けてほしいとの強い要望がある。
さらに、
国勢調査の準備事務など、
他の統計調査との業務の輻輳などを懸念する意見もある。
今回の調査時期の設定は、
こうした地方公共団体の意見等も踏まえ、調査実施者に総体として整理していただ
いた結果と理解している。
→ 3か月から2か月への調査期間の短縮は、今回の変更計画において、非常に大
きなポイントと考える。
→ 市町村における他の事務との関係を考慮した上で、実査可能なスケジュールを
設定したところである。今後、地方公共団体の協力を得て、円滑な調査の実施に
向け、更に検討を進めて参りたい。
・ 調査計画における家計調査世帯特別調査の調査時期の記載について、一部整理が3必要な箇所が判明したので、今後、記載内容を精査したい。
→ 了解した。
(4)集計事項の変更・公表の期日の変更
・ 今回は、計画している内容での集計でよいと考えるが、今後、基本調査と簡易調
査の特性を生かした、きめ細かい集計が可能かについても検討してほしい。
→ 御指摘も踏まえ、更なる集計の充実を図っていきたい。
・ 集計体系として、全国単身世帯収支実態調査(一般統計調査。以下「モニター調
査」という。
)の結果を活用することについては慎重に検討する必要がある。これま
で、どのような検討が行われているのか。
→ 前回調査においては、全国消費実態調査のみで集計した結果に加え、モニター
調査の結果を活用して集計した結果を公表している。これらの集計結果を比較す
ると、セレクションバイアスの補正に、モニター調査の結果を活用した方がよい
のではないかと考えている。
→ モニター調査の結果データを活用することについては、丁寧に情報提供した方
がよいと考える。セレクションバイアスには、無回答による偏りとモニター自体
の偏りがあり、
これを補正という形で整理するのは理論的に難しいのではないか。
・ モニター調査と全国消費実態調査の両方の報告者になるのでなければ、理論的に
は可能と思われるが、統合集計について一定の理論を構築した上で採用するものと
理解している。
・ 報告者世帯の属性にずれが生じているのであれば、
事後的な補正は可能であるが、
観察できない属性でずれが生じていれば補正は難しく、それは、今後の研究課題と
思われる。
・ 今後、モニター調査の結果の利活用について、統計局における検討結果を統計委
員会などで共有してほしい。また、全国消費実態調査の公表に当たっては、モニ
ター調査との統合集計を前提としているのか。
→ 今後、局内の研究会において、統合集計の具体的な手法について検討する予定
であり、その状況は公表したい。なお、本調査結果の本系列として、モニター調
査の結果を含めたものと含めていないものの両方を公表することは難しい。モニ
ター調査の結果を含めた結果を本系列と考えているが、
公表前にデータを精査し、
最終的に、どちらのデータが適切かを判断したい。
(5)家計調査の変更
・ 貯蓄等調査票において、
「ゆうちょ銀行」と「その他の銀行」を統合することによ
る効果としては、報告者の負担感の軽減と考えればよいか。
→ そのとおりである。
・ 今回、貯蓄等調査票を段階的に変更することは、丁寧な対応と考える一方で、調
査事項の変更による結果の段差が生じることは避けられないことからみて、この対
応コストは過大とも考えられるのではないか。
→ 貯蓄等調査票については、1報告者に対して1回の調査となるので、コストが
大きく増加するものではない。調査結果の利用ニーズを勘案し、丁寧な対応を行
なうこととしたところである。4・ 貯蓄から投資への移行の状況を把握することが重要となっており、投資信託の内
訳について把握することは妥当と考える。また、調査事項を変更することで生じる
結果の断層を抑制するため、丁寧に対応していただくことは有り難い。
・ 貯蓄・資産区分については、平均値以外の数値、たとえば0を含めた上での5分位
数、また資産が0の割合なども公表しているのか。していないとすれば分布を示す表
を公表すべきである。
