総務省|令和7年版 情報通信白書|デジタル関連項目のサービス収支の動向

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第Ⅰ部 特集 広がりゆく「社会基盤」としてのデジタル
第3節 デジタル分野における海外事業者の台頭と我が国の現状

(2) デジタル関連項目のサービス収支の動向

国際収支統計のサービス収支において、日銀レビュー「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」14で、デジタルに関係する項目として分類される①コンピュータサービス、②著作権等使用料、③専門・経営コンサルティングサービス、④通信サービス、⑤情報サービス(以下「デジタル関連項目」という。)の収支の推移をみると、特に①から③までについて、近年赤字額が急激に増えており、いわゆる「デジタル赤字」として注目を集めている15。なお、この中にはデジタル分野以外のサービスに係る収支も含まれる点に注意が必要である16

例えば、2024年では、①コンピュータサービス、②著作権等使用料、③専門・経営コンサルティングサービスの収支額の合計では、約6.7兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増)となっている(これに、④通信サービス、⑤情報サービスを加えると、約6.8兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増))17。2014年と比較すると、2024年では、「著作権等使用料」は約2.1倍、「コンピュータサービス」は約3.3倍、「専門・経営コンサルティングサービス」は約5.4倍に赤字額が膨らんでいる1819(図表Ⅰ-1-3-9)。

図表Ⅰ-1-3-9 デジタル関連サービス収支の推移20
(出典)財務省「国際収支統計」を基に作成
「図表Ⅰ-1-3-9 デジタル関連サービス収支の推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら


14 日本銀行「日銀レビュー「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」」(2023年8月)〈https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2023/data/rev23j09.pdfPDF

15 通信サービス、情報サービスまでを含めて、いわゆる「デジタル赤字」として整理される場合もある。

16 コンピュータサービスには、ソフトウェアの委託開発、コンピューターによる情報処理、ハードウェアのコンサルティング・維持修理等のサービス取引が計上されており、ゲーム等の汎用ソフトウェアをエンドユーザーがオンラインで入手した場合のライセンス料やソフトウェアの著作権の売買代金が含まれる。著作権等使用料には、著作物(コンピュータソフトウェア、音楽、映像、キャラクター、文芸、学術、美術等)を複製して頒布(販売、無償配布等)するための使用許諾料(ライセンス料)が計上されている。専門・経営コンサルティングサービスには、法務、会計・経営コンサルティング、広報、広告・市場調査に係るサービス取引が計上されている。各項目に含まれるサービス内容は、第Ⅱ部第1章第1節4「ICT分野の輸出入」も参照

17 通信サービス、情報サービスを加えた場合の「デジタル関連項目」の収支の推移は、第Ⅱ部第1章第1節4「ICT分野の輸出入」参照

18 「デジタル関連項目」の赤字額の増加の背景としては、例えば、内閣府「令和6年度年次経済財政報告」(2024年8月)では、クラウドサービスやインターネット広告、動画配信の国内市場規模が大きく拡大していることを述べたうえで、クラウドサービスの海外への支払額を試算すると、近年増加ペースが強まっており、「コンピュータサービス」の支払額の増分の多くがこれにより説明できると考えられることや、「専門・経営コンサルティングサービス」分野の赤字額の増加の多くが、近年の海外へのインターネット広告関連の支払額の増分で説明できること、さらに、「著作権等使用料」の赤字額と、国内のコンテンツ関連支払額と国内企業の売上額の差を比較すると、水準は異なるものの増加傾向は同様であることを指摘している。

19 日本の国際収支全体の動向とデジタル関連収支に関して、財務省「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」懇談会報告書(2024年7月2日)は、「我が国の経常収支は安定的に黒字を計上し、2023年度の黒字は過去最大」「2023年末の対外純資産残高は過去最大の471兆円に達し、33年連続で世界最大の純資産国」としたうえで、「項目別に見ると、黒字を計上しているのは第一次所得収支のみであり、貿易収支は赤字基調、サービス収支ではデジタル分野等の先端的な分野での赤字が拡大」「主要シンクタンクの見通しでは、今後は、一段と少子高齢化が進展する中で、経常収支黒字は縮小、ないし赤字転化することが示されている。」等と述べている。

20 「デジタル赤字」や「デジタル関連収支」等と称して議論されることもあるが、ここでは、以降で説明するICT財の貿易とは区別する目的で、「デジタル関連サービス収支」と表現する。

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本編
第Ⅰ部 特集 広がりゆく「社会基盤」としてのデジタル
1 社会生活におけるデジタルの浸透・拡大
2 企業活動におけるデジタルの浸透・拡大
4 日常生活、企業活動におけるデジタルサービスの重要性・不可欠性
1 AIの技術開発における現状と動向
2 AI利用の現状
1 海外ビッグテック企業の台頭
2 対応の方向性
1 主な課題の概要
第Ⅱ部 情報通信分野の現状と課題
第1章 ICT市場の動向
第1節 ICT産業の動向
5 ICT分野の研究開発の動向
第2節 電気通信分野の動向
2 我が国における電気通信分野の現状
3 通信分野における新たな潮流
第3節 放送・コンテンツ分野の動向
1 放送
2 コンテンツ市場
第4節 我が国の電波の利用状況
第5節 国内外におけるICT機器・端末関連の動向
1 国内外のICT機器市場の動向
2 国内外のICT端末市場の動向
第6節 プラットフォームの動向
第7節 ICTサービス及びコンテンツ・アプリケーションサービス市場の動向
5 ICTサービス及びコンテンツ・アプリケーションサービス市場の新たな潮流
第8節 データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向
第9節 AIの動向
第10節 サイバーセキュリティの動向
2 サイバーセキュリティの現状
第11節 デジタル活用の動向
1 国民生活におけるデジタル活用の動向
2 企業活動における利活用の動向
3 行政分野におけるデジタル活用の動向
第12節 郵政事業・信書便事業の動向
1 郵政事業
2 信書便事業
第2章 総務省におけるICT政策の取組状況
第1節 総合的なICT政策の推進
1 現状と課題
第2節 電気通信事業政策の動向
1 概要
3 公正な競争環境の整備
4 デジタルインフラの整備・維持
5 電気通信インフラの安全・信頼性の確保
6 電気通信サービスにおける安心・安全な利用環境の整備
7 電気通信紛争処理委員会によるあっせん・仲裁など
第3節 電波政策の動向
1 概要
2 デジタルビジネス拡大に向けた電波政策
3 デジタルインフラ整備の推進
4 先進的な電波利用システムの推進
6 電波利用環境の整備
第4節 放送政策の動向
1 概要
3 放送事業の基盤強化
4 放送コンテンツ制作・流通の促進
6 放送ネットワークの強靱化、耐災害性の強化
第5節 サイバーセキュリティ政策の動向
1 概要
2 重要インフラ等におけるサイバーセキュリティ
3 サイバー攻撃対処能力の向上と新技術への対応
4 地域をはじめとするサイバーセキュリティの底上げに向けた取り組み
第6節 ICT利活用の推進
1 概要
3 インターネット上の偽・誤情報等への対応
4 安全・安心な情報の利用環境の整備
第7節 ICT技術政策の動向
1 概要
4 量子技術
第8節 ICT国際戦略の推進
1 概要
3 デジタル経済に関する国際的なルール形成などへの貢献
6 二国間関係における国際連携
第9節 郵政行政の推進
1 概要
2 郵政行政の推進
3 国際分野における郵政行政の推進
資料編
付注

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