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規制の事前評価書
法律又は政令の名称: 電波法施行令の一部を改正する政令案
規 制 の 名 称: コミュニティ放送局等における無線従事者資格制度の緩和
規 制 の 区 分:新設、改正(拡充、緩和)
、廃止 (注記)いずれかにしろまる印を付す。
担 当 部 局: 総務省情報流通行政局衛星・地域放送課地域放送推進室
評 価 実 施 時 期: 平成 30 年 10 月
1 規制の目的、内容及び必要性
1 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)
コミュニティ放送局の無線設備の操作は無線従事者以外の者は原則行ってはならないことと
なっており、制度創設当初(注記)1
から、その操作に必要な無線従事者の資格を、第一級総合無線通信
士、第一級陸上無線技術士及び第二級陸上無線技術士としてきた。
これは制度創設当初、
必要に応じ、
無線従事者は電波の質(注記)2
に影響を及ぼす操作としての周波
数等の調整を行うことが想定され、
それに必要な知識及び技能を有する上記の資格に限定したた
めである。
その後、無線技術の進歩により、無線設備における周波数及び空中線電力の安定度の向上及び
調整の自動化が図られた結果、
周波数等の調整を伴わない、
外部の転換装置(注記)3
で電波の質に影響
を及ぼさない技術操作により、コミュニティ放送局の無線設備の操作を行うことが可能となっ
た。
一方、近年のコミュニティ放送局を取り巻く環境については、操作可能な無線従事者が高齢化
(注記)4
しており、また、年々放送局が増加している(注記)5
ことから、現行の規制を継続した場合、今後、
コミュニティ放送局の無線従事者の確保が困難となる恐れがある。
(注記)1 コミュニティ放送は平成 4 年に制度創設。
(注記)2 電波法(昭和 25 年法律第 131 号)第 28 条の規定に基づく無線設備規則(昭和 25 年電波監理委員会
規則第 18 号)第5条から第7条までに規定する周波数の許容偏差、占有周波数帯幅の許容値、スプリア
ス発射又は不要発射の強度の許容値。
(注記)3 無線設備の通常の使用状態において、外部に露出している転換装置のことであり、電源の入切装置、
周波数の切替装置等のこと。
(注記)4 70 歳以下の第一級総合無線通信士、第一級陸上無線技術士、第二級陸上無線技術士の無線従事者
のうち、50 歳以上が約 60%を占める(平成 30 年 9 月現在)。
(注記)5 コミュニティ放送局数:320 局(平成 30 年 9 月現在。廃局したものを除く。)。昨年度 15 局増加、制度創
設当初から平均で年間約 13 局ずつ増加している。
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2 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較に
より規制手段を選択することの妥当性)
【課題及び課題発生の原因】
・ コミュニティ放送局を取り巻く環境については、前述のとおり、無線従事者が高齢化してお
り、また、年々放送局が増加していることから、今後、コミュニティ放送局の無線従事者の確保
が困難となる恐れがある。
・ 業界団体である一般社団法人日本コミュニティ放送協会から、平成 28 年 9 月、
「無線従事者
の高齢化等も踏まえつつ、コミュニティ放送の運用の実態(機器の取扱いの容易性、出力規模、
過去の実績等)に照らした無線従事者資格の緩和等の人材供給制度に関する制度改正」を求め
る要望書(以下「要望書」という。
)が提出された。それを踏まえ、平成 29 年 5 月、
「放送を巡
る諸課題に関する検討会・地域における情報流通の確保等に関する分科会」では、
「コミュニテ
ィ放送業界は、コミュニティ放送局の設備は従来に比べて耐久性が優れ、操作が簡易化してい
ることから、無線従事者制度の緩和の制度改正の要望を提出した。国においては、この要望を
踏まえて、無線従事者の確保のあり方について検討すべきである」旨の報告書(以下「分科会取
りまとめ」という。
)が取りまとめられた。
・ 現在、無線技術の進歩により、コミュニティ放送局の無線設備については、周波数等の調整
を伴わない、外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能な無線設
備が普及しており、制度創設当初に想定されていた、必要に応じて電波の質に影響を及ぼす操
作としての周波数等の調整を行う場合が、減少している状況にある。
【規制緩和の内容】
・ 外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能なコミュニティ放送
局については、第二級総合無線通信士、第三級総合無線通信士、第一級陸上特殊無線技士及び
第二級陸上特殊無線技士でも操作することができるよう電波法施行令(平成 13 年政令第 245
号)第3条を改正し、無線従事者の資格の操作範囲を緩和する。また、同等の設備を有する受信
障害対策中継放送局の無線設備についても、無線従事者の資格の操作範囲を緩和する。
・ なお、周波数等の調整を伴わない、外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作
で操作可能なコミュニティ放送局及び受信障害対策中継放送局(以下「コミュニティ放送局等」
という。
)であっても、その運用に当たっては、他の無線局等に対し妨害等の影響を与えている
かといった測定を行う等の無線工学や電波法等の専門的知識・技能が求められるものであるこ
とから、そのような知識・技能を有した無線従事者が引き続き操作を行う必要がある。
【参考 今回の措置により操作が可能となる無線従事者資格】
しろまる×ばつ:操作の範囲に含まれない
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2 直接的な費用の把握
3 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)
・ コミュニティ放送局等の免許に係る各種手続きや無線従事者資格の試験方法・国家試験手数
料等に変更が生じるものでないため、新たな遵守費用は発生しない。
4 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、
「行政費用」の増加の可能性に留意
・ 本件の改正電波法施行令における周知広報は、総務省ホームページや業界団体を通じての周
知を予定しているため、行政費用は軽微である。
3 直接的な効果(便益)の把握
5 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要