→ エコノミストからの指摘も踏まえ、中位数なども公表している。
(6)家計に関する調査の体系的整備の観点からの位置付け・役割分担
・ 家計調査世帯特別調査を、家計調査の調査世帯に対して行なうということは、家
計調査の調査世帯には2つの基幹統計調査を同時に依頼することになるのか。家計
調査において家計調査世帯特別調査を実施することで、家計調査の調査世帯には家
計調査のみを依頼し、その結果から全国消費実態統計を作成するという整理にする
ことも考えられるが、調査と統計の役割について、どう考えているか。
→ 同一の報告者に、2つの基幹統計調査を重複して依頼することに合理的な理由
があれば、特に問題ないと考える。家計調査の調査対象世帯に、全国消費実態調
査をお願いすることで説明が複雑になる面はあるものの、十分に説明することで
理解を得ることとしたい。
→ 経済産業省企業活動基本調査と法人企業統計調査のように、報告者負担の軽減
の観点からデータ移送を行っている例もあり、本件も同様と考える。また、今回
の変更に伴い、家計調査と全国消費実態調査の親和性がより高まるため、1つの
基幹統計の下で、2つの基幹統計調査を実施することについても、将来的な検討
課題になるのではないかと考える。
・ 今回、調査実施者がかなり踏み込んだ変更を行おうとしていることは、評価して
いる。最終的には、全国消費実態調査と家計調査との整理・統合の方向に向かうと
いう方向性は理解できるが、今回、どこまで踏み込むのかは、更に検討が必要と考
える。
・ 家計調査は、6か月間同じ世帯を調査する一方、全国消費実態調査は、ある期間
における大規模な調査となるので、両者を組み合わせることによって、より有用な
データも得られるのではないか。
・ 関連する統計調査の役割分担という観点からは、全国消費実態調査から耐久財等
調査票を廃止するのに伴い、内閣府の消費動向調査の充実を図るということも検討
してほしい。
(7)前回答申における「今後の課題」への対応状況
・ これまでの部会の審議結果を踏まえ、前回答申における「今後の課題」への対応
状況については適当であると整理することとしたい。
(8)答申案の構成案
・ 答申案の構成には異論はないが、家計調査等の結果データとの集計方法について、
大学などと共同研究を行い、その研究内容・結果を反映することも、今後の課題と
なるのではないか。
・ 今回の変更を踏まえ、基幹統計の指定の内容を変更する必要はないか。5→ 今回の変更計画は、従前の基幹統計の調査の目的を超えたものではないため、
基幹統計の指定の変更までは想定していない。ただし、基幹統計を一本化するこ
とについては、今後の課題と認識している。
・ 全国消費実態統計の充実についても、答申で触れてほしい。
・ 世帯の資産を把握することは重要であるが、家族それぞれの分を把握しているか
など、難しい面もある。他の方法で資産を把握することも今後検討が必要ではない
か。
→ 御指摘の点は、世界的にみても、共通した課題であると思われる。今回は結果
精度を上げることを目的に調査計画を見直しているので、まずは、どう正確に把
握できるかを整理することになるのではないか。
・ 長期的な課題としては、調査方法そのものを今後どのようにしていくかというこ
とはあると考える。
・ 今回、調査計画の大規模な変更が予定され、調査結果に多くの指摘があることが
想定されるため、丁寧に説明できるよう準備する必要がある。また、今回の調査計
画の変更内容は、現場の負担が大きい中で、本調査をどのように維持・継続してい
くかを検討した結果、一つの着地点に至ったものと考える。このため、今後も、不
断の改善を続けてほしいとの指摘を答申案に盛り込みたい。
6 その他
次回部会は平成 30 年 12 月3日(月)10 時から総務省第2庁舎6階特別会議室におい
て開催することとされた。
また、本日の部会の結果については、11 月 22 日(木)開催予定の第 128 回統計委員
会において、白波瀬部会長から報告することとされた。
以 上