【なぎさの競馬手帖】ありがとうソールオリエンス

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ソールオリエンス

昨夜、青森県沖を震源とする大きな地震がありました。読者の皆さまはご無事でしょうか? 馬産地も大きな揺れがあったようで、心配です。被害が最小限にとどまることを願います。

2日、社台サラブレッドクラブのホームページでソールオリエンスの競走馬引退が発表されました。まだまだその走りを見ていたい気持ちもありますが、種牡馬として次のお仕事があるようなので、まずは無事に引退することができてよかったと思います。一昨年の皐月賞で見せた強烈な末脚が今でも忘れられません。結果的にその皐月賞が最後の勝利になってしまいましたが、昨年の宝塚記念では0秒3差の2着。ほとんどがGIへの出走で、昨年のジャパンC以外は着順ほど差のない競馬をしていました。とてもファンの多い馬で、復活Vを心待ちにしていた方もたくさんいたと思います。私もそのうちの一人でした。

記者としては二度も特別インタビューをさせていただきました。ダービーの時は締め切りが迫っているのに途中で原稿が消えてしまい、大変焦ったことをよく覚えています(笑)。当時のデスクの方にはご迷惑をおかけしました...。この時は手塚貴久調教師に馬体が『緩い』ということを具体的に教えていただき、大変ためになったことが印象に残っています。

有馬記念はウインマリリンと2頭出しでした。当時のファン投票は5位だったソール。インタビュー内で手塚久調教師は「本当はもっと人気がある馬だと思っているので、一年を通してもう少し彼を盛り上げられていたら、もっと上だったのかもと思うと彼には申し訳ない気持ちです」とおっしゃっていました。このコメントだけではないですが、手塚久調教師は常にソールオリエンスの力を信じていた印象で、それは競走馬生活の最後のほうでも変わりはありませんでした。「みんな、『道悪じゃないと走らない』って言うけど、良馬場でもやれるよ」と何度も聞きました。最近の中で特に印象的だったのが、天皇賞・秋でのこと。世間の注目は僚馬のマスカレードボール(牡3)に集まっており、取材もマスカレードボールが中心でした。公式の取材の場で「(2年前の)皐月賞を勝たせてもらってから、なかなか1着になれていないですが、能力はマスカレードボールに負けないくらいのものを持っているので、自分の力を出し切ってもらいたいと思います」とコメントされていましたし、個人的にお話をした際も最後に「ソールも応援してね」と言われました。本命はマスカレードボールにしましたが、ソールオリエンスにはさんかくを。昨年は7着とはいえ、0秒4差。最終追い切りは素晴らしい動き。メイショウタバルとホウオウビスケッツがいて、流れが速くなれば一発あるかもしれない。ただ好きな馬だからというわけではなく、これまでずっと見てきて、取材をさせていただいてきたからこそ打ったさんかくでした。結果は予想と全く違ったスローペースで究極の瞬発力勝負に。ソールに全く向かない展開で最下位に終わってしまいましたが、それでも0秒7差と着順ほどの差はなく、レース後は次こそと思っていました。

手塚久調教師も「なんとかもうひとつ重賞を勝たせてあげたい。自信を取り戻させてあげないと」と何度もおっしゃっていました。このタイミングで種牡馬のオファーがあり、それは叶わぬ夢となってしまいましたが、子供たちにその夢は託されました。手塚貴久厩舎にソールオリエンスの子供が来る日を、大きな舞台に挑戦する日を楽しみにしたいです。

これだけソールオリエンスのことを書くなら、触れないわけにはいかないことがあります。3日に出た引退に関する記事です。サンケイスポーツの記事で「皐月賞など3歳まではいい走りが、その後は背腰の持病のようなものもあって、それと相談しながらだったので、本来のパフォーマンスが出せなかった」という手塚久調教師のコメントがありました。調べたところ、前後の表現に違いはあれど4つのスポーツ紙で『持病』というワードが出ていました。これが物議を醸しているとのこと。私もXなどで競馬ファンの方たちのご意見を目にしました。この記事が出た翌日、手塚久調教師とお話したところ、実際は「背腰に甘さがあり、レース後の疲れが抜けるのに時間がかかることが多くなった」というのが詳しい内容だそうです。決して背腰に病気を患っていて痛みがあるのに、それを世間に隠して出走していたわけではありません。不本意な伝わり方をしていることを気にされていました。

私は引退に関する取材の場にいなかったので、手塚久調教師がどうコメントしたのか正確には分かりません。ただ、4紙で『持病』というワードが登場しているので、取材の中で『持病』というワードを言ったことは間違いないと思います。ソールオリエンスは疲れが背腰に出やすいタイプ。これは社台サラブレッドクラブのホームページでもたびたび書かれていました。レース後はもちろん、調教もやりすぎると疲れが背腰に出てくるので、疲れを残さない程度の調教でも、レースで力を発揮できる状態に仕上げるという絶妙なさじ加減での調整など、常に背腰の疲れと向き合ってきたので、それを『持病のようなもの』と表現したのかもしれません。『のようなもの』を切って、『持病』と言い切ってしまうとまた違った意味になってしまいますよね。長々と書いてしまったので、また正しく理解していただけない可能性は否めませんが、今回の記事で不信感を持った方に少しでも真意が伝われば幸いです。

右の眉毛だけ白いイケメンで、手塚久調教師にはツンデレな性格で、鼻がびっくりするくらい柔らかくて、シュネルマイスター先輩からほうきバトルを受け継ぎ、たくさんのファンの方がいる人気者のソールオリエンス。私はソールを通じて、競馬記者としてたくさんの経験をさせてもらい、とても感謝しています。種牡馬としてもきっと成功するはずです。子どもたちを応援できる日が来ることを楽しみにしています。(三浦凪沙)

  • 能力・取材
  • 本命時々中穴
  • 単勝・複勝

プロフィール

横浜市出身。父は横浜DeNAベイスターズの元投手で、前監督の大輔氏。父の所有するリーゼントブルースのデビュー戦を生観戦したことをきっかけに競馬にはまる。2019年夏から美浦、栗東トレセン、競馬場などで取材を始め、約1年4カ月の下積み期間を経て、満を持しての紙面デビュー。トレセンでは取材はもちろん、かわいい推し馬探しにもいそしむ。著書は『知れば知るほど楽しくなる!ウマに恋する競馬ガイド』

予想スタイル

馬の能力を素直に評価し、取材で得た情報を加味して予想する。基本的には本命党だが、取材の感触が良ければ人気薄でも迷わずにじゅうまるを打つ。馬券は単勝少しと複勝をガッツリ。



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