・ 外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能なコミュニティ放送
局等の無線設備について、操作することが可能な無線従事者数が約 9 万人(注記)6
から約 158 万人(注記)7
に増加することにより、コミュニティ放送局等において無線従事者の確保が容易となる。
(注記)6 第一級総合無線通信士 :14,245 人
第一級陸上無線技術士 :45,177 人
第二級陸上無線技術士 :33,731 人
合計:93,153 人 (平成 29 年度末現在)
(注記)7 第一級総合無線通信士 :14,245 人
第二級総合無線通信士 :18,801 人
第三級総合無線通信士 :31,503 人
第一級陸上無線技術士 :45,177 人
第二級陸上無線技術士 :33,731 人
第一級陸上特殊無線技士:215,571 人
第二級陸上特殊無線技士:1,220,822 人
合計:1,579,850 人(平成 29 年度末現在)
6 可能であれば便益(金銭価値化)を把握
・ 5の効果を金銭価値化することは困難である。
7 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計
・ コミュニティ放送局等を運用する場合、これまで第一級総合無線通信士、第一級陸上無線技
術士及び第二級陸上無線技術士の資格者約 9 万人の中から無線従事者を選任する必要があった
ところ、外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能なコミュニテ
ィ放送局等の場合、上記の資格に加え、第二級総合無線通信士、第三級総合無線通信士、第一級
陸上特殊無線技士及び第二級陸上特殊無線技士の資格者約 149 万人が新たな選任候補の対象と
なる。
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・ コミュニティ放送局等が無線従事者資格を有する人材を確保する観点から、選任候補となり
うる有資格者は約 17 倍となり、選任候補者の母数が拡がり、さらに、条件に合致した有資格者
を選任しやすくなることから、金銭価値化することは困難だが、コミュニティ放送局等として
人材を確保するための費用が低下するものと考えられる。
・ さらに、外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能なコミュニ
ティ放送局等が、有資格者を自社の従業員等で確保するため、コミュニティ放送局等が国家試
験手数料を負担する場合、
その負担額は、
これまでの最低額 11,800 円
(第二級陸上無線技術士)
から 5,100 円(第二級陸上特殊無線技士)と、6,700 円低減する。
【参考 国家試験手数料(平成 30 年 9 月時点)】
第一級総合無線通信士 18,800 円
第二級総合無線通信士 16,700 円
第三級総合無線通信士 13,100 円
第一級陸上無線技術士 13,900 円
第二級陸上無線技術士 11,800 円
第一級陸上特殊無線技士 5,300 円
第二級陸上特殊無線技士 5,100 円
4 副次的な影響及び波及的な影響の把握
8 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握するこ
とが必要
・ コミュニティ放送局等における無線従事者の確保が容易になることに伴い、新規事業者の参
入や既存事業者の業務継続が容易となる。
5 費用と効果(便益)の関係
9 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化で
きるか検証
・ 本改正により、外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能なコ
ミュニティ放送局等の無線設備について、操作することが可能な無線従事者数が約 9 万人から
約 158 万人に増加することに伴い、無線従事者の高齢化等も踏まえた無線従事者の確保の容易
化が図られる。
・ 外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能なコミュニティ放送
局等が、自社の従業員等を有資格者とするため、資格試験の国家試験手数料を負担する場合の
費用負担額も、これまでに比べ 6,700 円低減する。
・ 無線従事者の確保の容易化は今後、コミュニティ放送局の新規参入や既存のコミュニティ放
送局を維持する観点から有効である。
以上の効果に比し、本件の規制緩和では、遵守費用はかからず、行政費用は軽微なことから、
高い費用対効果が得られる。
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6 代替案との比較
10 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から
比較考量し、採用案の妥当性を説明
・ 代替案として、無線従事者資格試験の周知・広報を強化することにより、第一級総合無線通
信士、第一級陸上無線技術士及び第二級陸上無線技術士の受験者数を増加させ、ひいては有資
格者数を増加させることが考えられる。しかし、この代替案では周知・広報に関わる行政費用
を要することや、有資格者数の増加に繋がるか不明確であるため、適当でない。
・ 上記以外の代替案として、
コミュニティ放送局等の技術操作が可能な第一級総合無線通信士、
第一級陸上無線技術士及び第二級陸上無線技術士の資格試験について、試験内容の易化や科目
の見直しを行い、無線従事者資格の合格者数を増加させることも考えられる。しかし、この代
替案では第一級総合無線通信士等に求められる知識・技能の低下につながり、無線局の運営に
支障が生じると考えられるほか、試験内容の易化や科目の見直しのみならず、他の無線従事者
資格や試験を含めた無線従事者の制度全体を検討するための費用が発生するため、
適当でない。
7 その他の関連事項
11 評価の活用状況等の明記
・ 一般社団法人日本コミュニティ放送協会からの要望書及び分科会取りまとめを踏まえ、コミ
ュニティ放送局等の無線設備の実態に則して、本件の改正を行うものである。
8 事後評価の実施時期等
12 事後評価の実施時期の明記
・ 改正電波法施行令の施行状況を踏まえ、施行後概ね 5 年以内に事後評価を実施し、必要があ
ると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
13 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあ
らかじめ明確にする。
・ 改正電波法施行令の施行後、コミュニティ放送局等から提出された無線従事者選(解)任届
を集計し、分析することにより把握を行う。

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